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第十三話・三連射

【西暦2042年 9月3日 未明‐‐‐ユト洋ナンバ湾 洋上】


「やはり一発では貫けませんか、」


停泊するレンツ戦艦の右舷後部に命中した初弾。装甲に大きな損傷を与えたものの、貫通には至らなかった。


「この距離で41㎝の鋼鉄は厳しいですね。」


評価係の二人は一発目の射撃について感想を口にしていた。


元々、現代艦の主砲とは主目的に対艦戦闘を据えているわけではない。この127mm単装速射電磁加速砲もそうであるが、基本的には近接する敵航空戦力や誘導弾を想定した対空戦闘を主眼としている。


そのため、優先されているのは運用コストの低減や速射性であって、貫徹力ではない。


もし一発で戦艦を撃沈せしめるのであれば、現在の相対距離約6㎞、4マイル弱よりも近い距離でなければならないだろう。


「しかしもっと近い距離での射撃は、戦闘中では現実的でないですね。」


この世界にやってきて早2年、食糧やエネルギーという最重要の項目では未だに盤石な基盤を確立出来ていない。そんな中で武器弾薬の安定的な供給などさらに困難だ。


個人携帯用の銃器の弾ですら安定供給にはほど遠い今、誘導弾という精密誘導兵器の調達など不可能に近い。


このような状況で始まった戦争では、従来の精密誘導兵器を用いたピンポイント攻撃という戦術の修正を余儀なくされている。


しかし、今の日本に継戦能力などあるわけもない。武器弾薬の使用を最小限に抑えた、ピンポイント攻撃を主とする戦略は、変更できるものではない。


そこで、誘導弾に代わって攻撃の主体に据えようと考えられているのが、爆弾とレールガンだった。


「では艦長、次に3連射をお願いします。」


勿論、レールガン自体や爆弾のプラットフォームは高価なものだ。しかしそれらが消費する飛翔体や爆弾自体は、より構造が安易で比較的調達が容易い。


「了解です。主砲、弾種APPI弾、発射弾数3発。攻撃はじめ」


「主砲、APPI弾3発、攻撃始め」


「3発、蓄電確認充電よし!主砲打ちー方はじめ、」


280,0(二億)00,000(八千万)円から68,000(六万八千)円の鉄塊が3つ、4.8秒の間隔で打ち出される。


「命中しました。レンツ戦艦右舷の乾舷、艦の中部です」


先行する無人艇のカメラがズームされ、映像は初撃の痛々しい痕から左に4メートル程の場所に寄る。


装甲は見るも無残に砕け散り、食い破られた鋼鉄は内側に捲れている。ぽっかりと空いた穴はまるで、返しのついた落とし穴だ。


「この距離なら2発以上でようやくといったところですか。」


すると、命中した箇所で爆発が起きる。命中したのは艦艇の後部だ。機関にダメージを与えたのだろうか。


鎮火されつつあった炎は、再び息を吹き返してレンツ戦艦を包み込まんとどんどん大きく成長していく。


撃沈には至らずとも、レールガンによって活動不能に陥らせることに成功したのだった。

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