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日本国の指針〜第五世界との接触  作者: 虎石双葉_こせきふたば
第二章・ユトの動乱

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第六話・テンキルの街

【新生暦1947年 4月25日 夜−−−フリト帝政国エルトラード皇国占領地 シャロ県テンキル沖約1.7km地点 海上】


フリト帝政国によるエルトラード皇国への侵攻が始まってから3ヶ月が経った。現在その戦線は、開戦当初から大きく西に動き、着々とエルトラード皇国の中心部へと迫っていた。


そんな中、フリト帝政国から講和会議に向けた停戦協定の申し出でがなされ、その返答期日が今日の午後8時であった。


「テンキル、美しい街だったんでしょうね」


海に面するエルトラード皇国領のシャロ県は、水産業の中心となっていた県であった。


いつもであればこの時間、古き良き木造の街なみが放つ淡い光が海に反射し、ゆらゆらと海面に写し出された色とりどりの木骨建築と合わさって幻想的な光景を作り上げていたはずだった。


しかし今はどうか、街には灯りなどまばらにしか見られず、中心部などは特に破壊の限りを尽くされ、エルトラード皇国が世界に誇る長い歴史と風情の港町は、その欠片が少しばかり残されただけの、なんとも悲しい様を呈していた。


「皇国は講和などしないだろう」


今にも事切れそうであるが、辛うじて残されたほんの少しばかりの街の鮮やかさが、ほとんどを占める灰色の土と瓦礫を引き立たせ、そのコントラストがなんとも虚しい様子を見せる。


そんな街とは対照的に、実用のみを追求して機能美に満ちた、手入れの行き届いた無機質な鉄の部屋で、男は話していた。


フリト帝政国海軍の最新鋭艦、シム級噴進弾搭載戦艦2番艦シム・カフォール。その艦長である。


「港町テンキルは皇国の歴史的中枢だ。そんな場所をこのように荒らされ、むざむざと降伏などできるはずがない。合理的に考えればすべきなのだろうが、感情はそれを許さないだろう。」


目の前に広がる暴力の跡を生み出した男は続ける。


「それに陸では戦線が膠着し、反転攻勢も憂惧れているそうじゃないか、」


「確かに、この状況で講和の打診というのも決定打に欠けますね」


そんなことを話していると、下士官が2人に割って入り一枚の紙を手渡した。。


「艦長、艦隊司令部からです」


艦長はその紙を受け取り、目を走らせる。


「やはりか、」


「どうなさいました?」


「艦隊司令部からだ、『停戦は成らず』だそうだ。」


「やはり、」


艦長は悲しそうな顔を浮かべた後、小さく呟くように指示を出した。


「砲撃戦よーい」

__________


【新生暦1947年 5月3日 深夜−−−フリト帝政国エルトラード皇国占領地 シャロ県テンキル モンズコット城】


エルトラード皇国の旧都テンキルに聳え立つ城。かつて国の中枢置かれ、最近まではシャロ県の県庁として機能していた建物は今、フリト帝政国テンキル占領軍の司令部となっていた。


「いつになったら侵攻するんだ」


あてがわれた自室から会議室に至るまでの廊下を、軍装に身を包む幾人もの取り巻きを引き連れずかずかと歩く男は怒りを露にし、すぐ横を歩く部下に当てつける。


テンキル占領軍を成す部隊のうち、そのほとんど占めるフリト帝政国陸軍西部第7軍、その軍団長、ギュンター・U・ルクセンブルクだ。


ここテンキルは、エルトラード皇国の現在の首都タキスッフから130kmほど離れており、すぐにでも軍を敵首都に向けて動かしたいのだ。


しかし、本国からの指示はいつ聞いても待機である。我慢にも限界があると、日頃から漏らしていた。


「おそらく本国は777を使うつもりで、到着までの待機を命じているのかと、」


フリト帝政国の軍事面においては軍務省というものが所管しており、その下に内局として海軍局、陸軍局が存在する。部隊の所属はこのどちらかに分かれているが、帝都の防衛と皇帝の身辺警護、極秘任務等も担当する軍の精鋭部隊などは、軍務省の直属となっている。


それら精鋭部隊はアルファベットに777の符号が与えられ、Aは歩兵師団、Gは海軍艦隊、Mは航空団を示す。ちなみにA−777は陸軍の歩兵部隊に先駆けて隷下の全部隊が既に機械化され、歩兵師団と銘打ってはいるものの砲兵連隊や戦車連隊等も所属している。


