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王太子殿下は異性?

「つまり、副学園長は光魔法にはかかっていない、そういう事か?」

「かかってはいませんが、協力関係にあったようですね」

「学園長が不在の間に、色々やらかしていたようだ。詐欺、横領。下位の貴族令嬢を呼びつけて身体の関係を迫ったりもしていたようだ」

兄が調書を見ながら、顔をしかめる。


「エルダ、何もされていないんだよな?」

「ええ、服の上から上半身を撫でられたくらいです」

「はっ!?」

「ボタンを外そうとして、こう……」

ゼスチャーでされたことを報告すると、殿下が立ち上がって扉へ向かった。


「ヴァレンティーノ殿下」

兄が静かに、しかし圧をかけて殿下を呼ぶと、ふううっと息を吐いた殿下は机へと戻った。

「後でぶん殴る」

「殿下はダメです。代わりに私が参ります」

小声で何かを話している二人の顔が、超怖い。


「エルダ」

「はい」

「何故、触られる前に拘束しなかった?」

「決定的な証拠が欲しかったので。服の上からちょっと触られただけですし」

「少し触られるくらいは平気だと?」

「ええ、まあ、そうですかね」


またもや突然立ち上がった殿下。私の目の前に来ると、徐に私の腰を両手で掴んだ。

私の肩がピクリとなった事に気付いたのに、殿下は無視してゆっくりと脇を通って肩まで手を滑らせる。胸の膨らみを親指が掠った瞬間、腰のあたりに電気が走り、膝から一瞬力が抜けた。

「!」


「これでも平気だと?」

「副学園長の時は平気だったんだ」

動揺しながら答えた私のセリフに、殿下の顔が魔王の笑みになった。

「ほお、では何故、今は平気でいられなかったのだ?」


目の前で魔王の笑みを見てしまう。急に心臓の鼓動が早まった。

「そんなの、知らない」

顔が熱い。どうにもここから逃げ出したくて堪らなくなった私は、そのまま踵を返して扉へ向かった。


「失礼する!」

そのまま振り返らずに執務室を出ると、後ろからクククと殿下が笑っている声が聞こえた。


騎士棟へ向かうと途中で、ガエターノ団長と合流した。

「団長」

私は団長を呼び止め、目の前に立つ。

「どうした?何か話でもあるのか?」


「団長、ちょっと私の腰を掴んでくれないか?」

「は?こうか?」

団長が私の腰を片手で掴んだ。

「違う。両手でこう」

もう片方の手を引いて、両手で私の腰を掴ませる。


「おまえの腰は細いなあ」

変な感心をする団長の言葉をサラッと無視して、そのまま脇から肩まで撫でながら手を移動するように言う。親指で胸を掠めた団長はおっという顔になった。

「案外胸はありそうだな」


「それ以上言うと斬る」

「えええ!?人にやれと命じておいて」

ブツブツ文句を言う団長を、再びサラッと無視する。

「平気だ……」

やはり、これくらい触られた所で、何とも感じなかった。


「どうして団長に触られてもなんとも思わないんだ?」

私が独り言のように呟くと、団長が笑った。

「は?そんな事もわからんのか?それは俺の事を異性として意識していないからだ。異性として意識している相手に、同じことをされたら感じちまうだろう。逆に嫌悪を抱いている奴にされたら気持ち悪いって思うんじゃないか?」


目から鱗が落ちてしまった。

「団長って人の機微がわかる人だったんだな」

「おい、今まではなんだと思っていたんだ?」

「戦闘狂のゴリラ」

「泣くぞ」


自分で同じ場所を撫でてみる。勿論、何も感じない。自分の両掌をじっと見つめる。

つまり、私はヴァレンティーノ殿下を意識しているという事か?


そう考えた途端、どういう訳か顔が熱くなった。慌てて自分に言い訳をする。

「いやいや、殿下が異性だという事は勿論わかっていたさ。あれ?でも団長だって異性だという事はわかっていたぞ。同じ人種かは置いておいてもだ。なのに、何が違うと言うんだ?」


ふと、殿下の魔王の笑みが頭に浮かんだ。再び顔が熱くなる。

「チッ、一体なんだというんだ」

自分の中のわからない感情に、無性にイラついた。


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