第四十三話 伝説、復活してしまった?!
「まさか、ここが中心地だったとはなぁ」
俺は到着したフォクトリア大平原の中心地を見ているわけなのたが、地面に奈落のような大穴ができていた。
何を言っていると思う?
正解は死王国動乱のネクロマンサーを倒した場所だ。
あのネクロマンサーを倒した時にできたこの奈落のような深さの大穴はまだ元の地形に戻していなかった。
あの戦いの直後、俺はカイ、セブルス、リコリスの父親の魂を戻すため、この大穴を急いで出て、そのままここには戻って来なかったのだ。
それというのも、警備隊とか調査団の人達が俺を囲んで、称賛の嵐を送ってきたためそれに対応している内にこの場所に戻る暇がなくなって、そのあとも王宮に呼ばれたりなどしていたからついに戻って来れなくなったのだった。
「いやあ、本当に信じられませんな。これはアトス殿が行ったのだろう?」
この光景を見ながらセブルスは笑いながらそんなことを言う。
後ろにいた、リコリス、ノルンを除く他の二人、シルキー、セレスティが驚きの表情をする。
「ほわー、すごいのだ!一体アトスは死王国との戦いでどんな戦いをしたのだ?オイラの国の貿易管理する場所にいる戦士達はこんなことできないのだ!獣王様ならできるかも知れないけど」
「報告には聞いていたけど、ホントにダーリンは規格外なんだね。死神の僕もびっくりだよ」
シルキーは耳としっぽをパタパタしながら目をキラキラっとしながら俺を見る。
うむ、今日も良いもふもふ具合だ。後でもふろう。
セレスティはそこまで驚いている反応ではなかった。
セレスティは2000年も生きているそうなのでこのくらいはどこかで見たことがあるのかもしれない。
「ネクロマンサーと戦った時のやつだな。暇がなくてそのままだったんだ」
「ネクロマンサーか、それは僕達に対する挑戦状だったのかな?」
セレスティは考え込む仕草をする。
そういえばあの戦いの時、死神の気配なんてなかったけど。
ネクロマンサーとは魂を弄ぶ魔法使いであってるだろうが、死神は魂を天界に導く役目のはずたからネクロマンサーとは敵対関係になりそうなものだけど。
「そういえば、死神はなんで動かなかったんだ?」
気になったので聞いてみることにする。
「んー、死神としてはそこにいるカイとか、セブルスとかの魂を刈り取る“時”はまだ来ていなかったんだけど、僕達死神はこの世界に定期的な調査に来ていた下級天使からの報告を受けて初めてこの事件のことを知ったんだ」
それならばある程度は納得するけど。
「でもネクロマンサーはどうして放っておいたんだ?」
「あのネクロマンサーの魂は魔神によって巧妙に隠されていたみたいだったからね。
僕達は基本的に魂を刈り取る時は魂の在りかを探知して行動するけど、魂が隠されていると存在を認識できないんだ、だから何の行動も起こせなかった」
死神って不便なんだな。
でもそれならば、あの戦いに介入できなかったのも分かる。
死神からすれば寝耳に水の状態だったんだろう。
「魔神が絡むと僕達はほとんど何もできないんだ。だから魔神自身がどこにいるか、何柱で行動しているのかも分かっていない」
待て。
ならば邪神、いや魔神とするけど、あの魔神だけではないということか?
柱というのは神の数え方だと生前の知識にはあるが、何柱ということは複数犯の可能性もあるのだろうか?
「魔神ってのは一柱だけではないのか?」
もし複数だとすると、あの邪神だけに構っている訳にはいかなくなる。
「いいや、魔神は本来一柱だけのはずなんだけどね。今この世界には複数の魔神の干渉があると下級天使の報告で確認され始めている」
「……なんだって?」
複数の魔神の干渉があるだって?!
