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第十二話・カムラ国際会議−1

前回、新生暦1960年と表記すべき箇所をすべて同59年と表記していましたので修正致しました。

【新生暦1948年 1月30日 深夜−−−ロブロセン共和国 暫定首都ビーア地区】


世界情勢を急速に動かした独立に湧くこの国は、停戦協定が締結された現在で尚、民意は頑なな戦意を維持し、戦線から最も遠いこの場所でもその殺伐とした空気は充満していた。


揺れる馬車の中、そんな街を誇らしげに眺める男がいた。ロブロセン共和国暫定政府の首相であるドルガン・テリスだ。


「革命体の動向はつかめたか?」


「不明です。ここ数ヶ月で構成員4名を捕縛していますが、情報を吐きません。」


食料や衛生、経済など、まだまだ脆弱な基盤の上に立つこの不安定な国では様々な問題が山積みだが、それ以上に早急な解決が要される問題があった。


「キルガー革命隊か、国外に出られればもうどうすることもできない。」


ロブロセン内戦では、元々ロブロセン王国の王国軍に籍を置いていたキルガー・ビジューという男が、自身が麾下とする部隊と一緒になって、共和国の蜂起と同時に王国から寝返った。


ロブロセン共和国ではキルガー大隊と呼ばれていたが、ロブロセン王国に対する憎悪があまりに大きく、いつしか彼とその意に賛同した一部の部下たちはテロリズム組織と成り果てロブロセン共和国も手がつけられなくなっていた。


彼らが標的にするのはロブロセン王国やそれに関連する国々でありロブロセン共和国が被害を被ることは一度もなかった。それでも王国に対する自身の正当性と、誠実さを誇示しプロパガンダとするロブロセン共和国でテロリズム組織が生まれたとなれば、これは国家の戦略上許容できるものではない。


「列強国であればそう簡単に入国はできません。そもそもどうやって海を渡るというのですか、大丈夫ですよ首相。」

__________


【新生暦1948年 2月4日 朝−−−マカルメニア民主国地方都市ジピア ジピア港】


各国に開催の提言が通知されてから9ヶ月、ようやく実現したロブロセン情勢に関する事項及び軍縮について等が討議される国際会議。


それに伴いマカルメニア民主国では、国中が張り詰めた空気に包まれていた。開催地である高級宿泊施設、アルノルト・ベリーロンド=カムラがある首都カムラは勿論、そこから4kmほど離れたここジピア港もまた、いつもとは違った様相を見せる。


地方都市ジピアにあるジピア港は、ミュートル内海で最も規模の大きい港だ。西ミュートル海や東ヨルシェ陸央内海への中継地としても機能している。


今回の国際会議に参加する12カ国のうち、オブザーバーとしての参加に留まった国を中心とした6カ国、エルテリーゼ大公国、ルジェニスタ共和国、セント人民共和国、タール・二・バエア、ヴォルコビア=ヴォルノバル共同体、スロアニルル王国は、その国の在マカルメニア大使館から大使が参加する。


実務者が本国から派遣されるのは5カ国、フリト帝政国、ペント・ゴール帝国、セリトリム聖悠連合皇国、レンツ帝国、日本国だ。


この5カ国のうち4カ国は船舶での来国となるため、アシュニスィ海峡係争の解決が目的の1つである当国際会議の姿勢を国内外にアピールすることも目的に、ここジピア港が選定された。


「レンツ船舶を確認しました」


「誘導しろ」


今回、このジピア港における一連の業務を任されたのはマカルメニア沿岸警備隊であった。


海軍籍の船舶による護衛はあるだろうが、各国ともに表向きには武装の無い輸送船や民間船舶での来国を通知している。


最初にやってきたレンツ帝国の船舶も、見た目では輸送船であった。しかしこの情勢下である。恐らく最低限の武装は積んでいるのではないだろうか、そうでなくとも戦闘可能な小規模の軍部隊が同乗しているだろう。


その後も順に大使は乗っていないがセリトリム聖悠連合皇国、ペント・ゴール帝国が到着した。あとはフリト帝政国と日本国という新興国だ。


「フリト船舶を確認、その後方に日本籍と思われる船舶を確認しました。」


フリト帝政国は明言していないが、日本国は恐らくフリト帝政国が仕立て上げた新興国なのだろう。ナカルメニアという国も立ち上げたフリト帝政国だ。一体どんな狙いがあるのだろうか。


「あの隊長、日本の船がフリト帝政国と同等だとの報告が入りまして、」


「何?新興国が列強と同等の船を持っていると?」


今回船舶でやってくる国は日本国以外すべて列強国だ。外交的にも慣習的にも、列強国と日本国の船を同等に扱うわけには行かないと、日本国の船舶を係留する場所として充てがったのは、少し離れた規模の小さい桟橋であった。


「同じくらいの大きさなら、係留できないな。」


「どうしましょうか、」


「少し待ってろ、上に確認する。」

__________


【西暦2042年 2月4日 昼−−−マカルメニア民主国地方都市ジピア ジピア港より600m地点 海上】


「なんかあったのかな」


「さぁ、何か手違いがあったのかもですね」


今回、カムラ国際会議日本国代表団に任命された滝沢 輝をはじめとする使節団の移送を担当するのは、日本国の民間企業である嶺獅賀海運事業(株)が運用していた旅客船かいじんである。


全長210m、全幅24mの旅客船は、単縦陣で並んで航行するフリト帝政国海軍の人員輸送を主目的とした非武装艦、フォーリア級輸送船1番フォーリアと同等である。


フリト帝政国から事前に伝えられている、国際規格の船舶無線周波数にてマカルメニア民主国のマカルメニア沿岸警備隊から伝えられた停船要求から15分ほど経っただろうか。


『日本国代表者乗船船舶へ、準備が整ったので案内いたします。』


その後、マカルメニア沿岸警備隊の曳航船により誘導を受けて、アドレヌ大陸から共にここまでやってきたフォーリアをはじめとする4カ国の船とは少し離れた位置、大型船舶用の桟橋を2つほど隔てた位置に停泊した。

みなさんこんにちは、[虎石_こせき]です。

カムラ国際会議が始まろうとしていますが、何事もなく無事に終わればいいですね。

それと今回名前が出た営利団体(嶺獅賀)は結構すごいところらしいです。

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