第四十八話 雨だー!曇りだー!
次の日。
俺は木で作られた家で休むことができたが、布団とか、ベッドがないのでやっぱり体が痛かった。
次はベッドとか布団とか用意しないといけないかなこれは。
建国するとかふざけたことを言い始めたのは誰だったか。
……俺だったな、そういえば。
分かっていたはいたことだが問題は山積みだ。
あの水力発電の電気をどう供給するか。
家を建てたのはいいが、寝具のようなものも考えないといけないしな。
さらにはまだ警備隊と俺についてきた仲間達とゴブリン以外にまだ人が来ないのだ。
これは時間がかかりそうだから放置するしかないが。
他にはこの地域で作れる貿易品のこと、森で見つけた稲の栽培場所の確保。
さらにはアーティファクト集め。
これは何か事件が起きないと悔しいがこちらからは動けないので保留かな。
やることが多すぎるので俺は少し疲れていた。
考えていても仕方ないのでとりあえず外に出る。
気づいていなかったが、この世界で初めてとなる雨が降っていた。
ポツポツと音を立てて雨が落ちる。
今日は外の仕事はできないか。
やっぱり晴れるか曇りじゃないとな。
俺が住むことになった家は他の家よりも大きく、セブルスが、
「国主、あるいは代表のような立場ならひとまずはこのような大きさの家に住んでください」
と言ったのでそうなった。
俺は普通の家で良かったんだけどそうもいかないらしく、他の人達も特に反対することもなくむしろ住んでくださいと必死に言われたので仕方なくだ。
まあ、確かにそんな立場ならこんな生活をしないとこの国は貧しいのではと思われるのかもしれない。
それはいいとして、何をしようかな?
「雨となると暇だよなー」
ちなみに、家にはまた窓がない。
そりゃあガラスを生産するなんてまだこの国ではできないからな。
でもガラスっていうのは砂とか石を細かく砕いたりして粉状にして加工すれば簡単に作れる物質のはずなので、今すぐにでもできると思う。
そうだ。湖の砂を採取して、火魔法で加工したらガラスできないかな?
雨だとしても俺には雨避けにもなるはずの魔法障壁があるので湖に潜ってみるか。
「そうと決まれば、行動だ」
マジックウォール・オートを使って外に出てみると、思った通りで雨は円形の魔法障壁を伝って下に流れ落ちる。
俺の体は全く濡れていない。
ということで、湖へと向かう。
到着するなり湖に入ってみると、魔法障壁のおかげで湖の底を地上を歩くのと同じように歩けてしまった。
なんだろう、水族館の水槽全体を見れるあの通路を思い出した。
魚が気持ち良さそうに泳いでいる。
本当に水族館みたいだ。
「キレイだなー」
俺は当初の目的を頭の隅に追いやって、湖の底に体育座りをしてぼーっとその光景をみていた。
そういえば、転生してきてからのんびりすることってなかったな。
俺の頭上にある湖の水面は雨があたって波紋が絶え間なくいっぱいできていて、なかなか幻想的な風景だった。
「キレイだなー」
二回目。
それしか思い浮かぶ言葉がなかった。
むう、なんか現実逃避をしているような感覚だな。
ひとしきりその光景を頭を空っぽにして眺めていたが、いつまでもそうしている訳にもいかないので砂の採取を始める。
湖の底は柔らかくてキラキラした砂でできていた。
どんな砂がいいのか俺は詳しく知らない。
だから本当に火魔法でガラスができるのか謎ではあったけど、試行錯誤してみるのもまた楽しそうだ。
砂は空間袋にどんどん放り込んでいく。
そして、ある程度の砂の採取を終えると家に帰ってきて、家の一角の床と壁に耐火魔法をかけて、採取した砂を空間袋から少し出してその場所に置き火魔法を砂にかけて続けてみる。
かなりの高熱にしないと溶けないはずなので火力強めのイメージで火魔法をかけた。
すると、砂はドロドロに溶け始めて、液体になってきたのでその液体になった物体を重力魔法を使って薄く伸ばしていく。
加工する道具があればこんな複合魔法を使う必要はないので、魔力の無駄遣いだよな、これ。
伸びきったところで今度は水魔法でゆっくり冷やす。
「さて、どんなもんかな?」
冷却した板状の物体をみると、透明なガラスができていた。
おお、成功だ!やったぜ!
