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第四話・フリトの策謀−2

【西暦2040年 9月11日 夜−日本国旧首都圏政府直轄開発地東京地区 政令指定特別区域 首相官邸北棟2階 閣僚会議室】


フリト帝政国の日本視察団が帰国してから1ヶ月弱、フリト帝政国と正式に国交を樹立してから1週間が経過した頃だ。


食糧危機にも光明が見え、現在は外務省をはじめ、農林水産省や経済産業省、生物災害対策防疫庁などは特に、各省庁とも仕事に追われている。


またつい先日、フリト帝政国の外交出張所も設置され、日本とフリトの交流はようやくスタートラインに立ったと言えよう。


そんな中、フリト帝政国から腕曲に食糧輸出を人質にとったある要望が伝えられた。


第129代内閣総理大臣を経て、現在41年次職務執行内閣を束ねる男は苦い顔で外務省より上がった書類をまじまじと見つめる。


「国府田総理、厳しいところですが、呑む他ありません。」


恐る恐るそう発言したのは、この部屋の壁際に並べられた椅子に座るそれぞれの補佐官ら計5名を除いた、参加者4名のうちの1人だ。


名を赤城 勝馬 外務大臣である。


共に円卓を囲む他2名、綾野 内閣官房長官と則田 国防大臣も同じようにその表情は重い。


今この閣僚会議室で開催されているのは、形態を四大臣会合の国家安全保障会議である。


国家安全保障会議は大きく二つ、定例的なものか、緊急のものかで分けることができる。


今回の4大臣会合など、事前に開催が決まっている定例的なものであれば閣僚会議室で、そうでない緊急事態発生時などに緊急で開催されるものは地階の第二会議室で行うというのが、昔からの通例である。


ちなみに一つ前の3代目首相官邸では、大会議室と呼ばれる4階の大部屋がこの場合の第二会議室と同じ役割であった。


「フリト側からは、早くて4ヶ月後だと、」


しばらくの沈黙の後で、綾野 内閣官房長官がつぶやく。


「私は賛成です。」


「則田 大臣はどうお考えで?」


国府田 内閣総理大臣はおそらく渋々の承認という選択を採るだろう。そして赤城 外務大臣はそれを促す発言をした。


綾野 内閣官房長官自身はたった今、賛成の意を表した。残るは則田 国防大臣だけだ。


「いきなり訳のわからない世界に飛ばされて、我が国が最初にやることがこれか、」


「大臣、」


則田 国防大臣はしばらく黙ったまま俯き、手元の資料を何度も読み返す。


「我が国が生き残るには、これしかないのか、」


細い声を絞り出すように、ひとりでにそう言い放った。国府田 内閣総理大臣を始め、残りの2名はそれを賛成と受け取ったようだ。


「フリト側の要求を呑むとしよう。この事項を、国家最重要機密に指定し、取扱資格は二類とする」


日本国における国家機密とは、各所管官庁が保管するものだが、その機密段階の指定や指定解除に関する権限とは内閣情報局に拠る所管業務である。そのうちには3つの区分が存在し、国家最重要機密はその最上位である。

__________


【西暦2040年 9月12日 深夜−日本国栃木県 国防省本庁舎地下2階 統合司令室 国防総軍統合参謀総長執務室】


「最低でも2個中隊から1個大隊規模か、」


「本来であれば一個分隊でも事足りるでしょうが、今回のは敵地に乗り込んで秘密裏に、と言うわけではないですからね」


国防省の地下深く、地下2階の最奥。国防省本庁舎地下2階統合司令室国防総軍統合参謀総長執務室。


国防軍で最高位の地位に就く女性、矢賀 国防総軍統合参謀総長。彼女と話しているのは、国防軍で彼女に次ぐ地位を任されている男、竹田 国防総軍統合参謀副総長である。


「選定は陸からですか?」


「いや、特からにしよう。その場合には?」


「中央特殊作戦軍からなら、誘導団でしょう。」


中央特殊作戦軍とは令和改革の際、防衛省・自衛隊から国防省・国防軍へと改組された際、それぞれの軍種にあった特殊部隊を集めて一元的に運用することを目的としたことから始まった軍種である。


そこに属し誘導団と呼ばれる部隊こそ、国防海軍の原子力推進を用いた潜水艦及び航空母艦や、国防空軍の戦略爆撃機の保有と並んで、日本国の国防において大きな一片を担う部隊だ。


それこそが、弾道誘導弾遠方反撃隊である。その名の通り、主要装備として中距離弾道誘導弾を有する戦略部隊だ。


「随伴部隊は?」


「そうですね、機密保持という観点から、特殊部隊のほうがいいでしょう。機動性や柔軟性に富んだ部隊、」


「水機をだそうじゃないか」


同じく中央特殊作戦軍に属する部隊であり、自衛隊時代に陸上自衛隊に属していた特殊部隊、水陸機動団が母体となった部隊だ。


名を、水陸機動混成戦闘軍である。


「でしたら二個中隊規模で事足りるでしょう。詳しくはまた、」

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