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10話.[この人はいつも]

「ま、待て――」


 部屋の隅に追い詰めてもうなにも言わせなかった。

 ちなみに今日はホワイトデーだったりもする。

 それを渡しに来てくれたところを部屋に連れ込んでこれ、というわけだ。


「……なんなんだいきなり」

「待っていたのに一時間も遅れたからです」


 十三時には行くと言っていたくせに既に十四時を過ぎているところだった。

 そういう約束はしっかり守らなければならないんだ。

 許してくれるという前提で動いてはいけないんだ。


「悪かった。ただ、姉貴の部屋の片付けを手伝っていたんだ」

「俺の方が先に約束していたじゃないですか」

「許してくれ」


 ……まあいいか、それでもこうして来てくれたんだから。

 しかもお返しも貰ったわけだから満足しておけばいい。


「今日もいないんだな」

「はい、基本的にこんな感じですね」

「それなら少し歩かないか?」

「寒いの苦手なのにいいんですか?」

「ああ、なんか歩きたい気分なんだよ」


 そういうことなら一緒に歩かせてもらおう。

 春も近づいているから少しだけマシになっているような気がした。

 ただまあ、それは先輩にとってであり、俺的には別に冬がこようと夏がこようと構わない。


「今日夢に篤希が出てきてさ、なんか振られちゃったんだよな」

「それは俺じゃありません」

「はは、だからそれを確かめるために来たのもあるんだ」


 なにを言っているのかと呆れていたら腕を引っ張られて珍しく先輩に抱きしめられていた。

 場所が場所だから正直不安になり始めたわけだが、幸いか不幸かすぐに離されてしまったからもやもやとした気持ちが出てき始める。


「夢の中でもこうして止めたんだ」

「え、振られたのにですか?」

「ああ、呼び止めてた。いつもなら去る者追わずを貫けるんだけどな」


 自分が特別だとか考えたことはないが、この人はいつもそうだ。

 相手が喜ぶようなことを簡単に言えてしまうのが憎いところだった。

 本当に非モテだったのか? と聞きたくなるぐらいにはそう感じている。


「ちなみに俺が初めてですか?」

「前にも言ったけど俺はモテなかったからな」


 まあいいや、過去に付き合っていようとどうでもいい。

 いまはこうなっているんだからそれでいい。

 付き合ってもらっている形になるから俺だって離れたいと言われたら聞くつもりでいる。

 だって無理やり残ってもらったところで心は離れてしまうからだ。


「先輩、好きですよ」

「何回も言われなくても分かってるよ」

「特殊なのは確かなので言い続けておかないといけないんです」

「はは。そうか、それなら仕方がないな」


 とにかく、先輩が在籍している間になんとかしたかった。

 でも、焦ったところでいい結果はついてこないから楽しもうと決めたのだった。

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