奇跡の出会い
2xxx年、VR技術が発達しゲームの中に入ったような体験が出来るゴーグルが発売された。それ以降は次々と様々なゲームが出ては消えていく。
しかし、ある時エルフセリアオンラインと言うVRMMOが出た。今まではどの企業も再現出来なかった味覚や自然なグラフィックを再現していた。
なおかつ容量的な問題で薄味気味だったこれまでのゲームとは違い、キャラメイク一つとってもボリュームたっぷり。
今や世界で一番プレイされてるゲームなんて呼ばれてる。これまでVRゲームどころかRPGすら手を出してなかった私も友達から強く勧められてやってみたんだけど…。
「やだぁっ!助けてっ!」
後ろからは私を今にも殺さんとする化け物たちがたくさん追いかけてくる。私の残りのHPは1割、武器はツルハシと貧相な服のみ。
チラッと後ろを振り向くと、ツノが生えた兎に小さめの子熊と緑色の粘体が群れになって私を追いかけてきてる。
こうなった原因は数十分前に遡る…。
ーーーーーーーーーーー
「これで事前の準備は良いのかな…?」
エルフセリアオンラインのカセットを入れた専用機器とVRゴーグルを繋ぎ、始めるための準備が終える。
友達がどうしても一緒に遊びたいからと、ゲームを買うときは半分お金出してくれた。VRゴーグルとかは懸賞で当たった物を余ってるからとそのままくれた。
私は恐る恐る電源を入れVRゴーグルを被り、深呼吸する。すると直ぐに意識が引っ張られるような感覚と共に白い光が視界を覆い尽くす。
「ふぅ……ここは……?」
周りを見ると真っ白な空間に居ることが分かる。すると無機質な声が聞こえた。
『暁月羽留様、ようこそエルフセリアオンラインへ。キャラクターメイキングを開始しますか?』
VRゲームはもしもの時のために本名の登録を義務付けられている。体に異常が起こったときは自動で救急車が呼ばれるみたいだから安心。
目の前にYES/NOと書かれた画面が現れたから、始めるしかないのでYESを押して続ける。
『ニックネームを決めてください』
「本名は駄目だから…アカネで良いかな」
アカネ、と打ち込んで次に行く。
『アカネ様、お次はクラスを選択してください』
「確か緋奈ちゃんが言ってたのは採掘士だっけ」
緋奈ちゃんはこのゲームを勧めた友達。ちょっと……いやかなり悪戯好きだけど私を守ってくれたり、よく遊んでる。
色々分からないだろうからって私が出来そうなクラスっていうものを選んでくれた。筋力と幸運って言うステータスを上げておけば何とかなるみたい。
採掘士は鉱石とかを採掘するときに、ボーナスがつくって聞いた。鍛治も成長すれば出来るようになるって聞いたから楽しみ。
採掘士を選ぶと、最後はアバターを作るだけだった。多少は美化されてるけど、少しだけ髪を長くして、ちっちゃなホクロとかを取ってぱっぱと終える。
身長は150センチくらいで小さめで、緋奈ちゃんからはお人形みたいで可愛いとよく言われてる。
『これにてキャラクターメイキングを終了します。貴女の冒険に自由があることを祈ります』
「は、始まる……!」
少し緊張しながら、私はまた白い光に包まれるすると数秒後には開けた広場に居た。周りを見ると中世ヨーロッパのような建物が並んでいる。
「思ってたより現実に近い」
そんな感想を漏らしていると、画面が私の前に出る。そこにはチュートリアル大きく表示されていて、冒険者組合と言うところまで行けば良いみたい。
矢印もあるから迷わずに簡単に行けた。中に入ると私と同じように、始めたての人がここに来ていることが分かる。
今度は受付嬢さんに話しかけると良いみたい。
「あ、あのっ、良いですか!」
台がちょっと高いから頑張ってつま先立ちする。辛い。
「はい、冒険者登録でしょうか?」
「そうです」
「それでしたらこちらの用紙に……こちらで書きますのでお名前と、こちらの装置に指を置いてください」
「アヤネです!」
受付嬢さんが優しい笑みを浮かべながら、本来自分でやるはずのことをやってくれた。ちょっと辛いからとてもありがたい。
装置に指を置くと、何かが完了したらしい。受付嬢さんは何か硬い素材で出来たカードを渡してくれた。
「アヤネ様ですね、こちらは身分証です。様々な場面で必要になるので無くさないようにお願いしますね」
「分かりました」
「それと現在新人キャンペーン中なので、こちらを差し上げます」
渡されたのは腰に付けるための少し大きめのポーチ
と赤い液体が入った瓶が3つ、ツルハシが渡された。
「自動収納ポーチ、回復ポーションが3本、鉄のツルハシです。このポーチは容量が少し少なめですが、近くかアイテムを自動で収納してくれます。何か分からないことはありますか?」
「えっと……ここは他に何が出来ますか?」
「常に定額での素材の買い取りや、道具や装備の購入などが出来ます。他にも依頼の仲介を行っていますね。依頼は手数料は頂きますが、アヤネ様も依頼を出すことができます」
「分かりました」
色々出来ることは分かった。また分からないことがあったら聞こう。
「それではお気をつけて」
チュートリアルがまた変わり、今度はステータス画面が開けるようになった。念じるか声に出すか、指を上に振れば開くみたい。
指を上に振ってステータス我慢を開いた。
【名前】アヤネ
【採掘士CL】lv1
【最大HP】100 【最大MP】30
【筋力】5
【知力】1
【器用】1
【敏捷】1
【精神】1
【幸運】5
【SP】0
