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第四十六話 敵意のない魔物との話し合い

 次の日。

 土の家の寝心地は最悪だった。

 なぜって草原の土の上に家を作ったので、土の上に寝るようなものだったからだ。


 体が痛いぜ!


 しかも、警備隊の人達も含めて寝ていたので、あの広さでありながら狭いというのが率直な感想だ。


 と、そんなことを考えていても仕方ないので、外に出てみる。

 今日もいい天気だなー。


 そういえば、俺が転生してきてからずっと晴れているような。

 この世界に来てから雨なんてものを見たことがない。


「雨降らないのかな?」


 とりあえず、そんなことを言いながら俺は伸びをする。

 そしてあくびをする。

 むー、寝たりない。


「よう、アトス。おはようさん」


 同じく家から出てきたカイが俺に話しかけてきた。


「ああ、おはようカイ」


 その会話の後に次々と土の家から警備隊の人達も出てくる。


「アトス殿、カイ殿、おはようごさいます!本日も頑張りますぞ!」


 元気だなー、セブルス。

 朝に強いんだろうな、あの人。


 ひとまずフォクトリア湖に歩いていき、水で顔を洗う。

 女性陣はもうすでに朝食を作っていた。

 むう、さすが女の人だ。男性よりしっかりしている。

 この大所帯なので、警備隊の人達も手伝っていた。


「あっ!おはようなのだ!アトス」


 歩いてきた俺をいち早く見つけたシルキーは手を振りながら声をかけてくる。


「ああ、シルキー、おはよう。昨日はちゃんと寝られたか?」


「うん、よく眠れたのだ!獣王国ではこんな土の上に寝ることもよくあったから、普通に寝たぞ!」


 獣王国って謎な生活しているな、相変わらず。


「ふみゅー、おはよう、ダーリン」


 セレスティはまだ眠そうな顔をしていた。


「おはよう。なんだセレスティ、寝坊助さんか?」


「死神は朝に弱いんだー。僕は天界にいた頃はまだ寝ている時間だから」


「その割には昨日は横になるなり眠っていましたけどね、フフフ」


 そんなセレスティを見ながらリコリスは少し微笑みながらそう言う。


 そんな朝の光景もあったが、ノルンはまだ寝ているらしい。

 この場にはいなかった。


「ノルンは?」


「昨日、手持ちの本を読みながら夜更かししていたので仕方ないかもしれないです」


「どんな本だ?」


 ノルンがそこまでして読む本とはなんだろうか?


「えっと、確か経済の本って言っていたような。アトスさんの役に立ちたいって言っていましたから」


 そっか、ノルンも自分ができることをやっているんだな。

 後でお礼を言っておこう。

 みんなそれぞれできることをしてくれているらしい。

 それが嬉しかった。


         ☆


 朝食を食べ終えると俺達は加工した木材を組み立てていく。

 警備隊の中には建築に詳しい隊員がいたので、その隊員の指示で動いている。


 今日の朝食はなんだったのかって?

