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第六十七話 どうやら過去に行かなければならないらしい

 遺跡に到着した。

 ゼダルフから降りてその遺跡を見てみるが、相当昔に作られたようで、かなり廃墟に近い姿だが、大きな大聖堂みたいな建物がそこにはあった。


「ゼダルフ。これが例の遺跡か?」


 確認をしておくためにゼダルフに話しかける。


「うむ、間違いない」


「これホントに古代遺跡ね」


 近くに来て遺跡を眺めたシャーリーがそう言う。

 そういえばシャーリーは遺跡とかの知識があるようなことを言っていたような気がするが、もしそうなら遺跡のことはシャーリーにでも聞いておくか。


「なんなのだ?今にも倒れそうな建物なのだ」


 シルキーの言う通りで窓と思われる場所はすでにガラスなどなく、風が建物の中に入り込んでいる音が聞こえる。


「古代、遺跡……初めて見た」


「んー?こんな建物あったかな?」


「古代遺跡ッスか?オイラも気になるッス!」


 ノルンは知識にはあるらしいけど、やはり遺跡は初めて見るようで眺めるなりそう言うが、カイは記憶を探っているらしく、腕組みをして目を瞑っていた。

 ゴブレは集落から出たことがない。

 そのためこういったイベントは初めてだからか、少し楽しそうだった。


 シャーリーがその建物の壁を触りながら口を開く。


「壁の加工年代からすると200年前くらいの建物かしら。でもなんでこんな場所に?」


 その様子を見ていたゼダルフが思い出したように話しかけてくる。


「そういえば、浜辺の方には同じように朽ちた建物があった。ここの建物よりも小さいが、人が住むには狭くないくらいの大きさだった」


「そうなのか。ならあとでそっちの方も調べてみるとするか」


 でもとりあえずは内部に入れるような扉がないかと周りを見ると、扉が地面に倒れている場所があったのであそこだろう。


「ひとまず、この建物の内部を探すとしようか?」


「……危なくない?」


「だ、大丈夫なんスか?アトスさんが倒れたらオイラ達大変なことになるッスよ?」


 俺の一言にノルンとゴブレが心配そうな顔をしてそう言ってくる。

 まあ、俺も危険性がないわけではないから少し心配だけどね。

 みんなを巻き込む訳には行かないので、みんなには外で待機するように言うが、シャーリーとゴブレがそれぞれついてくると言う。


「もし危なそうなら自分を一番に考えてくれ。こういった場所ではその方がいいと思う」


 誰かを助けようと自分も道連れになったら笑えないからな。


「わかったわ。大丈夫よ、アトスからアーティファクトも受け取ってるし」


「オイラも足手まといかもしれないスけど、アトスさんだけにそんなことさせたくないッス!」


「ありがとう。そうだ、ゴブレにもアーティファクトを渡しておくよ。魔力は使えるんだろ?」


 ゴブレは頷く。

 現在、俺が所持しているアーティファクトはアイーシャやクロノに使った分も含めて十二個だが、俺の手元にあるアーティファクトはあと一個なので、ゴブレに渡すので最後だ。

 何気にアーティファクトをめちゃくちゃ使っているような気がするが、安全なら使えるものは使うべきだろう。


「じゃあ、何かあったらアーティファクトを使ってみてくれ」


「わかったッス!」


 というわけで、扉が地面に倒れている場所から内部に入る。

 建物の中は床が所々抜けていて、一歩足を進める度にギシギシ言っている。

 天井の角にはクモの巣が多い。

 うん、完全に廃墟みたいだ。


「ホントに廃墟ね。なんの目的があってここにこの建物を建てたのかしら」


「シャーリー、ゴブレ、足元に気を付けながら歩けよ。もしかしら床に足を着けた途端に床が抜けるかもしれないから」


 俺がそう言うとシャーリーとゴブレが頷く。

 建物の中央まで進んだ所で、シャーリーが何かに気づいたようだ。


「これ、床に転移の魔法陣が刻印されているわ、所々陣が途切れているから発動はしないと思うけど。気を付けなさいよ」


「転移の魔法陣?」


 と思って床を見てみると確かに何かの刻印が記されていた。

 確認した途端に魔法陣が光り始めた。

 あれ、これマズくない?!

 俺がいる場所はちょうど魔法陣の中央で完璧に被害を受ける場所だった。


「ちょ、ちょっと、早くそこから離れなさいよ!」


「急いでそこから逃げるッスよ、アトスさん!」


 俺だってそうしたいけど、周りが透明な壁で覆われていて、さらには足が固定されて動かなかった。


「あっ、これダメな奴だ。シャーリー、ゴブレ、この建物から出るんだ。俺は動けそうにない!」


「のんきに言ってる場合じゃないッス!」


「動けないの!動けないんだよこれ!怖っ!」


 見かねたシャーリーが火の魔法ファイアーボールを飛ばすが、透明な壁に弾かれてしまった。


「なんなのよ!アトスなんとかしなさいよ!」


 そう言われても、というか運命を操る力が発動していないってことは悪い効果ではないはずだ。


「俺は多分大丈夫だから、外に出てくれ!」


 その言葉を最後に、視界が真っ白に染まる。

 そして、体が宙に浮く感覚があった。

 なんなんだろう、これ。


          ☆


 気づくと真っ白な世界にいた。

 あまり驚かなかったのは目の前で羽をバサバサさせながら浮いているサフィーネが目の前にいたからだ。


「あっ、来たね。待ってたよ!久しぶりだね、アトス・ライトニング」


「え、もしかしてあの魔法陣ってお前が作ったものなのか?」


 この状況にも関わらず俺は妙に落ち着いていた。

 天使が書いた魔法陣なら俺の能力が発動しないのも頷けた。

 しかし、一体何の用があるんだろう?


