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魔力が暴走している

「これはいけませんね。彼女の魔力が暴走を始めたようです」

冷静に説明してくれる学園長。冷静過ぎじゃないか?

「ええっと……学園長先生。これは収まるのでしょうか?」

「無理ですねえ」

「ええ!?」

なんでニコニコしてるの、この人。


「なんでよ。なんでなのよ。なんで私を好きにならないのよ」

壇上では彼女の感情に比例するように、どんどん魔力が膨らんでいる。


「禍々しい魔力だな」

「本当に。光魔法ってこんな禍々しいものだったんですかねえ」

王太子殿下も兄も暢気過ぎる。


「もう始まってる……」

もっと暢気な声が聞こえた。後ろから。


「アルド殿?」

会場に入って来たのはアルド殿だった。

「え?始まってるのか?」

その後ろにはアルセニオもいた。数人の騎士たちを連れている。


「なんだ?どうした?何故おまえたちが?」

どうやらわかっていないのは私だけのようだ。

「あれ?エルダは知らなかったのか?」

「うん。知らせてない。サプラーイズ」

「いるか?そのサプライズ」

だからなんでそんなに暢気なんだ。


 彼女から溢れ出した魔力が、ボタボタと何かを産み落としている。妖精の羽を生やした悪魔のような物に見えた。透明な美しい羽がついているのに、身体が全部真っ黒なのだ。キーキーと甲高い鳴き声のようなものを発して、それらは固まっている者たちには目もくれず、私たち目掛けで襲い掛かってきた。


空間魔法でクナイを取り出し、襲ってくる小さな悪魔もどきを倒していく。

「エルダ!ここは俺たちに任せて、おまえは殿下の所に行け!」

「え?ヴィヴィ様がいるのに?」

アルセニオの言葉に躊躇する。ヴィヴィアーナ殿下の傍を離れるのは嫌だった。飛んでいるこいつらは得体が知れないのだ。守らなければ。


「エルダ、お兄様を助けてあげて」

そんな私の背中を押したのは、ヴィヴィアーナ殿下本人だった。

「私たちは大丈夫よ。ミケーレ様は勿論、アルセニオたちもいるもの」

皆を見れば、大きく頷いてくれる。

「……わかりました。行って参ります」


「エルダ嬢」

学園長だ。

「いいですか?あなたの魔力を彼女に全てぶつけるのです。無属性の魔力を彼女にぶつける。そうすれば、次第に彼女の魔力は無属性に溶け込んでいく。周りには結界を張ります。思いっきりやってしまっていいですよ」


「……はい!」

よくわからないが、学園長が言うのであれば信用しよう。



「ヴァレンティーノ殿下、兄様」

壇上へ飛び乗ると、私に気付いた二人が微笑んでくれた。

「学園長から話は聞いたな?」

「はい」

「私は結界を張る方に回る。殿下を頼んだぞ」

兄様が壇上から降りていった。学園長、アルド殿、兄の三人で会場の子供たちを結界で囲っていく。結界より外に生まれてくる悪魔をアルセニオたちが切って行く。


自分の思惑通りにならない現状に、更に怒りを募らせていくカプアート嬢は、その憎しみを全て私にぶつけるように睨みつけた。


「あんた……なんで死なないのよ!2度も男たちに襲わせたのに!!」

「ああ、あの程度の連中がどんだけ束になろうとも、残念ながら私の敵ではないのでね」

「なんですって!?あんた一体何者なのよ?私、知らないわよ。あんたみたいなキャラ」

だろうなあ。モブだもん。


「何者と言われてもな……」

どう答えていいのかわからない。

「エルダは私の妃になる女性だ」

「は?」

「は?」

彼女は勿論、私も驚いてしまった。


「私はそんな事、許可しておりませんが?」

妃になるなどと、了承した覚えは全くない。

「何を言っている。私の愛を受け入れてくれただろう」


途端にあの夜を思い出す。私の顔が爆発した。

「殿下……爆ぜてください」

結界を張りながら、片方の手で大きな炎の塊を作っている兄。全く異なる魔法を展開させている。凄い。


「兄様、落ち着いて!殿下、おかしな言い方をしないでください。キスしただけでしょう」

「殿下……やはり爆ぜてもらいましょう」

「兄様、そんな場合ではないでしょう」


「そうよ……そんな場合ではないわよねぇ」


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