表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/159

第六十話 倒れた理由と新たな風

 クロノが出発してすぐのこと。

 俺はなぜあれほどの精神力を消費してしまったのか、疑問に思った。

 なので、答えられそうなカイに聞きに行くことにした。

 この国にある家は外見が全部同じだから、誰が住んでいるかある程度分かってないと大変だ。

 識別のために表札作りとかも同時進行でやってくれているらしいので誰が住んでいるかくらいはそのうちわかるようになると思う。

 というわけで少し前に教えてもらったカイの住んでいる家に到着。


 いるだろうか?


 と中に入ってみるとカイが驚いた顔をしてこちらを見ながらそこにいた。


「おお、目が覚めたのか!」


「ついさっきな。みんなで看病してくれたとか」


「あー、そうだな。特に女性陣はみんな泣きそうな顔をしていたぜ?まあ、セレスティは魂に異常はないから大丈夫だよって言っていたが」


 さすがに死神だし、2000年以上生きているから動揺したりしないんだろうな。

 セレスティだけ特異性のある立場だから仕方ないことではあるのだけど。


「そうなんだ。さすが死神だな、そこら辺は」


「それはいいが、何しに来たんだ?」


「ああ、精神力がなんであれだけ消費されたのか、わかるかなーって思ったから来たんだ」


「それか。よく考えてみるんだな」


 カイはニヤニヤしながらも教えてくれようとしない。なんで?

 だが、そう言われたので考えてみることにした。

 アーティファクト三個に魔力を通して魔力の体を作る。

 アーティファクト自体は少量の精神力を使って魔力を通せば問題なく動くはずだから、魔法に問題があったということになるだろうけど、それがわからない。


「質問するけど、魔法とアーティファクト自体には問題はないんだよな?」


 と確認がてら聞いてみる。


「まあ、その二つには問題ないな」


 ということは、作る対象が問題だったんだろうか?

 そう考えたが、今回創造したのは分身とは言え神自体みたいなものだし、やっぱり他の軍団魔法よりも精神力を消費することになる、のかな?


「神を降臨させるのってやっぱり普通の人間にはできないことなのか?」


 そう聞くと、カイは笑って答える。


「ハハハ。まあそういうことだ。神様復活なんて俺でも無理だし、そりゃあ気絶もするってもだろ?」


「そんなもんなのか」


 ここに来て、俺はいかに自分がおかしい人物なのかを再認識した。

 俺が不思議そうな顔をしているのをみたカイは焦りながら俺に問いかけてくる。


「お前な……なに不思議そうな顔してんだよ!神様だぞ?!しかも他の次元すらも維持している最高神並みの神様だぜ?もう少し自分に驚けよ!あまりの落ち着きようにカイさんビックリしただろ!?」


「いやー、うん。そこまでって実感がなかったからな」


「と、まあ、それが理由だぜ。アトスが落ち着き過ぎているから、俺がおかしいのかと思ったじゃん」


「いや、カイはおかしいだろ?」


「よし、理由を聞こうか?!」


「だって次元の旅人やってるし1000年生きてるし、アーティファクト使ったらおかしい戦闘力だし」


 俺としてはカイくらいおかしい人物なんてみたことないんだけどな。

 俺も大分感覚麻痺してきている気がするけどね!


「んなこと言ったらお前の方が俺よりはるかにおかしいぜ」


「確かにそうだけど、まあそれはいいや。こんな話って不毛でしかないしな」


「不毛、確かに不毛だな。この話題はやめよう。それで用ってそれだけか?」


「それだけ」


 特に他に用があったわけじゃないし、ここに来たのはホントにそれだけの理由だな。


「俺の扱いひどくない?!便利道具じゃねーんだぞ」


 どっかの世界の猫型ロボットを思い出したけど、カイって1000年も生きているからつい頼りにしてしまうんだよな。


「いやあ、すまん。それじゃっ!」


 俺は片手を降って家の外に出る。


「待てこらー!」


 家で叫ぶカイを無視して光速で町の広場に走っていく。


 さてはて、どうしようかな。

 シャーリーを助けて以来、平和だからなんか手持ち無沙汰になっているような気がする。

 平和なことは別に悪いことではないし、俺自身も平和に過ごせればいいけど。

 それに俺が動かなくていいということはアーティファクトによる事件も起こってないと思っていいのかな?

 他の国の情報を知らないから知らないところで事件が起きていそうだけど。


 広場とはいうけど、まだただ広いだけって場所だ。

 いや、広い場所で広場と書くから意味はあってるけどさ!


