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第七話 山直しと危ない人認定と

 カイとリコリスの元へ戻るのがすこし遅くなってしまった。

 まあ、あの場所から歩いて来ていたらそうもなるだろう。少し遠かったし。

 戻って来てみると、カイとリコリスは先程山の形が元に戻るのを遠くからみていたわけで、カイはやっぱりこいつヤバいやつだって顔をしているし、リコリスは帰ってくるなり尊敬の視線を送ってくる。


「……お前ホントにどこからそんな力がでてくるんだよ!もはや俺より強いじゃん!」


 最初に口を開いたのはカイで、めちゃくちゃ笑顔で肩を叩いてくる。


「そうなのか?」


 俺は散歩にいくような軽い気持ちで山を直したわけなのだが、やはりおかしいのだろうか?


「アトスさん、あなたはこれまで見てきた男性の中で一番凄いです!お兄さんも鼻高々でしょうね!」


 俺達を兄弟だと思っているリコリスには申し訳ないが、褒められて悪い気分の人間はいないだろうし、素直に喜んでおくことにする。


「全くだよ、もう教えることはない!」


 カイは胸を張って言うのだが、元はと言えば俺がカイの記憶をマネしただけでカイの記憶がなければ、そもそも魔法を使えてないはず。

 でも、実際使ってみるとカイの記憶よりもはるかにおかしい能力があるのは明らかだ。

 恐らく、あの天使は俺の能力を覚醒させただけだなのだろうけど、ここまで規格外な能力なんて俺に存在していただろうか?


 生前俺のやっていたことなんてせいぜい趣味の小説書いていただけだし、そんな特別な能力があったはずはない。

 今度天使に会うことがあれば、そのことを聞いてみようかな。


「褒めすぎだよ、二人とも。俺はやれることをやっただけだし」


「謙遜するなって、お前、恐らくこの世界で本当に最強の存在だと思うし」


「山を直すなんて、王国の魔道士はだれもできませんよ!」


 さすがに言い過ぎではないだろうか?

 確かに俺は現時点であらゆる点で恐らくかなり強いという自信とか根拠とかはある。

 でも世界で最強の存在は言い過ぎだし、王国の魔道士がどんな強さなのか知らないが、ランクの高い魔道士ならできるのではないだろうか?


「そうかな?俺より強い存在なんて他にいるだろうし、それに今だってどこまでの実力があるかわからないし」


「俺が旅した中では、まあ俺とかもいるが、過去に存在した伝説の魔道士くらいじゃないか?アトスと比べると」


「それって、ジオグラードっていう人ですか?」


 俺は初耳だが、ジオグラードという人物がいたらしい。


「ああ、そんな名前だったな。今の世界にいる魔道士が何十人で挑んでも勝てないと思う」


「おいおい、そいつは一体何者だったんだ?」


「これまでの魔法の常識をひっくり返して、新たな魔法の歴史を作った人物だ。今のアトスに近い存在で、あらゆる魔法を難なく使い今も世界に残る神級魔法を作った人物だ」


 おう、俺より強い存在いたのか?!

 なんて思ってしまって、俺は思っている以上に自分が最強だと思ってしまっているらしいと自覚した。

 うむ、謙虚にだな。自惚れはいけない。


「ええ、あらゆる魔道書を残し、今なお語り継がれる伝説の魔道士です。最も私は昔の人ではなくて、今の世界で生きているアトスさんをみていたいのですけど」


「リコさん、それって普通の男が聞いたら勘違いするからやめた方がいいよ!」


 俺は焦ってそんなことを言ってしまう。


「え?そうなんですか?私、アトスさんだけにしか言いませんよ?」


 くそ、ずるい。

 人差し指を頬に当て、首を少し傾けるなんて可愛すぎて何も言えないではないか!


「いいなー、アトスモテモテじゃん」


 カイはリコリスには聞こえないように言うのだが俺にはしっかり聞こえる。


「勘弁してくれ」


 話を戻す。


「伝説の魔道士か、会ってみたいな」


「残念ながらこの世界にはもういない。ある時突然姿を消して行方不明になったからな」


「ええ、魔道書を書いている途中で突然居なくなってしまったとか。行方については諸説ありますけど、他に完成した魔道書はいくつもあったのでそれを元に他の魔道士は魔法を再現しようとしたとか」


 それは残念。

 それにしてもジオグラードって人物はどこへと消えてしまったのだろうか?


「まあ、結局どの魔道士もジオグラードの魔法を再現することはできなくて、何の成果もなかったらしいがな」


「その魔道書の魔法を再現できた人物はいないのか?」


「ああ、俺も古い魔道書をいくつか調べたが、再現できたのは一部の魔道書のほんの少しだけでな」


 ふむ、カイの記憶の中には確かに魔道書を元にしたいくつもの試験運用の記憶もあるが、いずれも少しの成果しか得られなかったようだ。

 あの山を戻した時魔法もそれの応用にすぎなかったのだが。


「アトスさんの使う魔法ってジオグラードみたいです。過去の本とかアトスさんがやっているような魔法を使った本が多いんです」


「そうなのか。俺は普通に使ってたけど、難しい魔法なんだな」


「はい、しかも山を直すなんてたぶんほとんど目にできない神級魔法なのではないでしょうか?」


 神級の魔法はもっと難しい魔法だと思っていたが、やはり神話で収まるレベルではないのかもしれない。

 山を元に戻す。

 言い換えれば時を戻すということだが、冷静に考えてみれば確かにそんなことができるとすれば俺だって神だと思う。


 そんな会話をしていたわけなのだが、周りにいる村に行こうとしているらしい旅人と商人みたいな2人がなにやら話ながら歩いているのを見かけた。


「さっきのアレ、なんだと思う?」


 旅人っぽい姿の男が隣で歩いている商人みたいな人物に話しかける。


「バカ、気にするんじゃねーよ、気にしたら怖いじゃないか!」


 答えた商人は若干顔をひきつらせて無理やり笑う。


「だってあれどうみてもおかしい現象だっただろう!」


 答えられた旅人は半狂乱になりながらそういう。


 ん?なんだろう?なにかおかしな事でもあったのだろうか?