「うん、そうだよ。遥か昔に書いたものだけど、君を呼び出すために」


「何言ってんだ?あの魔法陣って俺以外に発動したらどうするつもりだったんだよ」


「いや、君以外には発動しないように設定してある。

 過去に遡るのは中々手間だったけどね!」


 なにしてんすかね、あのお気楽天使は。

 というか何で過去に遡る必要があったんだろう。

 俺の変な顔を見たのか、サフィーネはニヤニヤしながら話しかけてくる。


「君、何でそんなことをしているんだって顔だね。

 実はね、アーティファクト関係の話なんだ」


「アーティファクト?それと過去に遡る話がどう繋がるんだ?」


「あの世界のバイゼルハーツ公国は知っているよね?その過去の歴史にある公国の暴君が持っていた剣にアーティファクトが使われたらしい。

 今回の件は異例の事態だ。

 どうやら魔神の勢力は総力を上げてアトスの存在しない過去から世界を破壊しようと考えたらしい。

 過去に遡るのは神ですらも中々できないことだから、これを阻止できればひとまず、過去から世界を変えるなんてことは当分できない」


 嫌な予感がした俺はひきつり笑いをしてサフィーネに聞く。


「200年前ってことは、もしかして貴族連合と公国の戦争があった時代か?」


 確かリコリスとノルンが王都でそんなことを言っていたはずだが。

 もし、それに参戦しろなんて話なら、貴族連合に味方した謎の仮面の人物って俺じゃね?!


「察しがいいね、そうだよ。

 君には貴族連合に協力してもらってその剣となったアーティファクトを回収して貰いたい。

 これは僕達も乾坤一擲の作戦なんだ。

 手を貸してくれないかい?」


 サフィーネは初めてみる真剣な顔でそう言ってきた。

 やっぱりな!知ってた!


「全く、俺を良いように使いすぎだろ」


 俺は苦笑いをしてそう言う。

 アーティファクトは必ず集めると軽いノリで決めていた訳だがまさか過去まで行かなければならなくなるとは。

 俺はハッピーエンドを目指すためにこれを始めたお人好しだ。

 過去から変えようとしているなら、それは阻止したい。

 過去があってあの世界があるなら過去を変えるようなことはしてはいけないと思う。

 魔神の狙いはそれなんだろうけど。


 だが、もしどうしてもという状況になったら俺も過去を変えようとか考えると思う。


「いいよ、やってやる。一度決めたなら手のひらを返すことは俺はしたくないからな。

 でも、現在の時間軸に戻って来られるのか?」


「よかった。

 僕達は君にお願いするだけの立場だから断られたらどうしようかと内心ヒヤヒヤしていたよ。

 現在の時間軸に戻って来られるかついては問題ないよ。

 消えたすぐ後の時間軸にちゃんと戻せるから」


 サフィーネはそう言いながら心の底から安心したようにホッと一息。

 ちゃんと戻って来られるなら問題ないか。


「俺が断ったらどうするつもりだったんだよ?」


「その時は僕達天使が決死の覚悟を持ってそれに挑むことになっていたよ。

 魔神と天使の力は別次元だから叶わないけどね」


「天使より上の神はなにしてんだ?」


 こんな状況にあっても動かない神は何をしているんだろう。

 明らかに世界の危機なんだけど。

 そもそも崩壊の危機にある世界に現れないのはなんでなのか。


「僕達より上の神は基本的に、時空神アトロパテネスの命令がなければ動けないんだ。

 その時空神は既に滅んでいるから存在しているはずの他の神達はどこにいるのかすらわからない。

 死神達は汚染された魂との戦いになる対魔神戦には向かないから悔しい想いを持ちながら日々を過ごしている」


 天界もいろいろな立場があるんだな。

 動きたくても動けない死神と聞いてセレスティもそんな想いを持っているのだろうかと少し考えてしまった。


「そんな話はいいんだ。それじゃあ、改めて、

 ――世界を救って欲しい」


 サフィーネのあまりの真剣さに俺も真面目に答える。


「こんなこと恥ずかしくて普通なら言えないけど、任せろ。

 必ず過去改変を阻止してやるよ!」


「よろしくね。過去の世界で君の顔は知られていないからこの仮面を送るよ」


 サフィーネが差し出した仮面は銀色で顔全体を隠せる大きさのフルフェイスの仮面だった。

 俺はそれを受け取り装着すると、仮面をつけているはずが、俺の視界は普段と何一つ変わらなかった。

 これなら戦いやすいな。


 ――では、過去の世界を救いに行くとしようか。

 明日へと続いていく未来の先の世界で仲間達と笑い続けるために。




ここから過去世界の話になります。

この話が終わると第三章終了です。

読んで頂いている皆様に感謝を!

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