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第五十九話 自由連合に神、降臨す

 スッキリするとやはり気分が違うものらしい。

 あの五人の女の子達は本当にそれでいいのかと思ったけど、聞いた通りみんな本心でそう思ってくれてるらしい。

 なら、俺が迷うのは筋違いだろう。

 それに俺自身はもう迷わないと決めた。


 というわけで国造りに戻った訳なんだけど、兼ねてから考えていた諜報部のことを考えることにした。

 俺は少し試したいことがあるので、カイを始めとして、この国にいるそれぞれの知識の持ち主を俺の家に集めていた。

 今回呼んだのは、カイ、リコリス、ノルン、エルネス、レスリだ。

 他にも呼ぶべきだったんだが、今回は外へ行くときに必要そうな知識がある人を選んだ。

 ノルンは男性恐怖症なので、リコリス、ノルン、俺の並びで座らせていた。

 ノルンはそんな俺の気遣いが嬉しかったのか少し頬を染めていた。


 この家は大きいので会議に使うことも問題なくできた。


「それで、アトス君は何をしようと思っているんだい?」


 俺を挟んで反対側の隣にいたエルネスがそう話しかけてくる。


「アトスさんがやることなら何でも応援しますけど、私は薬作りくらいしかできないですよ?」


「アトスってば何を考えているんだか、俺には分かりかねるぜ!」


 リコリスとカイがそんなことを言う。

 まあ、俺が今考えていることはやってもいいことなのかと思っているけど、もしダメなら諦めるつもりでいる。


 俺はアーティファクトを空間袋から三個程取り出して床に置く。

 まだテーブルなどはないので俺達は床にそれぞれの姿勢で座っている。


「これは、アーティファクトじゃが。一体何をするんじゃ?」


「今から、アーティファクト同士の融合ともうひとつ試すことがあるから付き合ってほしい」


「融合?……そんなこと、できるの?」


 みんな一様に不思議そうな顔をしていたが、俺はアーティファクト同士の融合ということをまず試す。


 三個のアーティファクトに俺の創造の力を注ぐイメージをする。

 いろいろやっていくうちにイメージをするともしかしたら合成なんかができるかもと思った。

 それこそ創造の力をフルに使えるということになるかもしれないし。

 合成する理由は浄化されたアーティファクトは複数組み合わせるとさらに能力が発揮できるかもしれないと言うバカみたいな考えだ。


 それぞれのアーティファクトは空中に浮き光輝きながらクルクル回転を始める。


 これは魔法名などないので本当に俺の想像力と精神力だけを使ってやっている。


 回転しているアーティファクトは徐々に三個を起点とした空中の真ん中に近づいていく。

 そして、それぞれが結合を始める。

 結合が終わるとアーティファクトは三個が一個になり、手のひらいっぱいに広がるくらいの大きさの白い水晶、アーティファクトになった。


 それを見たリコリスが目を見開く。


「アーティファクトの合成?!アトスさん、そんなことできたんですか!?」


「魔法名……ないんだ。じゃあ、ジオグラードよりもすごい?」


「俺もこんなにうまくできるなんて思ってなかったけど、できたみたいだ」


「これは驚いた。アトス殿はやはり普通の人間ではないのじゃな」


 みんなそんなことを言う。

 女性達には話したが、カイを除く他の人物にはまだ俺の正体などは話していない。

 こっちはそのうちやることにするけど、今は他にやりたいことがある。


「でな、さらにこれにみんなの知識を乗せて諜報部の人物を一人、創造しようと思ってる」


「それってもしかしてアイーシャにやったのと同じように?」


「うん、もちろん、人間を作るわけではないから俺の妄想なんだけど」


 俺は魔力で作られたあの神聖魔法軍団のことを思い出していた。

 生前小説家だったのならば、なんとか人の形を持つ存在を作れるかもしれない。

 これがもうひとつのやってみたいことだった。

 正直死神に対する挑戦状とかネクロマンサーと同じことやってないか?とか思ってるけど、現状各国の動きが分からないのは国としてマズイ気がするのだ。


「アトス殿が言うならば、我々は反対しませぬがアトス殿は大丈夫なのですか?」


「まあ、なんとかなる。そう思いたい」


「大丈夫?……無理にしなくても、いいと思うよ?」


「ああ、ありがとうな。でも俺のやってみたいことだから気にすんな」


 というわけで、アーティファクトにまた俺の魔力を注ぐ。

 アーティファクトは俺の手のひらの空中に浮き、今度はふわふわ浮く。


「じゃあみんな、順番にこのアーティファクトに触れてくれ。

 触れるだけで大丈夫だからよろしく頼むよ」


 これは俺の魔力を通してみんなの記憶をアーティファクトに共有するだけだからみんなは触れるだけでいいはずた。


 俺の言葉にまずカイが触れる。

 事故を心配してカイが一番最初に来てくれたみたいだ。

 特に何が起こるわけでもなく、問題なく記憶をアーティファクトに注げたようだ。

 俺に対して記憶の共有をしているわけではないのでカイの記憶は俺には流れない。


 問題ないみたいだったので、順番にノルン、リコリス、レスリ、エルネスと続く。

 そして、全員が触れ終わると俺はイメージを始める。


 イメージ。

 魔力で動く体。アーティファクトを基幹として新たな人格を形成する。

 記憶を合成、矛盾のない純粋な知識として再構築。


「バースノルジカ・アーティファクト!」


 俺の精神力が過去最高に使われる。

 うん?これマズイな、気絶しそうだ。

 精神力がガリガリと減っていく感覚がよくわかる。

 人物創造なんてやはり普通の人間ができることじゃないな。

 俺自身ここまで精神力を消費するなんて全く思ってなかったので、驚いた。


 だが、そんな考えをよそに、アーティファクトから澄んだ声が聞こえてくる。


「疑似人格形成。基本人格をアトロパテネスに設定。魔力固定。疑似魂魄形成。魔力流出永久停止。アトス・ライトニングをマスターと設定」


 これまで以上に長い言葉を言っている。

 なんだって?基本人格をアトロパテネスに設定?

