第四十一話 どうしてこうなった?
みんな、ちょっと相談に乗ってくれ!
いきなり何を言っているのかわからないと思うけど、俺を助けてくれ!
といっても脳内で会議するような状態なんだけどさ。
そもそも、誰も俺の考えなんて分からないだろうし。
王宮に戻って来たのは良かったが、目の前にはリコリス、ノルン、シルキー、エミリア、ハーシェル、そして死神娘のセレスティがいる。
俺はリコリスとノルンにすごくジト目で見られている。
「アトスさん?これは一体どういうことですか?」
「アトス……色欲魔神なの?」
「いや、あのね、俺の話を聞いてくれませんかね?」
俺はそのリコリスとノルンに冷や汗と苦笑いを浮かべながら二人を見る。
カイはその俺の光景をニヤニヤしながら遠巻きに見ていた。
「アトスはオイラの夫なのだ!」
「この短期間でこんなにお兄さんが好きな人が増えるなんて、正直引いてるよ」
「俺、あ、いや、私はそんなアトスさんもカッコいいと思うけどね!」
「貴様ら何を言っているんだ?こいつは僕のダーリンだぞ?」
ああもう、収拾つかないぞこれ!
俺は何も悪くないよね?!
シルキーは道すがら助けただけだし、エミリアとハーシェルについてはよくわからないし。
ていうかあの二人はなんでこの話に参加しているんだろうな!
セレスティについてもなんで気に入られたのか分からないし。
「ア・ト・ス・さ・ん?誤魔化さないで下さい!私とノルンちゃんだけかと思ったけど他にも女の人を囲うなんて、破廉恥です!」
リコリスが輪から抜け出し、めちゃくちゃ怖い顔でにらんでくる。
「いや、シルキーはろくでなしから助けてやっただけだし、俺もあの子には困惑しているんだよ」
「そうなんですか?でもシルキーちゃん明らかにアトスさん狙ってますよね?だって絶対にアトスさんと子供を作るって大声で言っていましたし」
リコリスは少し怒りながら恥ずかしそうにそう言ってくる。
シルキーめ、あの話を誰彼構わず言いふらしたな。
でもおかしいな、リコリスってこんなに俺に対して積極的に詰め寄ってくるような人ではなかったはずなんだけど。
好意があることは知っているし、あの宿屋の一件以来完全に好きだと分かったけど。
んー?でも宿屋に泊まる時にグイグイ来ていたような?
そこにノルンも混ざってくる。
他の女の子達は雑談なんかしながら笑いあっているけど。
「私も……アトスは誰にも渡さないつもり、だけど。篭絡しすぎ……だと思う」
「いや、その別にわざとやった訳じゃないんだよ?なぜかこうなってるけど」
「むう……私が、面白くない。これじゃあ……誰にとられても、おかしくない」
ノルンは出会った時よりも表情を表に出すようになったな。
今はノルンは頬を少し膨らませて、私怒っていますってのがよくわかる。
眺める分には可愛いんだけど、その怒りが俺に向くのは仕方ないんだろうな。
「せっかく私かノルンちゃんかどっちにしようかって話で終わったのに、話がまとまらなくなるじゃないですか!」
リコリスの言葉にノルンはうなずく。
これは俺が折れるしかないか?
「すまないな。だが、リコリスとノルンのことはちゃんと考えるよ」
その言葉に二人は顔を赤くする。
こんなことしているとハーレムなんだろうなって気がしてくる。
俺はこんな光景にするつもりはなかったんだけど、スキルのせいということにしておくか。
魅惑の瞳、恐るべし。
そんなことを話していたんだけど、俺の後ろからいきなり首に腕を回すセレスティ。
「正妻は僕なんだからな!死神をないがしろにするのはダメなんだぞ、ダーリン!」
「離れてください、あなたなんなんですか!シルキーちゃんと同じ年齢に見えますけど、まだあなたには早いです!」
リコリスは俺の首に回されたセレスティの手を剥がして、二人して火花をバチバチさせ始める。
「むう、僕は2165歳だぞ?!子供じゃない!」
「そんな歳のおばあさんより、わた、私の方がいいに決まってます!」
リコリスは顔を真っ赤にして、言葉を詰まらせながらそう言う。
いや2165歳だったのか、セレスティ!
え、なにこれ合法ロリってやつなのか!?