その結果、A−777歩兵師団は、師団と言いつつもその規模は2個師団の定数を超えていた。噂によれば、名をA−777歩兵師団からA−777軍団へと変えるか否かが議論されているとかいないとか。


「A−777歩兵師団か、あんなものがいなくても我々だけでなんとかなるわっ」


そう言いながら足を進め、やがて会議室の前へと到着する。


「軍団長入られます」


ギュンター軍団長が会議室の中央におかれた長机の上座に座るのを確認すると、すでに待っていた参謀たちも自分の席へと腰をおろす。


「まず報告があります。本国より、軍務省直轄の部隊が派遣されたとのことです。」


やはり、軍務省は自身が誇る精鋭部隊に花を持たせる魂胆らしい。しかしここで疑問が浮かぶ、いつもならA−777部隊と表記されるであろう箇所を、今回だけは軍務省直轄部隊と表現していたのだ。


「新たに創設された777部隊でしょうか、」


「全く気に食わん!」


報告をした参謀の1人は、直立不動のまま続けた。


「どうもA−777歩兵師団の中の、噴進弾を中心とした新兵器の実験的部隊だそうです」


噴進弾といえば海軍でも使用されている、近年新たに開発された新兵器だ。なんでも砲弾に自噴機構を取り付けたもので、従来の砲弾よりも射程が伸びているしい。


海軍ではこれを戦艦などに搭載し、主に洋上からの地上に対する面制圧などに使用しているそうだ。


「命中制度が低く、面制圧向きの火砲です。いったいどこに撃つ気でしょうか、」


「詳しい情報は伝えられていません。」


「まぁそう大したことはないだろう。実験的部隊なのだろう?」


「えぇ。報告では、1週間後に到着するそうです。テンキルの街から1km離れた地点に観測所等を設置するそうなので、場を整えろとのことです。」


ギュンター軍団長はそれまで以上に嫌な顔を見せた。


「ここを制圧したのは我々だというのに、裏方に徹しろと?」


ここテンキルを制圧するにあたり、最初に艦砲射撃が行われたが、それだけで敵を殲滅できるわけはない。そのため、このテンキル占領軍の歩兵部隊が殲滅戦を実施した。


艦砲射撃で敵の軍部隊を壊滅せしめたとはいえ、遊兵化した敵兵はまだ大勢おり、各所で反抗を続けている。現在も完全に制圧ができているかと言えば、そうではない。


ここまでくるのにもかなりの労力を費やしているのだ。そんな中、自分たちが整えた環境に横から割って入られ、手柄を横取りされるなど許せるはずがないというもの理解できる。


「いいだろう、その部隊がどれほどの力なのかこの目で見極めてやる。いくら装備が強かろうと、厳しい訓練に耐えていようと、実戦経験が、積み重ねてきたものが違うのだ」


大見栄を張るギュンター軍団長の態度からは強い自信と揺るぎない意志が垣間見える。実際、実戦経験でいえばフリト帝政国陸軍西部軍は他のどんな部隊と比較しても絶対に負けることはないだろう。


「して、場を整えろとは?」


舞台を用意しろと言われても、実際に何をすればいいのか、疑問をぶつける。


「参謀本部からは、今回の軍務省直轄部隊には付随して、軍務省の高官や外務省職員、他国の外交館付駐在武官なども来るとのことだそうです。彼らの安全を確保しつつ、徹底した機密保全に務められたいと、」


一同にある疑問が生まれる。


「外務省?なぜ外務が出張ってくる?」


「どうやら政府は、今回派遣される部隊の能力を外交的手段としても利用したいそうです。その中には例の日本という国からの派遣もあるそうですが、詳しいことはまだ、」


「日本に我が国の力を見せつけるというのであれば納得だな。聞けば奴ら我が国の戦爆を堕としておいて、公式な謝罪もまだだそうじゃないか」


ギュンター 軍団長にとっては毎度のこと手柄を横取りしてくるA−777歩兵師団よりも、日本国に対してのほうが不満は大きいらしい。


「詳しいスケジュールについてですが、テンキル側に特に問題がなければ、1週間後の5月10日にA−777の部隊が到着、その2日後に例の実験的部隊と客人を迎えろとのことです。」


「いいだろう。その実験的部隊とやらの本部設置場所の選定を明日までに頼む」

お久しぶりです。[虎石_こせき]です。


フリト帝政国もそこまで継戦能力が高いわけではなく、その傍ら日本への支援もあります。どう戦争を終わらせるつもりなのでしょうか。派兵される実験的部隊とは、、、


ー次話、第30部の投稿は2023/11/13/00:00を予定しております。

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