【CA】〈採掘lv1〉〈強打lv1〉
【SA】〈空き枠〉〈空き枠〉〈空き枠〉
【AP】0
CAは採掘士が取れるもので、SAが私が自由に取れるスキルみたい。どっちもレベルを上げるにはAPを使うか、特別なアイテムでも上げれるとチュートリアルには書かれていた。
SAの枠を増やすには5レベル毎に一つ増えるのと、こっちもまた特殊なアイテムでも増えるみたい。とりあえず今は分かんないから一旦放置。
新しいSAを増やすためにはアビリティブックを売ってるお店で買うか、強い敵から稀に手に入るものなどで手に入れるしかない。
何とかこれらを覚え、ステータス画面を閉じると今度は戦闘のチュートリアルが始まった。とりあえず街の外に行けば良いみたい。
矢印が示す通りに歩いていき、門番さんに見送られながら出ると、そよ風が気持ち良い草原へと出る。
「綺麗〜……」
今時こんな自然はそうそう現実では見れない。呆気に取られていると、私に1匹のツノが生えた兎が迫ってきた。
明らかに私に戯れついてきた訳ではないのは分かる。チュートリアルを見ると、アビリティを駆使してこの兎を倒せと書かれていた。
「こ、こんな可愛い兎を?!」
「キュゥッ!」
「きゃぁっ……」
戸惑っていても兎は止まらず、私に突進を当ててHPを一気に2割ほど持って行った。
「あ、アビリティは…〈強打〉!」
「キュンッ?!」
私の持ってるアビリティは声に出すと発動出来ると見えたから、精一杯のスイングと共に強打を発動させる。
直撃をくらった兎は少しのけ反り、光の欠片になった。この時私は気づかなかったけど、強打はダメージの増加と確率で敵を怯ませられる効果がついていた。
チュートリアルはこれで全部みたい。他に分からないことがあれば街にある図書館とか、このゲームの住人であるNPCに聞けば分かるかもしれないとのこと。
兎を倒したことに少し心を痛めつつも、仕方ないことだと割り切る。でもペットとして飼えないかな……。
「とりあえずCLってのを上げないと駄目なんだよね」
ここから私は群れてない弱そうな敵を見つけては、強打で殴るのを繰り返した。周りを見ると複数人で組んで戦ってたりしてる。
ちょっと怖いけどそう言うのも考えないと。そうしていると、後ろから多数の足音が聞こえてきた。気になって振り向くと…目が血走った多数の敵が私に襲いかかってきていたのだ。
「ひっ?!」
足が立ちすくんでしまい、小熊の爪や兎の突進をくらってしまいHPがガクンっと削れた。回復ポーションはさっきまでの戦闘で使ってしまっている。
後になって知ったことだけど、これはここで一定時間戦闘してると確率で起こるハプニングらしい。多数の敵が一気に襲ってくるけど、一体一体は少し弱くなっている。
しかしパニックになった私が知ることではない。私は悲鳴を上げながら逃げ惑い、冒頭へと至る。徐々に距離は詰められ、奇跡でも起こらない限りは死を待つのみ。
更に追い討ちをかけるように、石に躓いてしまった。もう戦うしかない。私は絞り出すようにアビリティを使おうとする。
「〈強d…MPが?!」
MPが足らず強打は発動できなかった。振り下ろしたツルハシも狙いが甘かったのかただ空振りするだけ。敵の攻撃が私に当たると確信した私は目を閉じ……。
ツルハシの先端が地面に触れた瞬間、突如として私が居る地面だけが陥没した。
「なにこrぁぁぁあああ?!」
恐怖の浮遊感を数秒間にも数十秒間にも思えるほど体感する。下は真っ暗で何も見えない。私は2度目の死を覚悟すると、次の瞬間何か柔らかいものに包まれる感覚を覚える。
「これは……?」
気がつくと一番下に降りていた。周りは洞窟のようになっていて、ランタンが所々に掛けられているから暗くはない。
「おーなー!こっちです!おーなー!」
奥に続く道から、幼い女の子の声が聞こえる。私を呼ぶ声なのか分からないけど、他に道がないから行くしかない。
どの道何かあれば死だ。少し進むと直ぐに声の元へと辿り着く。すると白いスカーフと紺の制服に、ツナを模したメダルを胸辺りにつけた白髪のとても幼い印象を覚える女の子が手を振っている。
「おそいですおーなー!」
「だ、誰……?!」
「おぼえておられないのです? VA一型補助機巧人形、ミエです。おーなーかくにんをしますので、こっちにきてくださいです」
「は、はい?」
手を引っ張られ、手を置く場所がある大型の機械の前まで連れてこられた。
「はやくてをおいてくださいです」
「わ、分かった……」
恐る恐る手を置くと、何かスキャンする音が聞こえた。しばらくすると置いた場所が青く光る。
「やっぱりおーなーでまちがいないです! さっそくVAをきどうするです!」
「待って何かの間違いじゃ」
「おーなーじゃなくてもにんしょうがとおればおーなーです! VAきどう!」
ここら辺は何故か中心に大穴が開いていて、反対側には巨人でも通るのかと言うほど不自然に大きい洞窟がある。
ミエがそう叫ぶと、地面が揺れて大穴の下から何かが迫り上がってくる。身構えていると、その正体が見えた。
それは男の子なら一度は夢見たことがあるらしい、鈍く光る装甲に、重厚感ある高さは数十メートルある巨大な人型ロボだった。
右腕には何か巨大な杭を打ち出す装置を持っている。
「VA一型、きどうしましたです!」
「えぇ……?」
私は混乱のまま、この巨大人形ロボを見上げるしかなかった。
読んで頂きありがとうございます
想像としてはアーマー◯・コアのパイルバンカーのみ機体です