というか、カイの年齢越えているじゃん、見た目子供だから分からなかった。
「アトスはオイラのものなのだ!誰にも渡さないのだ!」
シルキーはそんな光景を見て、俺の手を引っ張ってその女子達から俺を抜けさせようとしたが、ノルンが立ちはだかる。
「アトス、は……私の運命の人なの。それにシルキーは……まだ子供」
「愛さえあれば、歳なんて関係ないのだ!」
いやいや、シルキーはアウトだから、完全に。
もう少し、せめてこの世界の成人の歳である15歳まで待ちなさい。
アトスさん、時間だけはあるから。
とかいうけど、それはシルキーを選ぶとかそんな話になるよなー。
難しいな。
俺はハッピーエンド主義だったので、誰かを選ぶことはしたくないんだけどな。
それはここにいる俺が好きな女性達に不誠実ということにもなりそうだけど。
「でも……シルキーは成人してからでも、いいと思うよ」
「それは受け入れられないのだ!獣人は決めたら即行動なのだ!」
この状況だと誰を選ぶとか決めるのはまだ早すぎる気がする。
俺はみんなのことを深く知っているわけではないから、それを決めるのはまだ先でもいいと思う。
「私たちは卒業まであと4年かかるのでその間に誰かに取られないか心配ですけど、一夫多妻は珍しくないよ?」
エミリアが話しかけてくる。
一夫多妻。
それはハーレムと同じ言葉だ。
「私はアトスさんに絶対に嫁になってもらうわ!」
「それ、言葉間違えてるよ。この場合、嫁になるのはハーシェルだよね?それに君。たぶんいつもは一人称違うよね?」
俺が注意するとハーシェルは顔を赤くした。
ハーシェルが口を開く度、明らかに俺って言っていたしきっといつもは違うはず。
「だ、だって普通に話したらアトスさんに嫌われそうだし」
「いや、俺はどんな一人称でも嫌いになることなんてないよ?」
それは本心だった。
人は見た目で判断してはいけないのだ。
「じゃ、じゃあ嫌いにならないって約束してくれる?」
ハーシェルは上目遣いで聞いてくる。
可愛いな。
なんでこの子が俺を好きなのかはいまいち分からなかったけど、こんな子を嫌うはずもない。
「もちろん。時空神アトロパテネスに誓って」
アトロパテネスがどれ程の神なのかは知らなかったのでノリだけどそう言ってみる。
するとハーシェルはさらに顔を赤くしてうつむきながら言葉を言い始める。
「ゴ、ゴホン。じゃあ、行きますね?……俺のこと嫌いにならないで」
ほう、俺っ子ときたか。新しいな。
大抵僕とかなんだけど。
まあでも、一人称なんてさして気にならないので恥ずかしそうにしなくてもよかったけどな。
「フフフ、ハーシェルさんもようやく本当の言葉で言えたね」
エミリアはそんなハーシェルを微笑ましそうに見ていた。
「んで?さっき言ってた一夫多妻ってのはこの世界では珍しくないのか?」
「この世界ってお兄さん、別の世界から来たみたい。それで一夫多妻はさっきも言ったけどよく見かけるよ?」
いやうん、俺は別の世界から転生してきた人物なんだけどね。
というか、それならこの問題を解決できる唯一の方法じゃないか?
だが、それってズルくないか?
俺は中身は日本人なのでそんな考えを受け入れるのは少しためらわれたけど、エミリアはそんな俺を見て妖しく笑う。
そして、俺の方へと歩いてきて、耳元で囁く。
「もし、お兄さんがハーレムを作るなら私が協力するよ?私もお兄さんのこと気になるし、解決するにはこうするしかないよ?」
むう、しっかりしている子かと思ったら小悪魔系か!?
そんな囁きを終えるとエミリアは離れて、少し顔を赤くして微笑む。
「ちょっと恥ずかしいね、これ。結構勇気が必要だった。でも考えてみて?お兄さんならここにいる人達をみんな幸せにしてくれそうだから」
エミリアは俺のハッピーエンド主義を知っているのだろうか?
もし本当にハーレムを作れたらこんな悩みなんて簡単に解決するが。
俺は王宮にいる仲間達を見ていく。
カイ、リコリス、ノルン、シルキー、エミリア、ハーシェル、セレスティ。
みんな悪意があって集まった訳でもないし、みんないい人達だ。
それなら俺が幸せにならないと、国を建てても俺の願いは叶わないかもしれない。
建国者がすべての生き物に幸せになってほしいと語りながら、自分自身と周りの人間は不幸とか矛盾している。
そんな国にはだれも行きたいとは思わないだろう。
人を幸せにするのは大変な苦労が必要でもある。
俺は国を建てるに当たって、まずは自分がこの異世界で改めて幸せになろう。
そう決めた。
具体的な方法はまだ思い浮かばないけど。




