第5話~花の神~
「ここに来るのも久しぶりね……」
「俺はもう来慣れたよ……」
「さあ、最後の神、花の神を起こしてちょうだい」
そう言って水の神は扉に手をかけた。
扉を開けると、人の神がさっ、と火の神の後ろに隠れた。
「え、えっと……よ、よく来てくれました……」
「まるっきりキャラが違うわね……」
「あの……その……最後は、花の神を起こして下さい……」
最後に眠っている花の神。ピンク色の前髪と右半分の後ろ髪に左半分は緑色の髪色を後ろで輪っかの様にくくっている。そして頭の両側には花がそれぞれ一輪ずつさしてある。
「これで……最後ね……」
乃々花は花の神の前に膝まずき手をかざした。
「『花の神よ、目覚めたまえ』」
乃々花がそう言うと花の神からピンクと緑色の光がわきだし、花吹雪が舞った。
「きゃっ」
乃々花が花吹雪に目を覆う間に光も花吹雪も花の神へと収束されていった。
「んん……」
花の神は身動ぎしたかと思うと、むくりと起き上がった。
「ん~!よく寝たわ~。おはよう~……ってあれ?あたい起きてる?何で?というか全員起きてるじゃな~い」
「ジンの制約の限界が来たんだよ」
火の神は言う。
「あ~仕方ないわね~。せっかくあたいも手伝ったんだけど……」
「手伝った?」
乃々花が聞いた。
「ん~?あなた誰~?」
「こいつらが俺らを起こすのに必要だったんだとよ」
「へ~人間さんね~」
花の神は乃々花に近付くと頭を撫でた。
「えっ!何よ!」
「愛しいものには相応に接するものよ~」
「愛しい?あなた達はみんな人間が憎いんじゃないの?」
「あー……花の神は別」
火の神は言った。
「あたいはみ~んなが愛しいの」
「そうなの……?」
乃々花は頭を撫で繰り回されている。
「それで、手伝ったって何なの?」
「ん~気になるの~?」
「気になるわ」
「じゃあ教えちゃう~♪あのね~あたいの専門は『回復』なの~。みんなみたいに戦えないけど、みんなの事回復する事が出来るの~。それで、みんなを眠らせる時に回復の術もかけたって訳~」
「へー。そんな神様もいるのね」
「そ~なのよ~」
花の神は乃々花の事をひとしきり撫で終わると、人の神の所へ行った。
「ジン、一人で無理させてごめんね。これからはあたい達も一緒に頑張るからね」
そう言って花の神は人の神の手を握った。
すると……バリン!という一際大きな音が鳴った。
「みんな……ごめんなさい……私が力不足なせいで……みんなを起こしちゃった……もっと私が頑張ればみんなは平穏に眠れていたのに……」
人の神の顔の布の下から涙が流れて落ちた。
「俺は元々眠るのにだって反対だったんだから別になんともねぇよ」
「私もよ。一人で抱え込まないでって何回言ったらわかるの」
「わしも充分寝たしの」
「ま、良いんじゃない?」
「みんな……」
蚊帳の外にいる猛達。でも猛達も神達を起こして良かったと思った。
だが、これで終わりではない。
「あー、あのさ」
猛が口を開いた。
「なあに~?」
「全員起こし終わったけど、俺達もっぺんここに来るのも良いかな?」
「何するつもりだ」
火の神が敵意を剥き出しにしてきた。すると、土の神が、
「きっと、僕達にとって悪い様にはしないよ」
そう火の神に告げた。
「お前、何か知ってるのか?」
「それは僕が勝手には言えない。人の子に任せる」
火の神は納得いっていない様だ。
「とにかく、また、来るな。えっと、そうだな、また7日後に来る」
猛達はそう言って社から出て行った。
社からの帰り道、猛と乃々花は口数少なく歩いていた。
「神様達には、言うべきかしら」
「……勾玉壊したら、すぐ消えちまうのかな」
「え?」
「あんなにみんな互いの事大事にしてるのに、俺が何にも言わずに勾玉壊して別れの言葉もかけれずにはい、さよなら、ってねーんじゃねぇかな」
「けど、言って邪魔されたらどうするの?」
「その時はその時だ。また作戦でも立てれば良いさ」
「全く、猛らしいわね」
乃々花は呆れながらも猛の意見は否定しなかった。