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第六十二話 皇女が現れた!

 赤い飛行艇らしき物体の側面が開く。

 あそこが出入口らしい。

 その場所から真っ赤な縦ロールの赤い豪華な服装の女性と、執事のような姿をした人物が降りてくる。

 遠目からでも俺の視力だと詳細がよく見える。

 前に王宮で出会ったシスティナと同じくらいの大きい胸。

 赤い髪にこれまた真っ赤なルビーのような瞳をしたつり目。

 つり目自体はシャーリーもそんな目なのであんまり珍しくはなかったが、全体の姿をまとめて言えば、赤い。


「ここがあの少年がいた場所ですのね?」


「ええ、間違いございません」


 その真っ赤な女性は俺を見つけるとものすごい勢いでこっちに走ってくる。

 なんでこっちに来ているんですかね、あの赤い人は。


 隣にいたノルンは慌てて俺の後ろに隠れて俺の背からあれをチラチラみる。

 まあ、あんな勢いで来られたら怖いよね、わかる。


「だ、だれ……なの」


「わからん、でも俺に用があるみたいだ」


「そこの少年!この間の死王国との戦いで活躍した少年で合っていますわよね?!」


「えっと、あんた誰なんだ?」


 近くまで来ると息を整えて彼女は自己紹介を始める。


「ワタクシはメクリエンス帝国第一皇女アルシェ・ベアトリクス・メクリエンスですわ!」


 え?メクリエンス帝国?!


「えっと、その皇女様がなんでこの場所に?」


 そんな存在に目をつけられるようなことしたかな?

 ってさっき死王国との戦いって言っていたよね?

 もしかして、第一波を片付けたあとに見たあの謎の飛行物体のせいだったりするのかな。

 どう考えてもあの物体は帝国のものだったけど。


「メクリエンス……帝国?」


「あら、怖がらせてしまったようですわね。申し訳ないですわ」


 アルシェと名乗った女性は後ろのノルンを覗き込むようにして上半身を少し倒す。


「名乗られたのでこっちも名前を言うけど、俺はアトス・ライトニングだ。背中にいる女の子はノルン・フォーミストって名前だ」


 ノルンが背中から出て、覗き込んでいるアルシェに一礼する。

 それを見たあと、アルシェは元の姿勢に戻る。


「あなた、アトス・ライトニングと言うんですのね。覚えておきますわ!」


「それで?なんの用なんだ?」


「ワタクシ、死王国動乱の戦いの映像を見ていましたの。そしたらあなたがあまりにおかしい力を使うから気になってこうして帝国からはるばるやってきたんですわ!」


「あー、見ていたんなら別にここに来る必要ないのでは?」


 というか、あまりの突然の訪問だったので、つい普通に話しているけど、大丈夫なのかな。

 皇女ということは帝国の姫なのは確かだしそのまま話しかけるのは失礼なのではないだろうか?


「そ、そうですわね。ワタクシはあなたがどういう人物なのか調べに来たんですわ!」


 このアルシェという人物はどうも猪突猛進のイメージになった。

 きっと気になったら後先考えず行動するタイプだろう。


「アトスを……調べに?」


「そうですのよ?我ながら何も考えなさすぎとは思っていますけど、気になるんですもの」


「好きでは……ないんだよね?」


 ノルンが少し敵視する視線を送る。

 そのノルンの視線を受けたアルシェは不思議そうに頬に人差し指をつけて顔を少し上に向ける。

 頭に疑問符でもついていそうだ。


「なんでそうなりますの?ワタクシはアトスさんが気になっただけで、恋愛感情なんてあるわけないですわ。第一、ワタクシは許嫁がいますし」


 さすが皇女様だ。

 やはり政略結婚なんだろうな。

 こういう場合は姫は自由に恋愛できる状態にはならず、どこかの国の王子とか有力な家の息子とかに嫁ぐことになるはずだ。


「じゃあ、なんで来たんだよ。話をしに来たんならもう用はないだろう?」


「ええ、そうですわね。それよりもアトスさんはここで何を始めているんですの?」


 そうですわねとか言いながら何気に別の話題を持ち出すのか。

 アルシェは周りに建っている家を見ながら俺に問いかける。


「そう聞くってことは帝国にはまだ噂が流れていないんだな。ここはフォクトライト自由連合国として建国し始めている発展途上の国だよ」


「そうなんですの?何を目的に?」


「まあ、アルシェがどう言うか分からないけど、敵対心のない魔物といろんな種族が平和に幸せに暮らせる国が目的かな」


 俺の理想を聞きながらアルシェは羨ましそうな顔をする。

 そして、少し寂しそうに笑いながら話し始める。


「……いいですわね、自由で。ワタクシも自由に暮らせたらどれ程楽しかったか」


「ん?なんで悲しそうな顔をしているんだ?アルシェは自由……なわけないか。皇女様だもんな」


 きっとアルシェは普通の少女よりも自由に過ごせる時間がなかったんだろうな。

 まあ、皇女だからと言えばそれまでだけど。


「アルシェの……許嫁ってどんな人なの?」


「ワタクシの許嫁?……笑ってしまいますがゼオルネ竜王国の王らしいですわ」


 アルシェは自嘲気味に笑いながらそう言う。

 え、ゼオルネ竜王国の王ってハーレム王の?

