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第七十五話 公国の光と闇

 次の日。

 俺はビスタリオに護衛を頼まれ、バイゼルハーツ公国の首都ライデンリッヒへとやって来ていた。


 ここに来るまでビスタリオは目的を何も話さなかったので結構疑問を浮かべながらついてきたわけなんだけど、さすがに首都に来るとは思ってなかったのでビスタリオに目的を聞く。


「ここまで聞かなかったが、目的は?首都に来るなど俺は聞いてなかったのでな」


「なに、大したことはない。

 ちょっとマッキンリー卿の所へと行こうと考えていた」


 大したことだと思うんだけどな?!

 司令官のマッキンリーの所に行くとか、真面目に言われてもなー。


「何の用でだ?」


「今回はあちらの侯爵さんと密談だ。あと二日しかないが、やっておかねばならないからなぁ」


 そうですかそうですか。わけわからんぞ!

 しかし密談ということは革命に関することかな?

 マッキンリーは仮にも王様側の指揮官だからそんな場所にわざわざ向かうなんて、この辺境伯やっぱり何を考えているのかわからん。

 それって最悪拘束されたり処刑されたりしないんだろうか?

 まあ、ビスタリオが何を考えているのか分からないのは今に始まったことじゃないけどね。


 俺が考えても分かるわけないので、初めて訪れる公国の首都の光景でも見ておくか。


 首都は過去の世界ということもあってか、アルデイト王国の王都アルデシュザールよりも寂れたイメージだった。

 首都の一番奥には寂れた町とは対称的に豪華でキラキラした城が建っていた。

 公国の現在の姿をありありと示しているようだった。

 この公国は暴君の圧政によって苦しんでいるそうだからまず発展はしていないんだろうな。

 俺の後ろに浮きながらついてきたサフィーネはその首都ライデンリッヒを見て俺に元の世界との比較を教えてくる。


「やっぱりかなり寂れているね。元の世界のライデンリッヒとは大違いだ。

 住民がみんな暗い顔をしている」


 サフィーネの言う通りだった。

 道行く人達は暗い顔をしていて、何の希望もないみたいな絶望の表情を浮かべていた。

 住居も壁にひびが入っていたり、今にも崩れそうな家などが建ち並んでいた。

 未来の世界のライデンリッヒはこれより遥かに発展しているんだろう。

 俺は未来の世界のライデンリッヒを知らないのでサフィーネの言うことをただ聞くしかないんだけど。


 さらに住民だがみんな痩せ細っていてまともな食事を取れていないのがよくわかる。

 こんな状態で重税とか死体に鞭打つようなもんだろ。

 中央部の貴族はろくな人間いなさそうだな、これは。


「おらっ!キリキリ働け!卑しい奴隷め!お前の代わりなんていくらでもいるんだよ!使えなくなるまで私の元でこき使ってやるからな!」


「すみません、すみません!許して下さい!」


 声のする方を見ると、身体中傷だらけの破れた奴隷服を着た人間が、主人と思われる上流階級っぽい人間に鞭を打たれながら無理矢理働かされている。


 ……見てられないな。


 思った以上に奴隷の扱いが悪いみたいだ。

 まるで罪人みたいな扱いじゃないか。

 俺は魔剣の柄に手を掛けるが、ビスタリオに止められる。

 そして小声で耳打ちをするように話す。


「これが今のこの公国の在りようだ。

 気持ちはよくわかるが耐えくれ」


「……わかった」


 ここで下手に感情のままに動いたらビスタリオの考えている未来を閉ざすことになってしまう。

 それはやってはいけない。

 耐えないとここから未来に繋がっているあの世界にはたどり着けないだろう。

 俺は唇を血がにじみそうなくらいに噛みながら何とか耐えて、魔剣の柄から手を離す。

 くそ、何もできないのは辛いな。


「僕もさすがに予想外だったよ、ここまで酷い扱いを受けているなんて」


 サフィーネは俺のその様子を見ながら自分自身も落ち込む。

 本当にこの国は奴隷を消耗品の道具くらいにしか思ってないんだろう。

 使えなくなるというのはつまり死ぬまでということだ。


 こんな光景をみたら国を変えたいとか思ってしまうのも無理はない。

 実情を知ってしまうとビスタリオと出会う前は、国が滅びるようなことをしているから納得はできないなんて考えていたが、考えを改めよう。

 こんな国は滅びるべきだ。

 とてもハッピーエンドで終わるような国ではない。

 自分の首を真綿で絞めていくようなものだろう。

 税を払っている住民や労働する奴隷が居なくなればこのバイゼルハーツ公国を維持できないというのに。

 多分、暴君と呼ばれる王はそんな簡単な理屈すらも分かっていない。


「すまんなぁ、このような光景はあまり他の国や旅人には見せたくなかったが、仮面さんには知っていてもらいたい。

 俺様達がなぜ命をかけて国を変えようとしているのか、少しでも分かってくれればいい」


「いや、十分にわかった」


 生半可な覚悟で革命は起こせない。

 ビスタリオ達は俺が思うよりも遥かに強い覚悟の元で動いているんだろう。


「そう言ってくれると、俺様達が動く原動力になる。

 あと少しであの光景も終わる」


 いろいろ悔しいが今の俺にできることはないようだった。

 ビスタリオが再び歩き出す。

