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卒業式

 学園の卒業式当日。

光魔法の影響を受けていない令嬢の中に卒業を迎える方がいるため、私は警備として参加する事になった。

「エルダが行くなら私も行きたい」


ヴィヴィアーナ殿下のこの言葉で、芋づる式に休んでいた面々が全員参加する事になってしまった時は、流石にどうしたものかと悩んだが、ヴァレンティーノ殿下と兄様も参加すると聞いて、ホッとしてしまった事は内緒だ。


数日前に学園長が戻って来て、学園の中は以前のような空気に戻っているような気がした。ただ一人を除いては、だが。


 光魔法の持ち主であるはずのカプアート嬢は、まるで光魔法ではなく、闇魔法を持っているかのような黒いオーラを発していた。周りにいる生徒たちは気付いていないようだが、私にはよく見えた。


式は予定通り進んでおり、次は国の代表としてヴァレンティーノ殿下が壇上で祝辞を述べる。殿下が呼ばれて壇上へ上がると、黄色い歓声が飛んだ。殿下は声援に応えるように爽やかな笑顔を向け、手を上げた。更に歓声が上がる。


すると、今まで微動だにせず、真っ直ぐ前だけを向いていたカプアート嬢が立ち上がった。堂々と歩く彼女を止める者はいなかった。


真っ直ぐ殿下の元へ向かうカプアート嬢。壇上を上がろうとしたところで兄に止められる。

「これ以上、王太子殿下の傍に寄る事は出来ない」

「エッツィオ様はどいてください。私はヴァレンティーノ様に話があるのです」


すると、王太子殿下が兄の後ろまで歩いてきた。

「話を聞こう。一体私に何の話があるというんだ?」


私はヴィヴィアーナ殿下の背後に付く。この会場の違和感が半端ない。先ほどまでは普通だったはずなのに、カプアート嬢が動き出した途端、生徒たちが人形のようにジッと動かなくなってしまった。


「彼女の力は光のそれではないですね」

「学園長。それはどういう意味ですか?」

「人間をまるで操っているようなこの魔法は、光ではなく闇ですよ。魔族が使っていたという闇魔法。人の心に入り込み、自在に操る。傍から見れば、本人の意志で動いているように見えるのに、実際は闇の力で操られているのです。なかなか困った事ですよ、これは」


ミケーレ様たち、魔法にかかっていない方たちを会場の端に誘導する。その間に壇上では、カプアート嬢が殿下に言い寄っていた。


「ヴァレンティーノ様、あなたの妃になるのは私ですよ。何と言ったって、光魔法の持ち主なのですから。光魔法を持っている私は聖女になれるんです。聖女は決まって王族に娶られると、相場が決まっている」


「すまない。君の言っている話が全く理解できないのだが。光魔法は確かに希少だ。しかも、君はなかなか力も強いようだし、国で保護するのは当然だと思う。だが、王族と結婚するのが常のように言っているのは間違いだ。そんな強制力は王族にはない」


「そうなんですか?まあ、それでもいいです。私はヴァレンティーノ様が好きなのだから、問題はないですし。私をお嫁さんにしてくれますよね?」


「しない」

きっぱり拒絶を表した殿下に、驚いた顔をしたカプアート嬢。

「どうしてですか?」

「どうして?当たり前だ、君を愛していない。私にはもう心に決めた相手がいる」


「ヴァレンティーノ様ったら、おかしなことを言いますね。ヒロインは私ですよ。ヴァレンティーノ様が好きになるのは私なんですよ。私がいるからこの世界はあるんです。皆、私を好きになるのが当然なんです」

さも当然のように、おかしなことを言っている彼女を、紫の瞳が暗く睨んだ。


「残念だが、君を好きになる事はない。なんの夢を語っているのか知らんが、君を好きだと思っている人間は、少なくとも私の周りにはいないな」

「そうですね。君はちょっと頭がおかしいのでは?皆が自分を好きになるなんてよく思いますね」

兄まで、まるで煽るようにカプアート嬢に言い出した。


「私たちが好きなのは、君ではない」


殿下のこのセリフが決定打になった。カプアート嬢の魔力がブワッと膨らんだ。


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