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第三話・ユト派遣部隊(おまけマップ付き)

<我が人生 バフティアル・ブルット自伝>

ー 著:バフティアル・ブルット

ー 邦訳:小倉 慎太郎


「これは人道に反する戦争犯罪に他ならない。日本は地球で犯した罪を顧みることなく、我々の星でも幾度とない非人道的な戦争犯罪を続けてきたのだ。」

__________


本来、後世で語られるはずのなかった歴史がある。


【西歴2042年 5月22日 夜‐‐‐ユト洋 洋上】


3か月前。


ナマール海から西に位置する、アドレヌ大陸とユト大陸に挟まれた海。ユト洋。その海を悠然と進む鉄塊たち、数にして4隻。


[いつくしま型ミサイル巡洋艦−6番艦かすが|MCS−217]

[まつ型ミサイル駆逐艦−8番艦いなづま|MD−359]

[ひがき型輸送艦4番艦‐しんこう/LST‐4009]

[ルポルス級軽巡洋艦2番艦‐バリス/A8‐02]


輸送艦しんこうの前方左右を囲んで進む3隻。この中で先行する1隻、軽巡洋艦バリスが掲げるのは日の丸ではない。


紫色の布地に、金や白の煌びやかな国章を中心に据えた旗を掲げる。それはフリト帝政国の国旗。


フリト帝政国の海軍組織、帝政国海軍である。


「まもなくですな。」


揚陸艦しんこうの艦橋には、ここでは普段見ないような制服に身を包む者たちがいた。


「えぇ。ですが困ったことに、先ほどバリスから入電がありました。‐‐‐」


艦長は続ける。


「‐‐‐どうやら沖にレンツ海軍が展開しようとしているようでしてね」


先ほど先行するフリト海軍の軽巡洋艦バリスを通して、帝政国陸軍ユト大陸派遣軍団司令部からある情報がもたらされた。


レンツ海軍の艦隊がここへ向かっているというのだ。


「では揚陸作業にあまり時間はかけられませんね。」


そう話す男の服装は国防軍中央特殊作戦軍の制服であった。


「本来なら5時間程を要しますが?」


彼もまた国防海軍の所属ではない。国防陸軍の人間であり、役職は統合軍特殊作戦軍団幕僚幹部の特殊戦略部計画課長補佐だ。


「本省からは、フリト海軍が時間を稼ぐと伝えられていますが限界はあります。どうあっても4時間を、22時を超えた時点で撤収せよと。」

__________


【西歴2042年 5月23日 朝‐‐‐ロブロセン共和国 オーツァー軍港】


オーツァー港。フリト帝政国によって整備されたロブロセン共和国の港湾施設である。その一角に、新設されたばかりの倉庫群があった。


その中の一つである第5倉庫には今日、様々な国の人間が集まっていた。


ロブロセン共和国の政府首脳陣に共和国軍、そしてフリト帝政国軍やペント・ゴール帝国軍の高官ら。国籍のわからない者たちも数名いる。


ユト大陸のロブロセン内戦において、その情勢を直接動かす重要な勢力の重要な人間たちである。


「これがその?」


「なるほどこういう進化をするわけですか。」


スーツに軍服と、この場には大分類で二種類の服装をする人間しかいない。案内された彼ら20人弱が目の前にするのは、四角い箱のような装軌車両だ。


戦車のような足元であるが、砲身がなければ無論回転砲塔もない。まさに箱に無限軌道をつけたような車輛であった。


「えぇ。これが皆さんが運用するロケット弾の次の段階、誘導ロケット弾。我々がミサイルと呼ぶものです。このMLRSは一度に12発のミサイルを発射が可能です。」


「ミサイル、、、誘導ということは、遠隔で操作するのですか?」


「方式には様々なものがあります。発射後、ロケット弾自身が目標を探知し全自動で追尾するものも勿論あります。」


ロケット弾といえば、従来の砲弾よりも射程が長く、広域同時攻撃を得意とする面制圧向けの火器である。


「我々の技術は精密射撃を可能としています。目の前にあるものは基本的に対地用と用途が違いますが、地上から撃った一発が上空の航空機を墜とす事も容易です。そして運用者はロケット弾が探知した目標を、画面上で選択するだけです。」


「なるほど、すさまじい。」


では次に。そう案内された一同は、倉庫に入った時から常に視界の隅に入り込んでいた、最も注意を引くものの前へ向かう。


全長は20mを超えるだろうか。先端が円錐状で横倒しにおかれた巨大な円柱。それを載せるタイヤの付いた架台もこれまた巨大で、まるで鉄道のコンテナ車だ。


「詳しくはお伝え出来ませんが、このミサイルは5,000km先の目標に対しても、その誤差20mの範囲で正確に射撃が可能です。空高くまで上昇し、落下エネルギーを味方に最大でマッハ10、秒速12,000kmまで加速します。我々は弾道ミサイルと呼んでいます」


マッハ10。音の10倍の速さなど想像もできない領域だ。音の速度とは近年セリトリム聖悠連合皇国がようやく超えたばかりである。その10倍とあれば、驚くのも無理はない。


「マッハ、10、、、」


そんな高速でこの質量が襲い掛かかれば、炸薬が搭載されていなくても相当な被害となるだろう。建物など簡単に貫かれ、そしてこれを探知も迎撃することもかなわない。


ロケット弾の先端、巨大な円錐状の弾頭を見ればめまいすら覚える程だ。


「ではこれが例の?」


黒いスーツに身を包んだ男が質問した。制服組もスーツ組も、組織は違えども国籍を同じくする者同士でみんな集まっている。


そんな中、黒スーツだけの2人組がいた。尋ねて来たのはそのうちの一人であった。


「いいえ、このミサイルの弾頭は通常の火薬です。」


それではこちらに。その案内の先には一つのコンテナが置かれていた。


「開けろ」


制服姿で案内をしていた者と同じ、中央特殊作戦軍の軍服。こちらは作業服装であるが、その者たちがコンテナから一つの荷物を取り出した。


架台に載せられた棒は先ほどの25式中距離弾道誘導弾よりも小さい。長さは6mにも満たないだろうか。


「こんなに小さいのですか?」


皆が驚くのはミサイルの全長もそうであるが、その視線は弾頭へ注がれていた。


「はい。ただ、2発のはずだったのですがこちらの手違いで一つしかお持ちできませんでした。申し訳ありません。‐‐‐」


今回、日本国はロブロセン内戦を舞台にした軍事ショーを開催しようと考えた。


完全招待制の秘密のショーに観客として腰を降ろすのは、レンツ帝国、ペント・ゴール帝国、ロブロセン共和国、そしてセリトリム聖悠連合皇国である。


「‐‐‐アルカディア極超音速巡航ミサイルブロック2。弾頭はW10‐L/2貫通型強化核弾頭。これが皆さんが研究している物の帰結、核兵器です。」

挿絵(By みてみん)

お久しぶりです。[虎石_こせき]です!


ついにセリトリムとの接触が!

セリトリム聖悠連合皇国との国交樹立に向けて、着々と事が進んでおります。


が、あと一国。フリト、レンツ、ペンゴ、セリトリムと続いて、列強5カ国の中でまだ日本が接触していない国がありましたね~。はてこの場合は新キャラと言うべきかそうでないか、自分でも分類に苦しんでいますが、登場お楽しみに

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