表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/159

第四十九話 魔道国事件 その一

 フォクトリア大平原付近の空域。

 マジェス魔道国。


 まだ国が作られているなんて全く知らない私は、平原の中央に木材でできた家がそこそこの数あるのを目撃した。


「フォクトリア大平原って町とか村とかないんじゃなかったかしら、ミュリン?」


 大陸の端からフォクトリア大平原を見ながら脇にいた助手のミュリンにそう聞いてみる。


「ええ、確かにそのはずでしたけど。いくつも家がありますね……」


「あのアトスって男の子がやってるのかしら?」


「どうなんでしょう?もしかしたらアルデイト王国がついにあの草原の開発に着手したっていう可能性もありますけど」


「でも、アルデイト王国から来た人の話によれば、あの草原の開発は赤字にしかならないからこの先もそれはないだろうって言われていたわよね?」


 私が聞いた話ではそんな話だったと思うけど。

 でも、目の前の光景は嘘ではない。


 景色に気を取られていると、マジェス魔道国のさらに上空から白い光を放つ謎の物体が複数落下してきたのを私は見つけてしまった。


「え?なにあれ」


「もしかしてアーティファクトと呼ばれるものでしょうか?」


 ミュリンも見ていたようで、地に落ちたそれをみていた。


「近づいてみますか?」


「アーティファクトなら私も欲しいところだったから行ってみましょう!」


 噂には聞いていたけど、アーティファクトは使えば神級以上の力を使えると聞いた。

 もし本当ならあのアトスって少年みたいなことができるかもしれない。

 期待に胸を膨らませ近くに来てみると、その白い物体は複数あったがどれも砕けた形の欠片だった。


「こんな小さなもので本当に力を使えるのかしら?」


「どうなのでしょう?でも噂の中には悪い影響も出ることがあると聞きましたから注意してくださいね?」


「大丈夫よ!悪い影響が出たならそれも制御してみせるわ!もし失敗したら、アトスにでも助けを求めなさい。あの人ならなんとかしてくれるはずよ」


 自分でもどうかと思ったけど、彼ならばどんな状況にあっても事件を解決してくれるはずだと何の根拠もない自信があった。

 意外にも私はアトス・ライトニングという少年が気に入っているらしい。


 口には絶対に出したくはないわね!

 だって恥ずかしいじゃない!


 ミュリンは心配そうな顔をしていけど、私は何も考えずにその欠片に触れてしまった。


 次の瞬間、アーティファクトは黒く変色する。

 さらに周りに落ちていた欠片も黒く変色して何個かのアーティファクトはひとつの黒い塊になる。


「え?なに、これ」


 頭の中に声が響いてくる。

 どうやら女性の声のようだ。

 その声は少しの悲しさと寂しさを感じる声で私に話しかけてくる。


(……ごめんなさい。私の、最愛の人の……願いを叶えるため……あなたの体を借りるね)


 邪悪な声ではないけど、明らかに悪いものの予感がした。

 直感がこれは邪神だと言っていた。


「待って!どういうことなの?!」


 そこまで言って私はとっさに精神防御魔法を使ったけど、簡単に突破されてそのまま意識を失った。

 まるで暗い海に沈んでいくような感覚だった。


「え?シャーリー様?!」


 ミュリンの声は私には届かなくて、そのうちに私の体はいばらに包まれる。

 私が覚えているのはここまでだった。


          ☆


 シャーリーを包んだいばらから触手が出てきたので、私、ミュリンは急いでその場を離れた。

 走って研究棟に避難し、何かあったときに使う用に作られていた魔法都市全体を包む魔法障壁の魔法を刻印した魔法石を起動させる。

 その後に駐屯していたドラゴン輸送の人に頼んであの家が並んでいるフォクトリア大平原へと向かった。


 エルフの勘なのか、あれは危ないものだと直感が言っていた。

 私の手に負えるようなことではないと瞬時に理解してしまった。


          ☆


「あれはマジェス魔道国の空中大陸ですね」


 家から一緒に出てきたリコリスがそう言う。


「マジェス魔道国?それってもしかして世界最強の魔法使いがいるっていう?」


「そうです。なんでこの空域にいるのかは住んでいる人達に聞かないとわかりません。でもただ浮遊しているだけの可能性もありますけど」


 もし用があるとしたらなんの用なのかな?


 そんなことを考えていたが、視力の良いこの目が遠くからドラゴンに乗っているライダーとエルフの女性らしき人影が近づいて来るのを発見した。

 それはどんどん近づいてくる。

 雰囲気からしてただ事ではなさそうだ。


 ある程度近づいてきてリコリスも気づいたようだ。


「あれは、ドラゴン輸送?」


「ドラゴン輸送なんてのがあるのか」


「ええ、ドラゴンライダーで構成された騎士団を退役した人達が始める次の仕事らしいですけど」


 そういえば、ドラゴンとドラゴンライダーをみるのは初めてだな。


 みるみる近くなったそれは地面に着陸する。

 そして緑のショートヘアのエルフの女性が慌てて降りて声をかけてくる。


「ここにアトス・ライトニングさんという人はいますか?!」


 何やら焦っているようだったので俺はその子に近づいて声をかける。


「アトスなら、俺だけど」


「ああ、あなたは!確かにアトスさんですね!お願いです!私の主を助けてください!」


 いきなり何を言い出すんだろうこのエルフ娘は。


「待って、落ち着いて、なんのことか全然分からないから」


「すみません。どうしても急なことだったので」


 エルフ娘は深呼吸をして息を整える。


「私はミュリン。ミュリン・エスペラート。あのマジェス魔道国の主のシャーリー・マジェスタ様を助けて欲しいのです」


「シャーリー・マジェスタ?」


 一緒に来ていたリコリスが驚きの表情をしながらそう言う。

 有名な人なんだろうか?