 ついていくと町の一角にこれまた寂れた酒場があった。


「ここだ。ここでマッキンリー卿と話す約束になっている」


「大丈夫なのか?」


「もしなにかあればお前さんの力を借りる。

 そのためにこうして護衛を頼んだ」


 ビスタリオは俺の実力を信頼しているらしい。

 確かに本気を出したら多分なんだけど、誰にも負けないと思う。

 正直自惚れがすぎて自分でもどうかと思うけど、これまで積んできた事実が自信を裏打ちしているので間違いではないと思う。

 もっとも過信しすぎは良くないので常に強敵と出会うことは考えているけど。


「わかった。その時は任せろ。

 じゃあ行くか?」


「うむ、よろしく頼むぞ!」


 酒場のドアを開けると中は一部のテーブルを除き、イスがテーブルの上に上げられていて、閉店状態のような光景だった。

 本来酒場のマスターがいるはずのカウンターには誰もいない。

 さっき見た一部のイスがテーブルに上げられていないテーブルにはキセルのような物を持った剣呑な雰囲気の男性が何人かの兵士と思われる人物を背後に立たせ、座っていた。


「……やっと来たか、ローゼンシュタイン卿」


「時間はピッタリのはずだがなぁ?」


 きっとあのキセルを持っている男性はマッキンリーだろう。

 刺々しい空気を感じる。

 その男性はキセルを咥え、一旦息を吸って空中に息を吹きかける。

 酒場の天井に白い煙が浮かぶ


「確かに、指定した太陽の位置だな。

 そんなことはどうでもいい……座れ」


「わかっている。では目の前に座らせてもらおうか」


 ビスタリオについていくとマッキンリーと思われる人物が鋭い視線を送ってきた。


「その者は?……いつも連れているメガネのメイドはどうした。

 まさか貴様もバカ叔父のようなことをしているのではあるまいな?」


 叔父ということはやはりあの人物はマッキンリーだな。

 バカ叔父ってな。

 王とか、ましてや貴族のトップに言う言葉じゃないと思うけど。


「誤解だ。今回はこの仮面さんに護衛を頼んでいる。

 気にしなくていいぞ」


「ふむ、やはり貴様は飄々としているのだな、いつでも」


 この剣呑な雰囲気のマッキンリーと何を話すと言うのだろうか。

 マッキンリーは明らかに危険な空気をまとっている。

 数々の謀略の限りを尽くした末にここまでやってきたようなそんな雰囲気だった。


「俺様はいつでもどこでも変わらんよ」


 そう言いながらビスタリオはマッキンリーの対面のイスに座る。

 今回、俺は護衛ということなので警戒しながらビスタリオの近くに立つ。


「名は名乗らない人物か。ローゼンシュタイン卿は相変わらず変わり者だな。

 そのような素性も知れぬ人間に護衛を頼むなど」


「素性は分からんが、仮面さんは信頼できる人間だ。

 ……本題だ、あと二日後に行動を起こす。

 マッキンリー卿は軍を動かすつもりなのかな?」


 いきなり革命を起こすことを堂々と宣言するのかよ!

 それを聞いたマッキンリーは片方の眉を一瞬ピクッとしたが、キセルを口に咥えたまま腕組みをする。


「ふん、貴様のやることに興味はないが、あのバカ叔父を殺せるのなら本望だ。

 軍の兵士たちもあのバカ叔父の行いにはさすがに呆れ始めている、俺が動けと言っても今回は黙殺するだろう。

 それほど人心は離れている。

 貴様が行動を起こさなくても遠からず反乱が起きていただろう。

 愚かな男が王になったものだ」


 この公国の兵士は貴族から出た騎士なのか、それとも平民なのかは分からないが、軍すら見限るとかこの国終わってる。


「この間はそのようなことは言っていなかったと思ったが?」


 ビスタリオはこの話は初耳だったらしく意外にも驚いた顔をしていた。


「ククク。貴様の狐につままれたような顔を拝めただけでここに来た甲斐があるというもの」


 マッキンリーは憎悪を宿らせた瞳でおかしそうに笑う。

 思った通り、表向きは和解したということにしているが親を殺されているはずなので、内心は復讐しか考えてないのだろう。


「マッキンリー卿はこの話が終わったらどうするのだ?」


「……そのようなこと考えたことがなかったな。

 ふむ、さて、どうするか」


 またもや考え込んでしまうマッキンリー。

 復讐した後の事は全く考えていなかったらしく、剣呑な雰囲気が消え去った。


「そんなことはいい。終わった後に考える。

 貴様に問われるまでもない。

 だが、他にも話すことがあるのだろう?」


「うむ、この仮面さんはあの王の剣に用があるようでなぁ」


「ほう、勝手にするがいい。バカ叔父の武器など興味はない。

 しかし側近の将軍達は強いぞ。

 将軍達はバカ叔父と同じような吐き気のするような性格もあってか、王に忠誠を誓っている。

 その仮面の者と俺の部下を戦わせて実力を見せてもらおうか」


 そんなわけで俺はこの酒場の中でマッキンリーの部下と戦うことになった。

 外でやればたちまちこちらの行動が王にバレるとのことでだ。



私の執筆速度なのですが三日で一話のスローペースです。

5月中頃にストックが切れるかもしれません。

ここまで読んで頂き本当にありがとうございます!

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