表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/40

罠、ですが

「私宛?学園から?」

兄から手紙を受け取る。確かに私宛になっている。不思議に思いながらも封を切った。

「……」


黙って殿下に渡す。

「一体何が書いてあった?」

殿下がざっと目を通した。


「ヴィヴィの進級の事で相談があるそうだ。直接学園に来て欲しいと……一人で」

「……なんですか?その見え見えの手紙は」

ベニート様が殿下から手紙を受け取り読む。続いて兄も。


「……罠だな」

「ええ、そうですね」

「こんな子供騙しでか?」

「何がしたいのでしょう?」

皆、呆れ過ぎて語彙力が低下した。


「差出人は副学園長ですね」

「つまり、副学園長も光魔法にかかっているという事か」

「情けない……それにしても、何故そこまでしてエルダを排除しようとする?」


多分、私が攻略対象の面々と仲が良いからだろう。モブだし、この世界からいなくなっても差し支えないと思っている気がする。

「まあ、とりあえず行ってみます」

溜息と共に私が言えば、兄が困ったように笑う。


「それが一番手っ取り早いか」

「殿下、どこまでの攻撃なら許されますか?」

「そうだな。生徒はなるべく傷つけたくないが、先生は多少ならいいだろう。副学園長は死ななければいい」

「太っ腹ですね」

思わず笑ってしまう。


「王立の学園で、副学園長を務めている人間が、いくら光魔法とはいえ簡単に操られ過ぎだ。少しキツメの灸をすえてやった方がいい」

「ふふ、わかりました。では明日にでも行って参ります」

「ああ」




 翌日、早速学園へと赴いた。

「申し訳ありませんねぇ。わざわざ来て頂いて」

私を迎え入れたのは、40代くらいの、細身の神経質そうな男だった。

「副学園長先生、ですよね」


「はい、そうです。昨年度から副学園長としてこちらに参りました」

「そうですか?それで?ヴィヴィアーナ王女殿下の進学について話があるそうですが、どういった事でしょう?」


「いや、なに。そんなに大変な事ではないのです。ま、先にお茶でも、どうぞ」

紅茶を出された。アールグレイの香しい香りが充満する。

「では、失礼して。いただきます」

一口コクンとさせる。


「話を戻しましょうか?何が、問題、なの、で……しょ」

頭が朦朧として言葉が紡げなくなる。そのまま、長ソファに横になってしまった。


「くふふ。薬が効いたようですね……それにしても……いい女ですねぇ。少し味見をしてから殺す事にしましょう」

そう言うと、おもむろに私に覆いかぶさる。脇から胸を通って首元まで、ゆっくりと撫でられた。


プチンと、詰まっている襟元のホックを外される。副学園長はハアハアと息を荒くしながら一つ一つ、丁寧にボタンを外していった。


「中のこの布が邪魔ですね。引き裂いてしまいましょう」

よだれを垂らしているんじゃないかというような荒い息遣いで、私のインナーに手を伸ばした瞬間、私はガッと彼の手首を掴んだ。


驚いた副学園長は、腕をブンブン振りながら手を外そうとするが、私の力にかなう訳がなく。そのまま副学園長の手首を軽く捻ってやった。

「ヒイッ」

そのまま拘束して天井に顔を向ける。


「どうだ?バッチリか?」

声を掛ければ音もなく、影が部屋に降りてきた。

「はい。映写いたしました。音声もバッチリでございます」

小さな魔道具を持ってニコリとした影は、そのまま再び上へと上がる。

「私はこちらを持って城に戻ります」

「ああ、頼む」


「おのれ、一人で来たのではなかったのか!?」

副学園長が私の拘束から逃れようと、暴れながら叫んだ。

「一人で来たが?」

「今、もう一人いたじゃないか!」

「ああ、あれはずっと学園に潜んでいたぞ」

「なに!?」

副学園長の顔が真っ青になった。


「ふふ。さあ、まずは地下牢へと案内してやろう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