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業物だったのか

 刀身を露わにした私の刀は、キラキラと光り輝いていた。


「綺麗……」

ヴィヴィアーナ殿下と、いつの間にか隣に来ていたミケーレ様が、うっとりと刀を見つめる。


「その刀そのものが、光魔法を刀身に封じ込めたようですね」

「え?」

「エルダ嬢が刀を通して、無属性の魔法を発した。本来であれば、無属性で吸い取られた光魔法は、そのまま消滅するはずだった。しかし、どうした事かその刀が、光を消さずに自分の中に収めたようです」


さもありなんと言った学園長。私はマジマジと刀を見つめてしまった。

「おまえ……もしかして業物だったのか?」

思わず語り掛けてしまう。刀がキラリと輝いた。

「……マジか」


「なんだか聖剣のようですね」

ミケーレ様がしみじみと言う。

「本当ね。じゃあエルダは英雄?カッコいい!」

ヴィヴィアーナ殿下がとっても喜んでいる。私はモブだったはずなのになあ。


「エルダが英雄ならば、やはり王族と婚姻が必須だな」

王太子殿下がニヤリと笑った。

「ふふふふ。王族?魔王の間違いでしょう?」

ゆっくりと壇上を上がって来たのは兄だった。

「魔王であれば滅さないといけないなあ」

再び炎の塊を作り出す。


「エッツィオ、落ち着け。その話は城に戻ってからゆっくりとしよう。な、見ろ。子供たちが驚いているぞ」

周りを見れば、驚いているというよりは、楽しそうに見ている。

「皆さん、楽しそうですよ。結果を知りたいんじゃないでしょうかねえ」

二人の事は無視する事にする。


「これからこの刀はどうすればいいんでしょうか?」

学園長に聞けば、ニッコリと笑いかけられた。

「エルダ嬢が使ってあげるのが一番良いでしょう」

「この聖剣っぽい物を?」


「はは、元々エルダ嬢の物だったのですから。普通に使ってあげてください。光魔法が使いたくなったら、刀に語り掛ければいいのですよ」

「はあ」

聖剣だぞ。何処かにいる、本物の英雄に渡さなければいけないんじゃないのか。


溜息が出てしまう。

「はああ、なあ。私が継続して使うという事でいいのか?」

刀がキラリと光った。そうか……そうなるか。


困ったもんだと思っていると、後ろが何やら騒がしくなる。

「どうやら起きたようですね」

学園長がカプアート嬢の方を見る。


「ちょっと!何なのこの腕のは!?私を一体誰だと思っているの?私はねえ、聖女になり得る女なのよ!」

騒ぎ出した彼女の前に学園長が立った。

「残念ながら、あなたにはもう光魔法は使えませんよ」


「は?」

学園長の言葉にポカンとしている。

「あなたは光を纏う権利を失ったのです。ああ、安心してください。光魔法は立派に引き継がれました」

「何を言ってるの?私は誰にも引き継いでなんていないわ」

学園長相手にその言葉遣い。やめろって。


「そうですね。あなたの意志には関係なく引き継がれましたからねぇ」

「誰に引き継いだか知らないけど、私のなんだから返しなさいよ」

魔法って返す返さない、なんて次元のものだったか?理解に苦しむ。


「多分無理だと思いますよ。あなたの心、真っ黒ですから」

あくまでも笑顔で、結構な事を言いきった学園長。

「なんなの?この失礼なおじさん」

失礼なのはおまえだよ!脳内で盛大に突っ込む。


「仕方ありません。エルダ嬢、もう歩けますか?」

「はい、大丈夫です」

学園長の隣へと歩く。

「彼女の傍に刀を近付けてみてくれませんか?」


言われた通りに刀を、カプアート嬢の傍に寄せる。なにやら喚いていた彼女の事は丸っと無視した。


バチバチッ!傍に近づけた途端、まるで彼女を拒絶するように電気が走る。

「いたっ!!なによっ!」

電気だけではなかった。彼女の傍に寄せた刀のキラキラがなくなり、どんどん黒ずんでいく。慌てて彼女から離した。すると、再びキラキラと光り出した。


「おわかり頂けましたか?あなたの心が黒いせいで、光魔法が闇魔法へ変化してしまうんですよ。残念でしたね」

ちっとも残念感を見せていない学園長。もしかしたらもの凄く怒っているのかもしれない。


「そういう事ですので、あなたは聖女どころか犯罪者となって、これから城の地下牢へお引越しです。良かったですね。城に住みたいって夢が叶いますよ」

それはそれはいい笑顔で学園長は去って行った。これから卒業パーティーの準備をするのだそうだ。


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