 興味を失った女性は平気で捨てるとか言うクズみたいな男か。

 そりゃあ、あんな顔をするよな。

 どう見ても幸せに過ごせるなんて思えないもんね。


「えっ……可哀想だね、アルシェ。竜王国の、王って評判最悪って話……だけど」


「ワタクシが小さい頃にはまともな王子だったそうですけど、母親を失ってから女性漁りに奔走するようになったとか」


 マザコンかよ!

 確かに俺の生前の記憶でもなんかの小説でマザコンの王が母に似た人物を手当たり次第集めるなんて話があったと思うけど、現実にいるとか引くわー。


「昔の面影はどこにも見当たらないんですの。もうどうしようもないくらい最低な男に成り果ててしまいましたわ」


 そんなところに嫁がないといけないとか地獄すぎるだろ。

 皇帝はそんな扱いで本当に納得しているのか?


「ワタクシ、本音を言えばもっとまともな男性のところに嫁に行きたかったですわ……」


「そんな……帝国の皇帝は、それで納得しているの?」


 ノルンがたまらずそう聞く。


「お兄様は皇帝の地位と国の安定のためにワタクシのことを考えている暇はないんですの」


「帝国ってそんなに安定してないのか?」


「ええ、日々、各地の有力な家の動向を見て、さらに皇帝の地位を狙おうとする大臣達との権力争いが絶えないのですわ。お兄様はたびたびワタクシのことを心配してくれますけど、ワタクシ事でお兄様を苦しめたくないんですの」


 帝国ってもっと圧倒的な軍事力とか絶対的な権力のイメージがあったけど、そうでもないらしい。

 あの噂の皇帝は恐らく転生者のはずなので、俺は他人事とは言え、そんな場所に転生しなくてよかったなと思った。


 それはそうとゼオルネ竜王国の王に嫁いで捨てられる光景は想像したくなかった。

 だが、それは他国の話なので俺が首を突っ込む訳にはいかないんだろうな。


「帝国も大変なんだな」


 俺はそう言うしかなかった。

 ノルンはそんな俺の姿をみて落胆したような顔をしていた。


「ねぇ……アトスの言う、ハッピーエンドってそんなことを許していいの?」


「え?アトスさんってそんなこと考えているんですの?」


「えっと、難しいな。確かにそれは許せないけど、帝国だって考えなしに動いてはいないし、俺がでしゃばったらダメじゃないのか?」


 俺の話を聞いてノルンは少し悲しそうな顔をしていた。

 あれ?俺ってマズイこと言ってる?

 見るからにノルンは悲しそうな顔をしている。


「そう……なら私はアトスのこと、好きでいられなくなるよ?」


「え?どういうこと」


 俺はノルンの言っていることがよくわからなかった。


「出会った頃のアトスって……もっと輝いていたよ?今のアトスはいろいろ考えすぎ」


「出会った頃の俺?」


 そう思って転生してきた頃のことを思い出す。

 あの頃はこの世界を理解していなかったからいろいろ考えなしに行動していたと思うけど。

 ノルンから見たら今の俺は平凡な人間みたいに見えているのかもしれない。

 いや、俺は転生する前はただの一般人だったし、平凡なのはむしろ当たり前なんだけど。

 確かに最近いろいろ考えることが多くて上手く動けていないような気がする。

 うーん、しがらみに囚われているというのだろうか、こういうのは。


「なにやら込み入った話みたいですわね。でも大丈夫ですわ。ワタクシは皇女。結婚なんてそんなものだと思っていますし問題ありませんわ」


 アルシェはそう言うけど、その瞳がわずかに悲しそうに潤んでいるのを俺は見逃さなかった。

 さらにそこに込められたわずかな期待も。


 そんな瞳を見せられたら助けたくなっちゃうじゃん。

 ノルンに乗せられたわけではないが、アルシェはきっとこの件に納得してない。


「アルシェ、さっき本音を言えばと言っていたが、どうしたいんだ?」


「え?……その言っていいんですの?あなたに迷惑をかけることになるかもしれませんわよ?」


「構わないよ。どう見てもバッドエンドにしかならなそうだし。俺としては困っている女の子を助けない理由はないしね。もちろん、これが男の人でも助けるよ。

 俺はみんなが幸せになってほしいから」


 我ながらキザったらしい言葉を言っている気がするけど、それはいい。

 アルシェがそんなところに嫁ぐのが嫌だと言うなら俺が助けてやる。

 そんな言葉を言った俺を見て、落胆していた表情を変えキラキラした視線を送ってくるノルン。


「よくそんな恥ずかしいセリフを言えますわね。ある意味尊敬しますわ。では本音で話しますわ。

 すぅ……あんな男に純潔を散らされるのはぜっっったいに嫌ですわ!滅んでくださいまし!」


 アルシェは息を大きく吸って大声でそんなことを言う。

 恥ずかしいのはどっちだよ!そんなセリフ大声で言うんじゃないよ!


「ス、ストレートすぎるだろ!ビックリだよ」


「ふう、スッキリしましたわ。でも本当に大丈夫ですの?」


「もちろん。世界を敵に回してもアルシェを助ける。だからもう悲しい顔をするなよ?」


 俺のその恥ずかしいセリフを聞いてアルシェは顔を赤くする。


「アトス……恥ずかしすぎ。そんなセリフ……私達も聞いたこと、ないよ」


 俺は照れている表情を隠そうとノルンとアルシェがいる方向とは反対側に顔を背ける。


 そんなわけで、俺はゼオルネ竜王国と対立することになった。

 この時点ではまだ竜王国の王に話が伝わっていない。

 なので、この話は忘れた頃に起こることになる。



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