早すぎる実戦
「おーなー! はやくVA一型にのってくださいです」
「ぇ……ちょ、ちょっと待ってよ」
「またないです!こっくぴっどかいほう!」
「なんで?!」
ミエは私を片手で持ち上げ何かを操作した後に、何か開く音がした。後ろを見るとVA一型と呼ばれた巨大人型ロボのコックピット部分が開いている。
そして下から更にコックピットへと続く階段が上がってきた。
「おーなー! かくごをきめてくださいです」
「や、やだっ」
私はジタバタするも何一つとして無意味に終わり、結局コックピットへと辿り着いてしまう。な、何をすれば良いの?!
私は混乱する中、外に出られる部分は閉じてしまう。
『おーなー、きこえてるです?』
「き、聞こえてるよ……」
『これよりさくせんもくひょうをかくにんするです。げきはもくひょうはこのさきのだいどうくつにいる、あーすどらごんです』
「ぇ……?」
『こんかいはミエのつうしんがとおります、だからおーなーはそのひだりわんぶのぱいるばんかーをおもいっきりたたきこんでくださいです!』
「やるしかないのかな……」
ミエは私の事情なんぞ知ったこっちゃないという風に話を進めて行く。ドラゴンなんで始めたばかりの私が勝てる訳がない。
頭を抱えていると、ピコンっと画面が現れる。
EXクエスト【VA一型、起動!】
成功条件:アースドラコンの撃破後、ベース地点へと帰還
失敗条件:VA一型の大破
詳細:オーナーとして、初戦闘になるだろう。油断せず、大胆に攻めよう。この戦いは序章にすぎない。
※このクエストは現時点をもって破棄が不可能になりました
EXクエストってなに……?! 私の頭はさらに混乱するが、1番下に書いてある破棄が不可能という分を見て、半泣きになりそうになる。
「や、やるしかないんだよね?!」
『だからそうだといってます! はやくしゅつげきしますです! VA一型、しゅつげきかいし!』
「あ、こころの準備がぁああ?!」
VA一型の向きが変わったと思ったら、突如ジェットコースターに乗ってるかのようなGが私を襲う。体感数秒にも数十秒にも及ぶ感覚のあと、かなり広い空間へと出ていた。
この空間に明かりとなるものはほぼ無なさそうだけど、外を写すモニターはしっかりと見えている。
「ここは……?」
『さくせんえりあへとつきました、もくひょうのあーすどらごんはちかくにいるはずです』
「分かった……って操作はどうすれば?!」
『おちついてくださいです。VA一型はこうせいなうなので、かんたんそうさです! りょうでのちかくのればーをいっしょにまえにおしてくださいです』
「これ、かな」
360度で動きそうな2つのレバーを前に押し込むと、前にガシャンガシャンと歩き出す。
『いどうはきほんそのればーです! みぎにいきたかったらみぎにたおしたり、かたほうだけかたむかせたらきゅうてんかんできますです! それとあしもとにあるのをおせばぶーすとじょうたいです!』
「えーと…こぉっ?!」
足下にあったのを押すと、急加速が始まる。
『とまりたいならぶーすとのとなりにあるものをおせばいいです!』
「んんっ……びっくりした」
『それではすてっぷぶーすととこうげきぼたんをかいほうするです!』
移動レバーのところに、突如ボタンが複数現れた。
『いちばんうえはすてっぷぶーすと、りょうほうについていますのでかいひしたいほうこうにればーをたおしながらおしてください、こうげきぼたんはげんざいぶそうがあるのはひだりわんぶのみなので、みわんぶはぱんち、かたぶぶんはいみがありませんです』
「う、うん……?」
頭がそろそろ悲鳴を上げそうだけどどうにか飲み込む。
『げんざいいまのおーなーがつかえるきのうはこれだけです! いまはもくひょうのげきはにしゅうちゅうを……もくひょうせっきんちゅう!』
「え?」
前から茶色の鱗を纏った、翼がない代わりか巨大な牙と爪に尻尾が付いたモグラを何千倍もデカくしたような化け物が迫っていた。
「グゥゥゥ……」
『VA一型のたいきゅうちはたかいですが、なんじゅっかいもこうげきはたえれませんです!』
「ぱ、パイルバンカーっていうのを使えば良いんだよね?!」
『はい! ですがしゃていとすきがおおきいのできをつけてくださいです!』
「グォォオ!!!!」
「ひっ?!」
長い尻尾が叩きのめさんと振り回される。私は反射で逃げようとしてステップブーストをし、すんでのところで回避する。
『おーなー! いいわすれてましたがすてっぷぶーすとはにかいまでしかれんぞくでつかえないのと、ぱいるばんかーもいちどつかったあとはれんぞくでつかえません! にかいつかったあとはごびょうほどくーるたいむがひつようです!』
「早く言ってよ?!」
「グゥゥ…?」
アースドラゴンは私が乗っている物を見て、少し不思議そうにしている。今ならもしかしたら当てれるのではないか。
「今っ!」
「グォッ!」
前にステップブーストをし、一気に距離を詰めた私はパイルバンカーを当てようとボタンを押す。アースドラゴンも予想外だったのか動きを一瞬止めた。
「お願い!」
パイルバンカーと呼ばれる武装は火花を立てながら、爆発音を出し杭を打ち出す。アースドラゴンにそれは命中し、硬そうな鱗を貫通し貫いた。
「グォォオオッ?!」
アースドラゴンは後方に少し吹っ飛び、フラフラとしている。
『おーなー! ぱいるばんかーのかわりにこぶしでとどめを!』
「う、うんっ!」
まだパイルバンカーは使えるようになってない、だから再度接近して右手のボタンを押し、重そうな鉄の拳がアースドラゴンに突き出される。
「グゥッ……」
奇跡的にパイルバンカーが貫いた場所にクリーンヒットし、ポリゴンの欠片を撒き散らしながら目の前の巨体が倒れていく。
『もくひょうげきはかんりょうです、おーなー! あーすどらごんのそざいなどは、かいしゅうどろーんにもってきてもらいますのでおーなーはきかんしてください』
「や、やった……」
私は震える手を抑えながら、ゆっくりとミエに案内されるまま帰還したのだった。
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