第四話・沖ノ鳥島緊張−2
今回は量質共に少なくなってしまいました、m(__)m
【西暦2042年 5月22日 夜−−−日本国東京都小笠原諸島 沖ノ鳥島より南西18km地点 洋上】
海洋観測母艦はまきりは今、第16護衛隊に合流せんと最大速力である16ktnで西進していた。
「目標α、本艦後方1.3マイルに占位。進路速力変化無し。」
海中にてスクリュー音と思われるものを聴知し、潜水艦と断定されてからその追尾を行っていた。しかし直後、友軍からの情報を受けてすぐに転進した。
それは国籍不明の艦艇群、特徴からして地球史上の第二次世界大戦末期から東西冷戦初期にかけての巡洋艦に相当する軍艦が複数隻確認されたのだ。
おそらく帰属国家はこの潜水艦と同じものであろう。
「16護隊との相対距離は?」
「75マイルです」
約75mileをkmに換算すると約120となる。単純計算で合流までは2時間と30分だ。
「艦長、音響のアクティブを打ちましょう。−−−」
海洋観測母艦はまきりが運用していた音響こと、UR−BPT無人音響測定短艇は現在3艇全てが国籍不明潜水艦の探知のために海中にいる。
国籍不明潜水艦の両舷側と艦尾後方に1艇づつ、誘導制御プラットフォームを含めて四方を囲むように配置している。
国防海軍で運用しているものや、それに相当する地球の諸外国海軍のものもそうであるが、潜水艦だけではなく艦艇にとって後方とは、潜水艦相手には最も晒すことを避けたい相対位置である。
海を進む艦船とは必ず艦尾に推進器を備えているものだ。そしてこの必要不可欠な機構からは常に雑音が発生しているため、艦尾に超音波探信儀を備えても十分な効果は期待できない。
艦船にとって艦尾方向とは後方、とりわけ水中からの死角となる。水上艦艇では曳航式の超音波探信儀や回転翼機、各種無人航走体によってその弱点を覆うこともできるだろう。
しかし潜水艦はそうもいかない。この世界の技術力は総じて第二次世界大戦末期から東西冷戦初期にかけての地球のそれに相当すると言われているが、その技術段階の潜水艦にとってはなおさらなはずだ。
今国籍不明潜水艦の後方を占位するUR−BPT無人音響測定短艇からアクティブソーナーを発射すれば、絶大な抑止力となるだろう。
艦尾を付き纏われるということは、例え1世紀ほど先を行く時代の水上艦艇相手でさえも十分な精神攻撃たり得るのだと、この艦内を見渡してみれば身に染みて理解できる。
「−−−十分な牽制になるはずです。」
艦長を前に意見具申した航海長もかなりのストレスを感じているはずだ。距離も1.2mile、2kmを切っている。
「わかった、−−−」
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【西暦2042年 5月22日 夕方−−−日本国東京都小笠原諸島 沖ノ鳥島より東70km地点 西太平洋上】
→日本国国防海軍第3航空群所属、第23警戒隊隷下、第106哨戒隊
[P−1G哨戒機]
海上自衛隊時代から在籍する現役の数少ない装備の一つで、現在では誘導制御能力の付与を主とした改修が行われており、少数の無人航空機の運用が可能となっている。
現有のP−1哨戒機は全てがこのG型に置き換えられているが、そもそも後継となるP−2哨戒機やE−4/JSM早期警戒管制機の導入が進み、順次退役が進んでいた機体であった。
『えぇ左下、巡洋艦らしい船舶視認。数えぇ、9、、10隻。』
国防海軍硫黄島航空基地から離陸したP−1Gは、国籍不明の艦艇群に対して接近を試みていた。
『このまま回り込んで、左からいこうか−−−』
艦艇群右後方から大きく左に旋回し、10隻を遠目で確認しながらその進路上を横切る構えをとる。
『−−−アビームついたアプローチ。3、2、1、マークアビーム。』
『えぇカメラ中央、横陣の艦艇10隻前から撮影中。たぶん巡洋艦で、えぇ主砲指向無し、灯火無し。Hull number見えない』
国籍不明の艦艇群の進行方向の目の前を通過した。今の所は攻撃の意思は読み取れない。灯火管制が行われているようで、また日が落ちているためか艦艇番号等は確認できなかった。
『ネクスト。アビームポジション、後ろから真ん中割って入る。』
『今カメラ中央、横陣の前から見て右2隻撮影中。砲塔が、あぁ3基。前2基とうしろ1基。3基とも2門、未だ指向無し。』
大きく旋回し、国籍不明艦艇群の進行方向に向かい合うように右側から通過して、その様子が告げられる。
『ネクストアビーム、アプローチついた。割って入る3、2、1、マークアビーム』
『今カメラ中央、後ろから左の2隻撮影中。えぇHull number、一隻が、あぁ441。印章見えた、国籍は、、これは、レンツ。国籍レンツ帝国』
フリト帝政国からの提供で、主要国の国旗や軍旗についてはここ数ヶ月で情報が伝わっていた。手元のファイルで探したところ、おそらくレンツ帝国の帝国海軍であることが判明する。
『えぇ、ネクストアビーム。サードアプローチ。左から入る−−−』




