第二話・宣戦布告
【西暦2042年8月21日 昼過ぎ‐‐‐旧首都圏政府直轄開発地東京地区 政令指定特別区域 国会議事堂衆議院2階 議場】
国会議事堂内、衆議院本会議場。壇上に立つのは石橋 内閣総理大臣である。
安全保障に係る関係省庁の段階的な態勢に関する法律(遷怜元年法律第百八十九号)第八条のニ。これは国防レベルの2、国家体制を戦時下へ移行することを定めたものである。
そして国防軍設置法(昭和二十九年法律第百六十五号の改正)第六章 国防軍の行動 第九十条。これは国防軍に対して条文に依る処の国防行動、言い換えれば火器の使用を想定した国防に要される軍事行動を指示するものである。
この二つの発令とはつまり戦争状態を意味する。そしてこの発動には本来国会の承認が事前に求められる。
『建国からもうすぐ1世紀が経とうという今日、我が国を取り巻く安全保障環境は、日々悪化し続ける歴史を歩んできました。朝鮮戦争や中越戦争、湾岸戦争に露宇戦争といった歴史的な大事件、そして中東情勢や北朝鮮問題。中国によるアジア太平洋地域の情勢不安は、台湾紛争や日中軍事衝突という武力衝突にまで発展しました。
ですが戦後日本は、平和憲法の下、これらの歴史的な背景に多大な影響を受けながらも、一貫して対話による平和の追求に尽力してきました。
そして我が国はこれらの歴史において、一度たりとも自ら武力を行使することは決してありませんでした。戦後日本は常に、対話による平和的解決を目指し、専守防衛と平和主義という崇高な思想のもとで、常に国際平和に寄与する最大限の努力を続けてきたのです。
そんな中、日本国転移等一連の特異的不明事案は起きました。
しかし、惑星が変わっても、我々の実行すべきことに変わりはありません。対話による平和的な問題解決を目指し、国際平和のために全力を尽くすこと。これは日本が建国以来、半世紀以上にわたって貫いてきた国是であり、我が国が存在し続ける限り不変の、そして最高の目的であり、国際社会における我が国の義務なのです。
この外交指針はレンツ帝国に対しても例外ではありませんでした。
しかし彼らは交渉の卓に就くことはせず、我が国に対する武力行使という選択を突きつけました。
皆さんもご覧になったと思います。あの変わり果てた沖ノ鳥島の姿を。対話のつもりがない相手に対しては、力強い態度で接しなければなりません。私は、一人の首相として、自国民を、日本国の民と領域を保護する苦しい決断を下しました。ですが反省することはありません。
国民の生命と私有財産、領域を保護する。これが国家の政府としての最大の責任であり、存在意義であり、当然の義務なのです。あの戦争以来、我々日本人は平和的な手段で国際社会の安定と繁栄を追求し続けてきました。
ですが我々にも守らなければならないものがある。国家の安全と人権という、保障されて然るべきものは今、武力による一方的な現状変更を試みる、レンツ帝国によって脅かされているのです。
我々が直面している試練は、そう簡単に乗り越えられるものではないでしょう。しかし歴史を思い返してみてください。そして目の前に広がる現実を見てほしい。伊勢湾を、東日本を、関西を、熊本を、東京を。
我々日本人は、戦後の歴史の中で幾多の困難に直面し、それを乗り越えてきました。伊勢湾台風から第二次関東大震災に至るまで、私たちは常に困難を克服し、前進し続けてきたのです。その日本民族の精神が今、再び試されようとしているのです。
レンツ帝国の挑戦に、我々は毅然とした態度で接しなければなりません。日本の未来を守るために、私たちは立ち上がり、この惑星の平和と安定のために全力を尽くす決意を新たにするのです。
この惑星でも我々日本民族の精神と誇りを胸に、真に国際平和を追求するという我々日本国の義務を全うしようではありませんか。』
衆議院の決議は国防態勢レベル2への移行と、防衛出動の発令を承認した。翌日の参議院本会議における決議も同様のモノであり、ここに日本国の総意が戦争へ傾いた事が示された。
お久しぶりです。[虎石_こせき]です。
もう2場面書きたかったんですが、間に合わなかったですね、
次回からはユト大陸のロブロセン内戦について書きます。
次回は3カ月前の回想からです。
3カ月前、、、ちょうど環ナマール=ユト緊張のユト沖不砺衝突事件が起きた時期ですね~




