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不動の変態

 ベニート様の笑みが見えたのか、周辺の席にいたご婦人からため息が漏れたのが聞こえた。本当にこの方は、変態な事を言っている時が一番艶めくのだ。


「そのチャンスは未来永劫ありませんから」

きっぱり断る。なのに嬉しそうなのはなんでなんだ?

「ああ、檻の中で一糸纏わぬ姿で閉じ込められている君を、この目で実際に見たいのだけれどなあ」


めっちゃ怖い。

「あ、とっても豪華なネックレスだけ着ける、というのもいいね」

楽しそうですね。私は鳥肌が立ちましたがね。


「殿下に心が傾いているとしても、まだ完全ではないようだし、まだ諦めるのは時期尚早かな。それに、仮に王太子妃になっても、檻の中はいつでも空けておくからね」

すっかり檻の虜のようですね。


そういえばゲームのエンドの一つにあったような気がする。そんな終わり方が。どうも最近、前世の事が思い出し辛い。こちらの人生が長くなってきているからだろうか?まあ、思い出さなくても特に困る事はないからいいのだが。


「ベニート様、檻はどこまで本気なのですか?」

「ん?半分くらいかな?君を好きな気持ちは本当だよ。でもね、私が幸せにする事が一番ベストではあるけれど、君が幸せになるのなら、私じゃなくてもいいとは思っているよ」


「……懐が大きいのですね」

「ふふ、初めからね。エルダの心は手に入らないだろうって思っていたからかも」

「え?」

「全く私を異性として見ていないってわかっていたからね。これは多分、アルセニオもそうなんじゃないかな?それでもいいんだ。エルダを好きだと思っている自分が好きだから」


「ありがとう、ございます」

ちょっとだけ泣きたくなった。私の周りは優しい人で溢れているようだ。


「ふっ、あんまり私に可愛らしい顔を見せてはダメだよ。このまま連れ帰って、檻に入れたくなってしまうから」

そこは不動なのだな。私の涙は引っ込んだ。



 屋敷の前までベニート様に送っていただいた。

「今日はありがとうございました。美味しかったし、楽しかったです」

「そう?なら良かった……それで、これは大丈夫なのかい?」

心配そうに私の頭を撫でる。


「ふふ、大丈夫ですよ。これくらいの連中であればすぐに片付きますから」

私が余裕の笑みで返せば、頭を撫でていた手で、頬をそっと撫でたベニート様。

「流石、美しき戦いの女神。明日の報告を待っているよ」

「はい」


ベニート様の馬車を見送る。彼に付いて行く人間はいないようだ。

『良かった。ベニート様は大丈夫だな』


「さて、いい加減、出てきたらどうだ?」

暗がりの中から次々と剣を持った男たちが出てきた。今度は盗賊集団のような風体だ。今回は13、4人ってところか。


「これはこれは。貴族の女だから多少の期待はしていたが……多少どころか、飛び切りの上玉じゃないか?」

「本当に好きにしちゃっていいんですかい?」

「その身体にぴっちりしたドレスを、早く引き裂いちまいたいねえ」

ガハハガハハと。ホント、こういう事を言う奴らってのは、どうしてこう笑い方まで下品なのだろう。


「気は済んだか?」

「あ?」

私の質問にキョトンとしている。意味がわかっていないようだ。


「もう私の観察は終わったのかと、そう聞いたんだ」

「ああ、観察は終わりだ。次は実験だな。その身体がどれ程のものか、確認しなけりゃならねえ」

ニヤニヤと下品極まりない。


「はは、確認か?出来ると思うか?」

私の質問にヘラヘラ笑い、仲間たちに聞いている。

「出来ないと思うか?」

「出来ないと思う方がどうかしてるぜ」

「早く脱がせようぜ。俺の息子が暴れ出す」


ああ、終わりだ。これ以上、こいつらに喋らせてもイラつくだけだ。空間魔法で出した刀を逆手に持つ。

「息子が暴れているか確認してやろうじゃないか」


瞬時に男の目の前まで移動し、刀を振った。見事に男の衣服が剥がれ落ちる。

「暴れるどころか委縮しているようだが?」

一瞬、何が起きたのかわからなかった男が、自分のあられもない姿を見て叫んだ。

「な、な、なんだこりゃあ!!」


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