 もしなにかあったらその現象を確認してもいいかもしれない。

 俺は軽い気持ちでその話を聞き続ける。

 盗み聞きしているようで申し訳なかったが、気になるので聞いてみる。


「だってよ、山が崩れていたと思ったらなんでか元通りになるし、もう訳わかんねーよ!なんなんだよあれ!」


「お、おおお、落ち着け。そう興奮するなきっと夢だ、夢に違いない。あんな物理現象、神級魔法でも使わないとできん。そんな訳がないだろう」


 二人の会話を聞いていて俺は汗をかいてしまった。

 たぶん俺の顔はあの商人と同じ顔をしているに違いない。


「夢な訳ないだろ!何が悲しくて男二人で一緒の夢をみなきゃならないんだよ!ああ恐ろしいな、王国って危ないやつでもいるのか?」


「いや、王国にはそんな人物がいるなど聞いたことがないが」


 そんな会話をしながら村へと向かっていった。


「俺って危ない人?」


 カイとリコリスの方向を向きひきつり笑いで聞いてみる。


「何も知らない人からしたら危ないやつだろうな、俺は素直に褒めるがな!ハッハッハ」


 カイは豪快に笑いながら俺と目を合わせない。


「もううわさになってるなんて凄いです、さすがです」


 リコリスはジーッとこっちを熱い視線で見つめてくる。


 うむ、今度神級魔法と思われる魔法を使う時は気を付けるとしよう!


「さて、俺の危なさが分かったところでそろそろ村に行くか」


 俺は冗談のつもりで言った。


「危ない男の子、カッコいいです……」


 リコリスは小声で言うのだが、俺は耳が良い。

 しっかりとその言葉を聞いてしまったが、これはあれか?

 不良に憧れる優等生みたいなものと思ってもいいのだろうか?


「やれやれ、アトスってホント、鈍感な」


 聞こえているのを知っているカイは肩をすくめて、そんなことを言ってくる。


 失礼な。

 鈍感ではない、鈍感なフリをしているだけだ!

 いや、これも後々問題になりそうだが、今はこうしておくとしよう。


 さて、村に入るまで寄り道しまくったような気がものすごくするのだが、ヴァレッタ村は村というよりも要塞の姿をしていた。


 というのも、山と山の間の隙間にちょうど収まるような姿で、俺たちの場所から見ると城門のように見えて村というよりも城という姿をしていた。

 まあ城はないから城門だけなのだけど。

 その城門はというと、長年閉じられたことがないのか、開け放たれたままで両方の扉は少し錆びて来ていた。


 そして城門の両脇には木で作られたやぐらがあり見張りと思われる兵士が暇そうにあくびをしながら警備をしている。

 暇なんだろうなーと思ったが、そもそも共和国と戦争しているわけではないと思うので、平和なことはいいことだろう。


 平和万歳だ!


 そんな光景を眺めながら俺達は歩く。

 ここは関所機能があるようで、城門の前には入国検査待ちの人々が並んでいた。


「ここの荷物検査は簡単なもので、探査の魔法の刻印が門の柱に入っていて、王国に持っていけないものを感知したら警報がなるようになっています」


「そんな魔法あるのか?」


「まあ、初級魔法だけどな。冒険者とか商人、旅人はこれくらい覚えておかないと安全に旅ができないからな」


「そうなんだ」


 探査の魔法とはこの世界においては誰でも扱える魔法らしい。


「そうなんですよ?魔物の探査とかをするような魔法ですけど」


 それは便利な魔法だな。

 カイの記憶ではあんまり使ってないようだったが、俺も使ってみようかな?


「すごく便利なんだが、俺は別に探査なんてしなくても魔物くらい余裕で倒せるからな、あんまり使ってなかったんだ」


「地味に自慢してくるな」


「すまんすまん、アトスももし気になるんだったら常時発動させておけばいいぜ?」


「常時発動なんてできるのか」


 俺もカイの記憶を全てわかっているわけではないので常時発動という未知の使い方が気になった。


「そういえば、アトスには常時発動の方法は教えてなかったな」


「え?アトスさんってあんな凄い魔法使うからそれくらい知っていると思ってました」


 するとリコリスは目を輝かせて俺にこう言う。


「それなら私が教えます!助けていただいたお礼です。

 といっても私が受けた恩は一生かかっても返せないかもしれないですが」


「大袈裟な、そんなに大きく思わなくてもいいんだけど」


「大袈裟なんてとんでもないです!あの時アトスさんが助けてくれなかったら私今この場所に立ててないです!」


 めちゃくちゃ怒られました、はい。

 とはいえ、教えてくれるのならぜひリコリスに教えてもらおう。


「じゃあ、暇な時にでもよろしく」


 ということで常時発動についてはリコリスに教えて貰うことにした。


読んでいただきありがとうございます!


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