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第十五話 嫌な予感

今回は少し短めです

 セイは剣を構えサンドゴーレムへと切りかかる。その速度はリーゼやゲイルとの戦闘で見せた速度よりも数段速く、その太刀筋も数段鋭い。

 セイが通り過ぎると同時にサンドゴーレムは為すすべなく腕を切られる。練習用の剣で切ったためその切り口は凸凹しており汚い。

 

「やっぱりだめだな」


 今の斬撃はセイからすれば満足のいくような攻撃ではなかった。300年前と比べるとその斬撃は威力も鋭さも数段落ちていた。

 セイはサンドゴーレムの方を振り向く。

 

「こんな斬撃じゃだめか」


 切り落とされたはずの腕がいつの間にか元に戻っていた。サンドゴーレムが持つスキル<再生>の能力だ。そのスキルのせいで300年前、人側は苦しめられた。

 

「…ザ…ザザ……」


 ノイズのような音がサンドゴーレムから鳴る。

 その瞬間、砂の弾丸がセイに向けて放たれる。

 剣で切って防ぐが、刃を潰してある練習用の剣では防ぎきれるわけがなく段々と剣がきしみだす。

 

「まずいね、そろそろ魔法も試すか」


 砂の弾丸に練習用の剣が耐えきれなくなり折れる。それと同時にセイは魔法を発動させた。

 

「砂弾」


 サンドゴーレムと全く同じ魔法を使う。砂の弾丸がぶつかり合い消えて無くなる。

 

「これは大丈夫か」


 簡単な魔法は300年前と同様に発動することができた。これで残り試すことは決まった。

 

「アイスバインド、ソードサイクロン」


 サンドゴーレムの体が凍り付き竜巻の刃によって切り刻まれる。

 

「成功か」


 セイが最後に試したかったことは魔法の同時発動だ。

 セイが持っているスキル<全魔>は全ての魔法を使用可能にするというものだ。そのスキルが制限された今同時発動もできるかどうか分からなかったのだ。

 サンドゴーレムは倒れこのままリーゼたちの下へ戻ろうとするが

 

「まぁ倒れないよね」

 

 粉々になったはずのサンドゴーレムが元の形に戻っていた。<再生>はゴーレムを形作る砂さえ残っていれば時間がかかっても復活するという厄介なスキルなのだ。

 元に戻ったサンドゴーレムは先ほどまでのゆっくりな動きから想像できないほどすごい勢いでセイへと迫った。その勢いのまま殴る。

 能力値道理の動きだ。

 サンドゴーレムは完全にセイのことを敵と定めた。

 

「…ザザ…ザザザ」

「パーフェクトウォール」


 セイは結界魔法を発動させサンドゴーレムの打撃を防ぐ。この結界魔法パーフェクトウォールは最も防御力が高い結界魔法だ。

 

「ザザ…ザザザ」


 このままでは結界を破れないと判断したサンドゴーレムは<硬質化>を使い自分の腕を硬くし結界を乱打する。徐々に結界に亀裂がはいりパリンと砕け散った。

 

「硬質化しての攻撃は32発か」

 

 セイは後ろに飛び退き結界魔法の性能を確認した。

 本来ならこうも簡単に壊れるはずないのだがやはり制限されているせいか本来より性能が数段低かった。


「…ザザ」

「早く戻りたいから倒しちゃうね」

「⁉ザザザ」


 確かめたいことは試し終えた。セイは魔力を一気に高める。

 その瞬間サンドゴーレムは本能からか自然と後ずさりしてしまう。目の前の存在には絶対に勝てないと警報を鳴らす。

 

「これでも力はだいぶ制限されてるんだけどな」


 制限されている自分の力を恐れているサンドゴーレムに苦笑してしまう。

 

「サンフレア」


 炎の球体がサンドゴーレムを包み込む。その球体は圧倒的熱量を持っておりサンドゴーレムを溶かしていく。サンドゴーレムは一切の抵抗をすることができない。この魔法はセイが知っている炎魔法の中で最も強力な魔法だ。

 その名の通り太陽のごとき輝きを放つが全くセイは熱さを感じていない。なぜなら魔力を制御することによりサンドゴーレムのいる場所にのみ魔法が影響するようにしているのだ。

 サンドゴーレムを溶かし終えると炎は消え中から赤い球体が出てきた。

 

「ゴーレムの核か」


 セイは赤い球体を拾った。赤い球体はゴーレムの核だ。ゴーレムはこの核があることにより動いているのだ。

 ゴーレムの核は傷一つなくまるで新品のようだった。

 

「やっぱり新しく作られたゴーレムだったか」

 

 セイの予想が当たってしまった。

 300年前のサンドゴーレムならこんなに綺麗な核はしていない。もっと劣化しているものだ。

 ただのサンドゴーレムではなかった。称号に『魔王軍』と書いてあった。それに加えリーゼが『勇者』に選ばれたこと。『勇者』は魔王に対抗するために生み出された称号、魔王がいなくなった平和な時代には必要ないものだ。

 最悪が予想できてしまう。

 

「魔王の復活……」


 あの時倒したはずの魔王が復活した。だが今のセイには確かめるすべがない。昔の仲間に聞けば分かるかもしれないが、勝手に円環魔法を使った後ろめたさがあるため合わせる顔が無い。

 

「…一体だけか」


 サンドゴーレムは一体だけだった。もし本当に魔王が復活しているのであればサンドゴーレム一体だけをこの森の中へ送り込むわけがない。

 新しく現れた『勇者』の調査かもしれないがその場合はもっと隠密に優れた魔物を送り込んでくるはずだ。

 

(まだ力が戻ってないのか?いや、それならなおさらサンドゴーレムを送り込まず力を蓄えるはずだ)


 300年前対峙した魔王の思考を予測していく。

 考えても結論が導き出せない。

 その時、森の奥から白い炎が溢れた。

 

「⁉あの炎は、それにあっちの方向は」


 白い炎が現れた方向はリーゼたちのいる方向だった。

 リーゼたちのいる方向から魔物の気配を感じ取ることができた。考えるのに集中してしまい気づくのが遅れた。

 すぐにセイは空間魔法を使いリーゼたちの下へと戻るのだった。


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