 というか、魔道国の主ってもしかしなくても世界最強の魔法使いってやつかな?

 イメージ的には老婆なんだけど、違うのかな?

 魔法って生涯研究して実力をつけていくようなイメージなんだけど。


 俺の小説でも魔法研究に人生をかけた人物は作った記憶があるし。

 まあ、俺は結構特殊な立場だから魔法については分からないけど。


 何事かとノルンも近くに来ていたらしく、会話に入る。


「マジェスタって……たしかジオグラードの名字、だった……はず。どういう、ことなの?」


「その辺りの話は私の主を無事に助けられたら教えます」


「なんかよく分からないけど、助けるってなにから助けるんだ?」


「シャーリー様は空から落ちてきたアーティファクトに興味があったみたいで、その欠片に触れたら欠片が突然真っ黒になって、シャーリー様はいばらに包まれてしまったのです」


 またアーティファクトに触れてしまった人がいたのか。

 確かに、噂では危ないものだって話はあんまり聞かなかったしな。

 そうしたら、危ないものだっていう話も広めないといけないかもしれない。

 じゃないとこの先も被害者が後を絶たないだろうし。


 うちの国にも諜報部みたいな組織が欲しいな。

 あのマジェス魔道国の接近も気づかなかったし。


「なるほど、話はわかったけど、どうすればいい?」


 そう言った瞬間に空中大陸から何かが落下してきたのを見てしまった。


「あれはなんだ?」


「私にも分かりません。ノルンちゃんなら分かるかもしれませんけど」


 ミュリンと名乗った人もその方向をみる。


「あれです。あれからなんとかシャーリー様を助けて欲しいのです!」


 あれって、触手生えてるよね?

 食人植物みたいな感じだけど。


「ノルン、アーティファクトを使ってあれの詳細を調べてくれ」


 ひとまず、リコリスの言う通り、ノルンにあれの構造を見てもらうことにした。


「わかった」


 カイと女性達にはアーティファクトをそれぞれ持たせている。

 今あるアーティファクトは六個なので一個余りで全員に持たせている。

 ノルンが合体を行うとあの澄んだ声が聞こえてきた。


「視力強化、完了。観察眼、鑑定眼、神級、解放」


 ノルンの目が、左目光輝く金色と、右目碧眼になる。


「……すごい魔力反応。あのネクロマンサーより……高い魔力の流れ。複数のアーティファクトの反応も……ある。でも……あの植物の奥深くにコアみたいなものがある。これは、人?!」


 ノルンが驚いていたので恐らくはあの植物は欲望とは別の、人体をコアにすることによって成り立っているらしい。

 これはまだ経験したことのない現象だな。

 しかも複数のアーティファクトを取り込んでいるのか。


「気をつけて、あの触手は人の生気を吸い取るみたい。魔物ランクは間違いなく神級より上かもしれない」


「神級より上のランクですか?!」


 リコリスが驚いた顔をする。


 神級より上か。もはや定番すぎるな!

 それは死王国動乱の時と同じくらいの強さなのだろうか?

 しかし、あのネクロマンサーより強いとなるとあの時よりキツいかもしれない。


 その光景をみていたミュリンは不思議そうな顔をする。


「あの子が使っているあの白い水晶。アーティファクトですか?」


「そうだよ?ただし多分邪神の干渉を受けないように浄化されているはずのものだけど。そうだ、君にも渡しておくよ」


 そう言って俺はミュリンにアーティファクトを差し出したけど、ミュリンは触れようとしない。


「私はまだ信じられないので遠慮しておきます。シャーリー様と同じようになりたくないですから」


 話を聞く限りミュリンが見た白い欠片はやはり邪神の干渉を受けてしまったらしい。

 エルネスとの戦いの時もエルネスはそんな記憶があると言っていた。


 一方、俺が手にとってあの水晶の形状にしたものはこれまで一回も邪神の影響を受けていない。

 ならあれは魔法学校を助けた時も考えたが俺が手に取ると浄化されるということになるはずだ。


「なるほど、ノルンありがとう」


「……いい、私、は……アトスの役に立てれば、嬉しいから」


 ノルンは頬を少し赤くさせて俺には見えないように顔を背けてそう言う。


「さて、それじゃあシャーリーって奴を助けるとするか」


「やれることは少ないですけど、私の魔法障壁が必要になったら声をかけてくださいね!」


 リコリスの言葉にうなずきながら俺は腰の魔剣を抜く。


 どんな人物か分からないけど、アーティファクトが関わってるなら放置はできないしな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