採取した砂はまだあったので、その日はほとんど一日ガラス作りをしていた。
次の日。曇りだった。
作業するのには問題ない天気だな。
俺は昨日加工したガラスを張るために、家の一部を切り取ってガラスをはめ込んで、外れないようにそのガラスの周りに切り取った木材を加工してくっつける。
「よし、これで窓ができたな」
それをみていたらしいゴブレが話しかけてきた。
「おはようッス!なにしているッスか?」
「ん?ああ、ちょっとガラスを試作してみたから窓を作ってみた」
「ガラス?窓?オイラの集落にはなかったッスね」
確かにゴブリンの集落は現代世界で言えば縄文人が住んでいたような形の家だったけどさ。
そこにリコリスがやってくる。
「わあ、ガラスですね!どうやって作ったんですか?」
「えっと、昨日湖の底の砂を使って作ってみたんだ」
「アトスさん、すごいですね!ガラスって王都以外だと海に近い国しか作れないものですよね!」
それは知らないけど、確かに海の砂浜とかは湖の底にあったあの砂と似ているんだろうな。
この世界の海とか行ったことないけどね!
「そうなんだ?ちなみに参考に聞きたいんだけど、ガラスってどうやって色とか耐久性あげてるのか知っているか?」
「えっと、色をつけたい場合は確か加工段階で色を混ぜるって聞きました。耐久性は、ごめんなさい、私にはわからないです」
リコリスは残念そうな顔をしているが、色を混ぜるというのは初めて聞いたので、収穫かもしれない。
「いや、ありがとう、参考になったよ」
と俺が言うとリコリスは少しだけ頬を赤くしながら嬉しそうな顔をした。
「リコリスさんって、アトスさんが好きなんスか?」
「ちょっとこっち来ようか!」
俺はゴブレの言葉が終わる前にリコリスから離してそう言う。
「なんスか?」
「確かにリコリスは俺のことが好きらしいが他の男性がましてやゴブリンが踏み込むんじゃないぜ!」
「なんかよく分からないスけど、アトスさんがそういうならそうするッス」
ふう、聞き分けのいいゴブリンでよかった。
リコリスが声をかけてくる。
「なんの話をしているんですか?さっき私に話しかけていたような」
「いや、何でもないッスよ!じゃあオイラは仕事に戻るッス」
ゴブレは俺の言葉通りに行動して俺達から離れていった。
「今日はなにしようかって話をしていたんだ」
「そうなんですか?あっ、そうだ!アトスさん、ちょっとついてきてくれますか?」
「?まあいいけど」
なんだろう?
俺はリコリスの後ろについて歩く。
リコリスに割り当てられた家だと思われる場所に来た。
「あの、フォクトリア湖の水と、あそこに生えた魔生花を混ぜてポーションの試作を作ってみたんですけど、どれくらいの効果があるのか見てほしくて」
そういえばリコリスは薬屋の資格を持っていたんだったな。
リコリスの家に入ると薬の匂いがした。
「へえ、なら結構効果ありそうだけど」
「あの水と魔生花を混ぜたポーションなんですが。アトスさんに一番に試してみて欲しくて。もしちゃんとした効果があるなら交易品にしてもらおうかなって考えてました」
リコリスは顔を赤くしてそう言う。
「気絶したりしないよね?」
「大丈夫です!昨日入念に私が試しましたから」
昨日はリコリスは恐らく一日中薬作りをしていたんだろうな、これは。
でも、もしなんか悪い効果があったら危なくないかそれ。
俺がいつも近くにいるわけではないし。
「そんな危ないこと、一人でするもんじゃないと思うけど」
「いえ、昨日はノルンちゃんとこのポーションについていろいろ話しながら調合していて、もし何かあったら真っ先にアトスさんのところに行くようにってノルンちゃんと約束しましたから」
ということは昨日はリコリスとノルンは一日中あのポーションを研究していたんだろうな。
俺はガラス作りしかしてないけど。
「そっか、ありがとうな、リコリス」
そのポーションは真っ青な液体の色をしていた。
「そういえば、薬作りの道具ってどこから持ってきたんだ?」
「え?王都を出るときにバッグに簡単な道具をいくつか選んで持ってきたんですよ」
「そうなんだ。さて、それじゃあそのポーション貰うよ」
リコリスはうなずき、持ってきたカップにポーションを注ぐ。
俺はそれを受け取って飲んでみる。
意外と味は悪くない。結構甘いな。
砂糖でも入れたんじゃないかってくらい甘い味がした。
少し後に、いろいろな疲れが吹っ飛んでいくような爽快感が体を包む。
心なしか頭までスッキリするようだった。
「味も悪くないし。全然何本でも飲めるよ、これ」
これなら貿易に出しても問題ないんじゃないかな?
と言っても、どれ程の効果があるのかまだ不透明なので実地試験をしないといけないかな。
「そうですか。良かったです!あとはなんとか安定供給しないといけないですね」
とりあえず、効果はありそうなので交易品の候補として実地試験をしながら真面目に考えてみるか。
と思っていたが、何やら外が騒がしい。
なんだろうか?
俺とリコリスは家の外に出ると、みんなは同一の方向を見ていたので、つられて見てみる。
――大陸が空に浮かんでいた
え?何あれ!?あんな大陸あるの?!