 神様降臨すんの?マジで?


 そんな考えをしていたが、魔法が終わったのを確認してすぐにどんな姿かもわからない状態のそれを見ることなく気絶した。


          ☆


 目が覚めた。

 どうやら床に寝かされていたらしい。

 ひとまず体を起こすと、俺に丁度背を向けているリコリスがいた。


「ああ、リコリス?」


 俺の声を聞くとビクッとしてこちらをみる。


「ア、アトスさん!目が覚めたんですね!どこも異常はないですか?」


「うん、そうだけど、なんで泣きそうな顔をしているんだ?」


 リコリスはこちらを見て俺の声を聞くなり泣きそうな顔をしていた。

 なんだろう、なんかしたのか俺?


「だ、だって二日も目を覚まさないなんて、このままだったらどうしようってみんなで話していたんですよ!?」


「ふ、二日?!マジで?」


 あの人物創造はかなり危ないものだったらしい。

 まさか二日も寝込むことになるなんて思ってなかった。

 よく廃人にならなかったな。


「ええ、みんなで交代しながら看病していたんですよ?もしかしたら意識が戻っても廃人だったりとかいろいろ考えたんですからね!?」


 ということは今は丁度リコリスの番だったのか。

 リコリス達には怖い思いをさせてしまったらしい。


「えっと、ごめん。あそこまで精神力を消費するなんて全然思ってなかった」


 そんな話をしていると、家のドアを開けて見たことのない人物が入ってきた。

 白髪で執事服を着た口の上に髭がある背の高い人物。見た目的には男性だ。

 誰なんだろう、あんな人物この国にいなかったはずだけど。

 その執事服を着た人物は俺を見ると近づいてきて、片膝を床につけもう片足を立てて、胸の前でグーを作り頭を下げる、あの礼儀作法をした。


「アトス様、お目覚めになられたようで何よりです」


「えっと、誰?」


 そう聞くとその執事服の人物は驚きに目を見開き、慌てて頭を上げて声をかけてくる。


「なんと、私のことをお忘れですか!?アトス様より生み出された者です」


「もしかして、アトロパテネスが基本人格の?」


「その通りでございます。私、アトロパテネスは本来は女神なのですが、今回現界するにあたってメインとなった知識は男性の記憶が多かったため、こちらの姿の方がやりやすいと愚考し、こうしてこの姿でやって参りました」


 アトロパテネスって女神なんだ。それは初めて聞いたな。

 それよりも本当にアトロパテネスがこの世界に降り立ったのか。


「そ、そうなのか。えっと名前は?」


「私はまだ名前をもらっておりません。ですからアトス様が目覚めたら名前をいただきたいと。アトロパテネスでは名が知られ過ぎていますので」


「そっか、うん。確かにそのままだとマズイか、じゃあ何がいいだろう」


 その光景を見ていたリコリスも一緒に考え始める。


「本当にアトロパテネス様だったら変な名前じゃだめですよね?」


「いえ、リコリス様もアトス様の友。そして、私の愛するこの世界の住人、嫌だとは言いません」


「ホントに神様なんだな、目線がひとつ上の領域だ」


 それにしてもアーティファクトを主軸にしているからやっぱり一部とはいえ神なんだろうな。

 でもあんまり嫌な感じがしなかったので、いい神だったんだろうなと思った。


「時空神だったら時魔法のクロノスから取ってクロノでどうかな?」


「あっ、いいですね、それ!私も賛成です」


「承知いたしました。では私は今後クロノと名乗ることにいたしましょう。時空神ですがこの世界の住人として生きられるのは嬉しいものです」


 とクロノと名付けた彼は嬉しそうな顔をしていた。


「それで、諜報部としての役割を期待されたとか。ならば、早速情報収集を始めるために出発しようと思いますが、よろしいでしょうか?」


「いいけど、連絡方法は?」


 諜報しても連絡が届く時間が遅くなると意味がない。

 情報は鮮度が命だ。


「それは安心してください。アトス様と私は思念で通話ができるので遠方にいても即座に情報を渡すことができます」


「そうなんだ。じゃあ頼んだ。諜報部はこれからどうにかして人数を増やすけど、無理はしないでくれ」


「もちろんです。神ですが、この世界の住人として現界させて頂いた以上、私もむやみに命を落とすようなことはいたしません。私もこの世界で生きてみたいですから」


 そう言うとクロノは立ち上がって、外に出る。

 俺とリコリスも見送ろうと外に出る。


「では行って参ります。情報をお待ちください」


 そう言うと、カイと同じ速度で走って行ったのであっという間に姿が見えなくなった。


 なにあの速度?!あんな速度で走れんのかよ!


 あれって、アーティファクト三個使ってるから性能が未知数なんだよな。

 でもあれを見る限り、大丈夫だろう。


「あっという間でしたね。すごいです」


 こうして、フォクトライト自由連合に神が諜報部として降臨したのだった。

 それはそうとして、廃人にならなくて本当によかった。



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