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大変なのは私

 あっという間に私の元へと到着する殿下。

「エルダ、会いたかった」

まるで、久々再会を果たした恋人を見るような目で私を見る。

『数時間前に会っただろうが』

そう思ったがここは黙るのが正解だろう。


腰に腕を回されて抱かれる。

「殿下。カプアート嬢が睨んでいるが」

抗議の目を向けるが、その目元にキスされてしまう。

「見せつけているんだ。そりゃ睨むだろう」

「恨まれるのは私なのだが」


「このままキスしてもいいか?」

「殿下の大事なところを蹴り上げてもいいならどうぞ」

「はは、手強いな」

その間もずっと、凄い顔で睨んでこちらを見ていたカプアート嬢だったが、踵を返して走り去って行った。


「殿下、行きましたよ」

「そうか?」

放してくれない。それどころか手が腰周辺をまさぐっている。

「蹴られたいようですね」

ニッコリと言ってやれば、両手を上げた。でも顔は悪い顔になっている。


「棚ぼただったな」

ニヤリとする殿下。


「何が棚ぼただったのです?」

そんな殿下の首元に剣が向けられた。

「本当におまえは、間が悪いというのか良いというのか」


殿下に向けていた剣を収めた兄。

「殺されたくなかったら、慎みを持つ事ですよ、殿下」

「口説いている時に、慎みなんてものは霧散するだろう」

「ふふふ、霧散しないように固めて、殿下の口の中に突っ込みましょうか?」

慎みを固めるとは?二人の会話について行けない。


「それにしても……カプアート嬢だったか。あの令嬢はちょっと危ないな」

「その危ない令嬢の前で、イチャイチャさせられた私の身が危ないと思うのですが」

「その時は俺が守るから、心配するな」

「殿下に守られなくとも、自分で対処できると思いますがね」


 そして、自分で対処しなくてはいけない時がすぐに来た。




「これはもしや、か?」

数日後、王城へ到着する手前、またもや武装集団に襲われた。10人を超える人数に囲まれる。


「一体なんなのだ?何が目的だ?」

一人の男がご丁寧に答えてくれた。

「あなたを亡き者にせよとの注文です」

注文って……私はメニューにでも載っているのか?


「まあ、いい。さっさと片付けようじゃないか」

刀を構える。今回はガタイのいいのが多い。鍔迫り合いになると不利だ。とっとと片付けようと考えていると、数人で一斉にかかって来た。だが驚くほど遅い。力を重視して集められた面子なのだろう。


でかい剣を只々上から振り下ろす連中相手に、強化魔法をかけるまでもなく、スピードを生かして彼らの足と手を切っていった。


時間にして5分といったところだろうか。再び拘束魔法で前回同様にぐるぐる巻きにする。流石に今日は、高揚感は抑えられた。先日やり合ったばかりだったおかげだ。門兵に事情を説明して、牢屋に入れてもらうようにした。




 王城からほど近くにあるレストラン。

今日は黒いシンプルなドレスを着ている。装飾も何もつけず、あるのは腿につけているクナイだけ。


「やっとエルダとの食事の約束を果たす事が出来たよ」

妖艶な笑みで私を見つめているのはベニート様だ。

「ありがとうございます」

忘れずにいた事に感心してしまう。


このレストランは貴族御用達で、周りにいる客は全て貴族。とても畏まった所だった。それ故に、私はドレスを着る羽目になったのだ。食事自体は間違いなく美味しい。


「エルダ」

「はい?」

「君の心は殿下にあるの?」

唐突。ワイン飲む前で良かった。きっと吹いていただろう。


「正直に言えば、よくわかりません……殿下の心を知る事にはなりましたが、直接、想いを伝えて頂いたわけではないので。それに、恋焦がれるという気持ちが、まだ私にはわからない」

これが今の正直な気持ちだ。本当によくわからないのだ。


「じゃあ、まだ私の檻に入れるチャンスはあるって事かな?」


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