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学園内の異常

「エルダ」

ニコニコと私の方へと駆けて来るヴィヴィアーナ殿下。少し後ろにはまるで殿下を守るようにミケーレ様が付いてくる。


「お帰りなさいませ、ヴィヴィアーナ殿下。ミケーレ様もお疲れ様でございました」

私が声を掛けると二人とも嬉しそうに笑ってくれる。だが、心なしか表情が固い。


「お二人とも。何か心配事ですか?」

二人は顔を見合わせるが、話そうとはしない。

「ミケーレ様はこれから何かご予定がおありですか?」

「特にないです」

「ならば、私の屋敷でお茶などいかがでしょうか?」



ウルヴァリーニ家に到着する。御者に城への伝言をお願いして、二人を応接間へと案内した。

「どうぞ。こちらでお寛ぎください」

侍女達がお茶の用意をしていると、扉がノックされた。


「エルダ?ヴィヴィアーナ殿下がいらしているんだって?」

兄が入ってくる。ミケーレ様のサファイアブルーの瞳がキラキラした。一方のヴィヴィアーナ殿下は勿論普通だ。


「エッツィオは、今日はお休みだったの?」

「ええ、ちょうど退屈していたところだったんです。仲間に入れて頂いても?」

「はい!勿論です」

答えたのはミケーレ様だった。


「ふふ、兄様。ミケーレ様は父様と兄様に憧れているそうですよ。お二人のように強くなりたいと」

そう伝えてやれば、顔を赤くしてコクコクと首を縦に振るミケーレ様。

「ああ、そう言えば聞いたな。それで?ミケーレ様は体幹を鍛えたのか?」

「はい!姿勢も良くなったと父上に言ってもらいました」


「なるほど。じゃあ次は剣の持ち方だな。城に来れば教えてやるぞ」

ミケーレ様の目が思いっきり見開かれた。

「本当ですか!?」

「本当だ。おまえの兄にでも伝言してくれれば時間を作ってやる。その代わり厳しく行くからな。泣くなよ」

「はい!よろしくお願いします!」

ここに新たな師弟関係が生まれた。兄様もなんだか嬉しそうだ。


「では、本題に入りましょうか」

途端にヴィヴィアーナ殿下の顔が曇った。

「あのね、上手く言えないのだけれど、学園がおかしいの。私とミケーレ様。あとエルシーと数人の上の学年の令嬢方以外の皆がおかしいのよ」


「おかしい、とは?」

「普段はおかしくない、普通なんだ。でも……カプアート嬢が近くにいるとおかしくなるんだよ」

「人によって違いはあるのだけれどね。皆、彼女の言う事をなんでも聞いてしまうの」

兄と顔を見合わせてしまう。

「具体的には?」

兄の質問に二人が考える。


「小さいものだと食堂で、彼女の分も頼んだり、彼女の世話をしたりという感じです」

「先生も何人か変なの。彼女だけテストを免除したり。でも後でどうしてそうしたのか、先生本人がわかっていなくて、彼女に話を聞こうとするの。でも結局、免除という結論に陥ってしまうのよ」


「同じクラスの友人は、僕が止めるのも聞かずに彼女に宝石をプレゼントしていた。でも数日後、自分の小遣いが全てなくなっていることに気付いたんだ。僕が説明すると全く覚えてないって」


「それにね。今朝の事なのだけれど、エルシーが数人の令嬢に呼び出されたのですって。アルセニオ様と早く別れなさいよって言われたって。おかしな話でしょ。だって皆、アルセニオ様どころか、エルシーには決められた婚約者はいないって知っているのによ。令嬢方の一番後ろにはカプアート嬢がいて、あなたがアルセニオ様の婚約者なのは知っているのよって」


「そこに偶然、僕が通りかかってエルシー嬢を助けたんだ」

「ふっ、やるじゃないか」

兄がミケーレ様の頭を撫でた。


「私はエルシーからその話を聞いた後、ご令嬢方にどうしてそんな事をしたのか聞いたの。でもやっぱり覚えていなかったわ」


一体何が起こっているんだ?光魔法にそんな人を操るような魔法があったのか?聞いたことがないんだが。

「学園長はどうです?」

「学園長先生は、お隣の国に行っていて不在なの。副園長先生が取り仕切っているのだけれど、副園長先生もおかしくなっているわ」


『ん?そういえば、ゲームでもそんな設定があったような……何かがあって、その時に学園長がタイミングよく戻ってきた?』

肝心な何か、が思い出せない。なんとなく兄を見ると、何かを考えているようで、一点を見つめて黙っている。


そして大きく溜息を吐いた。

「思った以上にマズイ事になっているようだな」


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― 新着の感想 ―
[一言] ゲームの強制力かな。
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