第二十二話・小笠原沖海戦-7
【新生歴1948年 9月13日 夜|西ナマール海上】
東へ転針したナマール海艦隊の本隊にも、分離した別動隊の状況が届いていた。
「日本艦隊の攻撃で、空母2隻戦艦2隻他、巡洋駆逐合わせて9隻全てが沈んでいます。我々もいつ攻撃されるかわかりません。」
「上がった艦載機もどれ程残っているかわかりません」
“戦艦ロンブルム”の艦橋。居合わせる艦隊司令にロンブルム艦長、司令部要員他、下士官に至るまで、事の重大さを痛感している。
暗い雰囲気の中、ロンブルム艦長はつぶやく。
「ここで帰投すべきなのか、」
誰もが最善手だと考える、そして言い出すことのできなかった事。それを艦長は言って見せた。もはや場はそのように流れるだろう。
しかし、流れを変える一言が飛び込んでくる。
「日本艦隊の位置がわかりました!!!ダラップの艦載機が目視しました!」
「どこだ!」
咄嗟に問いただしたが、今更何ができようか。
「ここです、当隊から北に90マイルです!」
艦載機の巡航速度で40分強といったところだ。
「艦隊司令!」
しかし、司令は決めかねていた。
これ以上戦って何が得られようか。日本の島嶼を発見はしたものの、未だ全容を掴むには至らず、ベリモーが座礁した環礁島一帯の優位も確保できていない。
それどころか、日本艦隊からの一方的な攻撃に晒され、艦隊の半数に届く軍艦を失った。
そんな艦隊司令に、参謀が言う。
「おそらく日本艦隊は我々を射程に収めているでしょう。先ほどの4発のロケット弾が証左です。引き返しましょう。」
「進路を北東にとれ、海域から離脱する。」
斯くして、戦闘の終結が宣言された。
かのように思われたが、艦隊司令は続けた。
「空母は失えない。艦隊は北東へ向かい、海域を離脱する。しかし、別動隊の仇はとる。たとえ一隻であっても一矢報いようではないか。」
皆の顔色が変わる。いいや、悪化したというべきか。
「航空機全機発艦!ダラップ機が命をとして突き止めたんだ、何もせずにのこのこ帰るわけにはいかない!」
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【西暦2042年 9月13日 夜|西太平洋上 小笠原諸島より北北東390km地点】
「トラックナンバー3941から3953、撃墜」
「目標さらに近接する」
対空戦闘が始まり、近接する対空目標の54機を撃墜していた。しかしレーダ上では、まだ66もの対空目標が残存していた。
この時点で第一国防艦隊は、擁する艦隊空誘導弾の総数222発の内、67発を消費している。
「間もなくE4警戒機のDSが水上目標に到達します。天候も悪くなってきましたが、針路は維持ですか?」
降水と風、そして高波。天候は悪化の一途を辿っていた。
「維持だ、南の水上目標がまだ健在だ。小笠原を守るためにも対水上戦闘だけはせねばな」
第一国防艦隊は国防空軍の”E−4早期警戒管制機”が連れ添ってきた無人機が、南から北上してくる水上目標の上空へ到達するのを待っていた。
「そろそろか。水上戦闘、当隊270°に展開する水上目標に対する対水上戦闘を行う。」
そんな時、新たな対空目標が探知される。
「新たな対空目標探知、270°、距離86マイル。機数12、尚も増勢。低空で向かってくる。」
「まだ空母が残ってたのか、まずいな。対空戦闘、」
南から北上してくる水上目標には、すでに49式艦対艦誘導弾を発射し命中させた。これで航空母艦は無力化したと思っていたが、まだ航空機展開能力は健在だったようだ。
「探知はできるか?」
「天候も悪く波も高いので、クラッターが酷いですね。」
モニターのレーダ画面には、悪天候による虚像が映っている。
そうこうしている間にも、敵航空戦力の残数は50に減っていた。
お久しぶりです、[虎石双葉_こせきふたば]です。
だいぶ短くてごめんなさい、あと3日で小笠原沖海戦終わらせます。




