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第一話・外交事務所

書き終え、予約投稿を設定している現在、22時59分。なんとか間に合わせました。


新生暦1945年 3月12日、ユト大陸にて内戦中であったロブロセン王国は、反体制派であるロブロセン共和国に対し劣勢となると、ロブロセン王国を保護国としていたレンツ帝国は利権保護を目的に、人道支援との名目で軍部隊の派遣を決定した。


新生暦1945年 4月5日。アドレヌ大陸にて覇権を確立しつつある列強国、フリト帝政国。これと対立するエルトラード皇国には、エルテリーゼ大公国の軍部隊、陸軍の4個師団並びに、海軍の巡洋艦2隻及び駆逐艦4隻が駐留していた。そして、エルテリーゼ大公国はこの日、レンツ帝国の一連の行動に対抗すべく、ロブロセン共和国と国境を接する自国領植民地に、これら軍部隊の半分を配置換えした。


新生暦1945年 4月28日。エルテリーゼ大公国はロブロセン共和国からの要請に基づき、ロブロセン共和国に軍部隊を進駐。これによりロブロセン王国へ進駐したレンツ帝国の軍部隊と対立することとなり、ロブロセン内戦は膠着状態へと陥った。


新生暦1945年 1月17日。エルテリーゼ大公国は国内情勢の悪化を理由にユト大陸及びアドレヌ大陸のエルトラード皇国より、軍部隊の撤退を決定。しかし、帰還した軍部隊を含めたエルテリーゼ大公国の軍部隊と、レンツ帝国本国に駐留する軍部隊がアシュニスィ海峡にて対立し、これが抑止力となりロブロセン内戦の膠着が解かれることはなかった。


それから約半年後、

__________


【新生暦1946年 8月17日 朝−−−フリト帝政国帝都エアセル 在フリト帝政国日本国外交事務所】


日本国がフリト帝政国と外交関係を樹立してはや1ヶ月。この世界の国家間における外交でも、在外公館といったものやそれに関連するような制度が存在しているそうだ。


そのため日本国とフリト帝政国でも、それぞれに両国の在外公館を建造する計画が進んでいる。しかし、まだ関係を持って2ヶ月が経ったばかりだ。スケジュール上では現在、ちょうどフリト帝政国の日本視察団が帰国しようとしている頃だろうか。


そんな具合に、まだ外交関係はあっても正式な国交を有しているわけではない。地球にいた頃の朝鮮民主主義人民共和国と同じ関係だ。


それに、外交関係を樹立したなどと言っているものの、これは単に交流したという記録にすぎないため、なにか法的な強制力があったりするわけではない。


外交館が建造されるまでの間、日本国の外交担当員らは、フリト帝政国名義で賃借している、帝都の一軒家で生活し、そこで業務を行っていた。


国の代表が?と疑問に思うかもしれないが、前述の通りまだ正式な国交を有しているわけではないのだ。


それに、地球にいた頃の日本国内でもこう言ったことは珍しいことではない。実際に雑居ビルの一室を借りて、そこを領事館や外交館としている国も存在していた。


そもそもアメリカ合衆国のように、都心の巨大な土地の上に自国の大使館や領事館を建造できるような国のほうが少なく、多くの国は大使館や領事館を前述したような場所に設置していた。


話は戻り、在フリト帝政国日本国外交官として派遣されている外務省職員は4名いる。森本 直樹 外交官と、日尾野 愛海 外交官、鈴野 優弥 外交官、繪元 奏真 外交官だ。


「どうです?」


「正常だよ」


ダイニングテーブルの半分を埋めてしまうような、大きめの白い機械に指を入れて、正面に付いている液晶画面を眺める森本 外交官に、健康状態を尋ねたのは鈴野 外交官だ。


2人とも、というより4人全員、最初にフリト帝政国に派遣された外交使節団のメンバーだ。


彼がしていたのは血液検査である。他にもこの一軒家には日本国からさまざまな、専門的な医療機器が運びこまれている。


未知の土地にはどんな病気があるかはわからない。もしかしたら日本人もとい、地球人にだけ感染し、発症する致死性の病気があるという可能性も捨てきれない。


そのため、フリト帝政国に最初に派遣された外交使節団の構成員を二つに分け、森本 外交官率いる4名は帰還後、そのままフリト帝政国に派遣し外交業務を担当する。


もう一方のグループは日本国に帰還後、隔離され経過観測が行われている。どんな病原菌や物質を付着させているかわからないからだ。


これと同じ理由で、月に降り立ったアポロ11号は帰還後、その乗組員はしばらく隔離され、健康状態をモニタリングされていたそうだ。


「森本さん、朝ごはんです」


そう言って鈴野 外交官が渡したのは缶詰だった。


「そろそろ生物が食べたいな」


「我慢してください、死ぬかもしれないんですから…」


フリト帝政国に来てからはや1週間。健康状態にも異常は無いが、やはりこれも安全のため、現地の食事はまだ摂ることが許されておらず、本国から送られてくる缶詰や、国防軍の戦闘糧食しか食べることができない。


「通りの向かいの隅にあるパン屋、美味しそうだと思わないか?」


「やめてください…」


「フリト外務省のエントランスにある定食屋、前通るとすっごいいい匂いするんだよな」


「ほんとに、やめてください。食べたくなるでしょう」


鈴野 外交官が強めに言うと、森本 外交官もようやく口を閉じる。そして仕事の話を始める。


「なぁ、ラジオつけてくれ」


日課となっている、情報収集の時間だ。

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