「そして、ある報告ではその背後にさらに強大な魔神達を統べている本当の魔神がいるかもしれないと言われている」
またややこしい話になってきたな。
アトロパテネスを復活させるなんて簡単に言ったけど、なかなか道は険しそうだ。
「そうなのか」
俺は上の空でその話を聞いていた。
考えていたより大きな黒幕がいるらしい。
「今は起きる出来事に対応するしかないから、動きようはないかな」
「確かに、動きがつかめないからどうしても後手に回らざるを得ないね」
俺の言葉にセレスティは同意する。
それに今は俺も国を作るという目的もあるため、何も起こらなければ動けない。
それはそれでなんか嫌だけど仕方ないのかな?
ふとネクロマンサーだった男性の顔が頭をよぎる。
仕方ないなんて言いたくないな、あの男性は俺にアーティファクトを集めてくれって言っていたしな。
できる限りのことはしよう。
でもまずはこの大穴を直そう。
周りはカイとセレスティ以外は穴の底まで見えていなかったが、穴の底にはあのネクロマンサーだった魔道士の残骸がある。
ということで、今回は時魔法で地形を戻すということはしないことにした。
代わりにどうするのかと言えば、土魔法を使うことにした。
あのネクロマンサーの残骸は浄化済みのはずなので、土で埋めることにした。
「みんな、少し後ろに下がっててくれ」
俺がそう言ったので、みんなは不思議そうな顔をしながら言う通りに後ろに下がる。
それを確認した後に穴に両手をかざす。
イメージ。
大量の土が地面を埋めていく光景を。
この大地と同じ成分で作られる土を。
「アースリジェネレーション!」
そう唱えると、大穴に大量の土が積み重なっていく。
俺の両手からは土砂崩れなのかっていうくらいの大量の土が穴に流れていく。
少しの時間の後、あの大穴は完全に元の状態に戻る。
だが、草原のはずなのにいきなり大量の花が咲き始めて、さらには大きな樹木が一本、大穴の中心だった場所に生えた。
「なんだこれ?」
俺はこの草原の土壌の成分と同じくなるように、その土を魔法で再現したつもりだったのだが、どうもイメージと違う光景になっていた。
「すごい……アトスさんはやっぱりすごいですよ!」
リコリスはその復活させた花畑の方に歩いていく。
そして、花の匂いを少し嗅ぐとこちらに振り返った。
「これは、マナが大量にある場所にしか咲かない幻の花ですよ!」
「……すごい、あの花、伝説通りなら……純粋な魔生花だと思う」
リコリスの話を聞いたノルンも花を見ながら目を輝かせている。
俺は何がすごいのかわからなかったので、カイに聞いてみることにした。
「なあ、カイ、あの花ってなんなんだ?」
「ああ、アトスは知らないよな。
魔生花って言うのはずいぶん昔に絶滅した植物で、昔はヒールポーションに使われていて、そのヒールポーションは今ではエリクサーと呼ばれる伝説の回復薬だ」
エリクサーって、ゲームとかでよくあるとんでも超高性能回復薬じゃね?
ていうか、絶滅した植物を復活させてしまったのか!
自分の力にやっぱり驚く俺だった。
「いやあ、アトス殿は本当に底の知れない人ですな!尊敬します」
「さすが、オイラの番なのだ!」
「こんなことまでできるとはね、僕の目に狂いはなかったよ。僕の気に入ったダーリンなだけあるよ」
とか口々に誉めてくるので、俺はちょっと照れた。
俺は普通に地形を戻しただけなのにこんなことになるとは。
その光景をみたエルネス夫妻も驚きの表情をしていた。
その後ろにいた警備隊の隊員達は死王国動乱の時の活躍を知っているから改めて尊敬の視線を送ってくる。
またやらかしちゃったな。
「さて、もうすぐ昼だけど、まず、近くにある森林から木材を作って加工しよう」
ヴァレッタ村で一晩。
その次の日の朝にこうして来たわけだが、太陽はもうすぐ真上の位置だった。
このまま夜までいるのはなんか嫌なので、まずは家を作ろう。
「では、我々の出番ですな!おい、お前たち!アトス殿と森林に向かうぞ!」
セブルスが隊員に向かってそう言うと隊員達は、
「おー!」
と言いながら俺と森林に向かうことにしたようだ。
人手がないよりは全然良いので俺と警備隊は森林に向かうことにした。




