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第三話・後編:夜明け

【新生歴1948年 8月20日 明け方−−−西ナマール海 洋上】


未だ顔を見せずとも、微かに漏れ出るその陽光が水平線下からの存在感を示している。もうじき上がるであろう太陽は、闇に包まれる大海原を僅かながら照らし、夜明けの兆しを見せている。


巡洋艦ベリモーが座礁した地点を目指し、ヨルド海軍基地から1週間かけてやってきた船団。これはすでに隊列を崩し、旗艦であるトウファー級戦艦4番艦エッシュはテセラ級駆逐艦8番艦ノースと共に、環礁島から10km離れて、ゆっくりとその場を航行している。


残る2隻、駆逐艦アーセリアと巡洋艦ダウムはその環礁島に向かって尚も前進している。2隻が護衛しているのは、レンツ帝国第三セクターの海運系企業であるパルメッツ汽船株式会社から徴用されたサルベージ船、第3コードル号だ。


「日本艦隊の動きは?」


「現在もフリゲート2隻が並走しています。環礁島付近にいる残りの艦艇が我々の前に出るような動きを見せています。」


サルベージ船第3コードル号はその特性ゆえ非常に鈍足であり、最大で18ktnほどしか出せない。経済速度は15ktnだ。


「コードル号、環礁島まで8kmです。」


今回の目的はベリモーの回収だ。日本国との会談は決裂して本件の所管を移管された軍事省は、フリト帝政国が介入するよりも前に強行的に回収することを選んだ。


ここでの介入とは、ベリモー座礁事故だけでなくロブロセン内戦においての介入も含まれてる。


「ここで日本と戦争になってもフリトは出てこないと、上は判断したらしい。」


「では攻撃するんですか?」


「いいや、こっちから進んでするわけじゃない。ただそれも許容するという話だ。」


日本国は謎の多い国だが、所詮列強国から武器供与を受けた建国から2年の傀儡国だ。

__________


戦艦エッシュと駆逐艦ノースの2隻を置いて、ベリモーが座礁した環礁島にさらに接近する3隻。これは巡洋艦ダウムが先行しての単縦陣を組んでいる。


「目標まで8マイル」


「よぉーし。日本艦隊の動きに注意しろっ。ユト沖のネリバートンみたくするなよ?」


帝政国海軍と帝国海軍がユト沖で相対したユト沖緊張では、帝国海軍の駆逐艦ネリバートンが帝政国海軍の艦艇に体当たりをし、現在は修繕が行われている。


どうやらネリバートンの艦長はこっぴどく叱責を受けたそうだ。曰く、この情勢下でなければ首を飛ばしたところだ!、と。


「日本艦隊の一隻が接近する動きを見せています!」


「相対距離は?!」


「約4マイルです!」


4mile、約6.5kmである。


「接近させるな、無線で警告を出せ」


艦長がそう言った瞬間、後方から迫る光が瞬く間に夜の闇を祓い、黒い海を照らして青く染め上げる。


振り向けば水平線に伸びる光の道が、これから起こることを祝福せんとしているようだ。


「艦番号を確認、217。217です」


「217番?」


艦長は回顧する。どこか引っかかる数字だった。たった今明けたばかりだが、夜の海と217番の軍艦。


同じような状況を話で聞いたことがある、気がする。しかしどれだけ思い返しても、それは指のささくれのようなむず痒さを残して答えは出なかった。


「艦長!−−−」


物思いに耽る思考は下士官の報告で現実に引き戻された。


「−−−前方より何かが接近中です!」


瞬時に目の前の事柄に注意を向ける。


「相対距離は?」


「えぇ、おそらく3から2マイル。かなり小さいです」


直後、日本艦隊から無線通信で何度目かわからない警告が発せられた。

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