 ヴァレッタ村から持ってきていたパンと昨日の塩焼きのアーユだ。

 俺としては少し物足りなかったが、今食べれるのはこんなものだろうから、文句は言いたくない。

 食べれるだけで感謝しなくては。


 それはそうと俺は気になることがあったのでカイに聞いてみることにした。


「そういえば、前に聞いたこの辺りにある魔物の集落ってどこにあったんだ?」


 前にカイがそんなことを言っていたはずなので気になっていた。

 今もあるか分からないと言っていたが。


「ん?あの森林の近くにあるはずだが、今もあるのかどうか」


「家の組み立ては警備隊の人達に任せればなんとかなりそうだから、俺は建国目的のために動こうかなって」


「それって敵意のない魔物とのってやつか?」


 俺はカイの言葉にうなづく。


「近くにいるならまず確認がてら行ってみようかなって」


「いいんじゃないか?案内は俺がするから行ってみようぜ?」


 そんなわけで、セブルスにその旨を伝え、俺とカイは魔物の集落に向かうことにした。


         ☆


 それで、森林から少し離れた場所に歩いてきたわけなのだが、魔物がいたと思われる場所には木とか草で作られた家があって、小さい村みたいな集落があった。


「人の気配がある」


 俺はその気配を感じていた。

 まあ、人じゃなくてこの場合は魔物の気配だろうが。


「へえ、まだあったんだな、この集落」


 集落の入り口らしき場所を中心に左右に集落を囲むようにかなり乱雑に柵が作られていた。

 その入り口にはゴブリンの門番と思われる二匹がこちらを怪しいものを見る目でこちらをにらみ、いまにも戦闘態勢に移ろうかという状態になっていた。


「トマレ!オマエラ、ナニモノ?」


 片言の言葉を言いながらそのゴブリンは警戒している。


「俺達は敵対する人間じゃないし、普通の魔物とも違う」


「カイ・ライトニングって名前に聞き覚えはないか?」


 カイは昔ここに来たことがあるので、そう言ってみたらしい。

 すると門番のもう片方のゴブリンが口を開く。


「ム、カイ・ライトニング、知ッテイル。昔、ココニ来タ、少シ待テ、長老ニ、話ス」


 そう言ってそのゴブリンは集落の中へと入っていく。

 少しの時間の後に、年老いたような姿の杖を持ったゴブリンが門番のゴブリンと歩いてきた。


「オオ、アナタハ、カイ様!」


 その長老は目を輝かせて俺を見る。

 ごめんね、今はカイじゃないんだ。

 それにしても、カイがここに来たのは一体いつなんだろう。

 この長老はカイを知っているようだが。


「あー、すまん、今はいろいろあってこっちだ」


 カイは自分の方を指差してそう言う。

 長老は視線をカイに移す。


「ソウナノデスカ?デハ、コチラノ方ハ、風ノ噂デ聞イタ、アトス・ライトニング様?」


 ゴブリンの間にも話が広がっているらしい。

 どうやって知ったんだろう。


「今回ハ、ドノヨウナ用事デスカナ?」


「いや、俺は用事無かったんだが、アトスには用があるらしい」


「フム、先日ノ死王国トノ戦イハ、我々モ遠クカラ見テイタノデ、アトス様ノ活躍ハ知ッテイマス」


 ゴブリン達もあの戦いは見ていたらしい。

 まあ、近くでそんな大きな戦いがあったら気になるのは分かるけど。


「見ていたんだ」


「エエ、我々トシテモ、アノ時ハ内心焦ッテイマシタカラ」


 確かにこの場所は遠からず見つかることになったかもしれない。

 見つかればどうなるかなんてあんまり考えたくないな。


「そうなんだ?それで、今回ここに来た理由なんだけど。

 俺はこれから魔物とも仲良く暮らせる国を作りたいって思ってる。

 だからもし良ければまだ形にもなっていないけど俺の国に来ないか?」


 まだこの話をするには早いかもしれないが素直にそう言う。


「突然デスナ。我々ノ、メリットハ?」


「俺の国での保護を約束する。他の魔物の襲撃に怯えることのない豊かな生活も提供したい」


「シカシ、我々ハ魔物デスゾ?本当ニ実現デキルノデスカ?」


「俺が実現させるように努力しているところだ」


「人間ト魔物ガ、共ニ暮ラセル国ナド、聞イタ事ガ無イデスガ。我々モ昔、ココニ辿リ着クマデ人間ニ迫害サレ、苦労シマシタ」


 やっぱり過去にそんなことがあったのか。

 だとしたら俺が言っていることは信じられないのだろう。


「私ハ信ジラレマセンガ、アトス様ガ嘘ヲツイテイル訳デハナサソウダ」


「こいつは真面目にバカみたいな理想を実現させようとしている。昔のよしみで一度信じてみないか?」


 カイはそう言う。

 こういうとき、カイには助けられているような気がする。

 それに長老とは知り合いらしい。


「デハ、集落カラ数匹、若イゴブリンヲアトス様ノ国ニ行カセヨウ。我々年寄リは疑リ深イ。若イゴブリンナラバ、先入観モ無ク、素直ナ感想ヲ聞カセテクレルデショウ」


 確かに、いきなり来て俺の国に来ないかなんて信じられないしな。

 第一歩としては上出来かな?


 そして、ゴブリンの長老は五匹の確かに年若そうなゴブリンを集落の中から選んでくれた。

 そのうちの明るい感じのゴブリンが話しかけてくる。

 見た感じ、この五匹の中でもリーダーみたいな存在みたいだ。


「ヨロシクッス!オイラハ、ゴブレ。コノ五匹ノリーダーニ、選バレタッス」


「よろしく、ゴブレ。じゃあ長老さん、五匹預かりますね」


「ヨロシク頼ミマス。モシ、アトス様ノ言ウ事ガ本当ダトシタラ私達年寄リモ、ココカラ出テ、アトス様ノ国ニ行カセテモライマス」


「うん、ありがとう。すまない、突然の話で」


 突然の訪問を嫌な顔をせずに真面目に聞いてくれた長老には感謝しかない。

 敵意のない魔物は本当は人間とも仲良くしたいのかもしれない。


「イイエ、我々モ、コノママデハ滅ビ行ク魔物。アトス様ノ夢、叶ウヨウニ願イマショウ」


 その長老を背に俺とカイと五匹はフォクトライト自由連合国へと歩いていく。


 うん、頑張らないとな。



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