 広場と言えばよくあるファンタジーの広場は噴水とベンチ、出店とか風船配りの人がいる場所を思い浮かべるけど、俺の作ろうとしている国はまだそこまで発展しているわけでもないのでこれくらいが妥当なんだろうな。


「あっ、アトス……目が覚めたんだ」


 俺が広場でボケッとしているとノルンはそこに歩いてきたみたいで驚きながら近付いてきた。


「ああ、ノルンか。心配かけたみたいだな、すまん」


「もう……私たちホントに心配……したんだよ」


 ノルンは泣きそうな顔をしている。

 全く、ハッピーエンドを目指している男がなに女の子泣かせてんだか。

 もっとしっかりせねば。


「俺もああなるなんて全く考えてなかったから、今回は俺が悪いな」


「目が覚めたなら、それで……いい。アトスは、ここで何しているの?」


「ん?俺か?目が覚めて気になる事があったからカイのところに行って質問していたんだよ。ノルンは?」


 そういえば男とゴブリンは家作りとか木を取って来たり、ゴブリン以外の他の人はヴァレッタ村に食糧調達に行ったりしているけど、女の人達はこれまで何していたんだろう?


「わ、私?私は洗濯したり、森で木の実を探したり……しているよ?リコリスとか、シルキーとかみんなと……一緒に」


「そうだったんだ?全然聞いてなかったから不思議に思ったんだ」


 食べ物にたまに木の実とか混ざっていたのはそういうことだったんだ。

 何気に美味しい木の実で、リンゴにハチミツをかけたみたいな甘い味のする木の実とか、ブドウとレモンの酸っぱさを合わせたようなめちゃくちゃ酸っぱい木の実なんてのもあった。


「シルキーが……すごいの。食べられる木の実……とか食べられる植物と毒草とか、みんな見分けて私達に教えてくれるの。

 やっぱり獣王国出身なんだね」


 前々から思ってたけど、獣人ってたくましいんだな。

 シルキーしか見てないから他の獣人がどうなのかは知らないけど。

 まあ、定期的に拠点を移しているならそんな知識は必須なんだろうな。

 この間も自給自足が必要って言ってくれてたし。


「そうなんだ。ていうかノルンも経済だけじゃなくてそんなこともしてくれてるんだ。ホントにありがとうな」


「わ、私は……やれることを、やっているだけだから。それに……まだ貿易も形になってないから、私の出番は……まだ先」


 確かにまだそこまで考えられていない。

 ゴールドは有り余るほどあるからしばらく大丈夫だけど、やっぱり早く貿易のことも考えないといけないな。

 なにより俺は転生してからまだ自分で稼いだゴールドというものはない。

 なので自分で稼いだお金を手にしてみたい気分だった。


「その時が来たらよろしくな。俺は取引の交渉とかたぶん上手くないから」


 喫茶店で働いていてある程度の接客とかはできなくはないけど、取引となると俺は簡単に騙されそうだしな。

 俺は基本的に人を信じたい性格なので簡単に騙されると思う。

 じゃなければ、みんなにハッピーエンドを迎えてほしいなんてバカげた夢を持つはずがない。

 客観的に見れば俺はロマンチストなんだと思う。


「そう、なんだ。じゃあその時が来たら、頑張るね」


 ノルンが胸の前で両手をガッツポーズの形にして頑張るぞって顔をしている。

 おや、ノルンがこんなに積極的になってる姿は初めて見たな。

 ノルンも徐々にいい方向に変わり始めているようだ。

 これが俺の影響だとしたら嬉しいけど、どうなんだろうな。


 とそんなことを考えていると空の彼方にキラリと光る物体が飛んでいるのを見た。

 マジェス魔道国ではない。

 そもそもマジェス魔道国は大陸なのであんなに小さいわけがない。

 その光った物体がある方向の空をジーッと見てみると、どうやら赤い飛行船みたいなものだ。


 あれ?ここってファンタジーの世界だよね?

 俺は目をこすって再度それを見るのだが、赤い飛行船が消えるわけもなく、こちらに近づいて来ているらしい。


 それは先端が尖っていて、現代からすれば昔の帆船みたいな形をしているが、帆がなく、甲板と船室だけのような形をしていた。

 それが空中に浮いていたため、空を航海しているような光景だった。

 しかも、木造じゃなくて鋼鉄でできていたのでなお、おかしい光景に見えた。


 わかんねぇ、全然わかんねぇよ!

 なんだあれ!?


 それはどんどん近づいてきて着陸しようと、船体の下部から緩衝材になりそうな鉄の足が出てきて、家のある辺りを避けて着陸したのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