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第三十八話 魔法学校事件 その一

 俺は光速であの赤い魔法障壁がある場所に走った。

 道が入り組んでいたため、途中から王都の家の屋根を次々にジャンプしながら進んでいた。


 これ、一度やってみたかったんだよね。

 なんだっけ、パルクール?みたいなの。


 そんな感じで最短距離を進んでいたのでその場所にはすぐについてしまった。

 その学校は大きかった。

 俺が覚えている生前の学校なんて比じゃないくらいの大きさがあった。


 これ、一体何人の生徒が通っているんだよ!

 明らかに中学校としても大きすぎる。

 エミリアが中学生っぽく見えたので中学校と思った。


 そんなことを思いながら、学校の玄関と思われる場所に着地する。

 どれくらいの固さなのかと少し魔法障壁を叩いてみた。


 コンコン。

 これ固い奴だな。


 というわけで、力を最大にして正拳突きをしてみるとあっさり壁が破壊された。

 それで、中に入って一言。


「っと、こんなもんか?案外脆いんだな」


 そう言って、学校の中を見てみると、ゴブリンとオーク、それにそのかなり後ろにはトロールみたいな奴もいた。

 その魔物達は朝に出会ったエミリアとなんかスゴく制服を崩して、腰に上着を巻いた女性の方に向かっていた。


 どうやら落ち着いてる場合じゃないな。

 とりあえずあの魔物を倒してしまおう。


 カイと戦って以来、俺はロングソードを右に、魔剣を左の腰につけている。

 今回は魔物相手なので魔剣で戦うことにする。

 というわけで、お馴染みの光速斬撃をしてどんどん切っていく。

 あらかた片付いたので、エミリアともう一人に声をかける。


「そこの二人、大丈夫か?」


「えっと、大丈夫だよ。ありがとう、お兄さん」


「は、初めまして、お、俺……いや私はハーシェル・ラプラフォーレです」


 エミリアは朝出会った時と同じだが、ハーシェルという女性はなんで真っ赤な顔をして挨拶しているんだろうか?


「初めまして、アトス・ライトニングだ。よろしくな」


 俺は少しニコッとして挨拶をしたのだが、ハーシェルはさらに頭から煙を出していた。

 うーん?俺何かしたかな。


「は、はははい。よろ、よろしくお願いします」


 大丈夫なのかな、あの子。

 エミリアはそんなハーシェルをみて少しニヤニヤしていた。

 なんなんだろう?


「この異変に心当たりはあるか?」


「いえ、ありません。突然だったから」


「アトスさんは!なんでここに!?」


 エミリアは普段通りに話してくるのだが、ハーシェルは大きい声でそんなことを聞いてくる。

 照れ隠しなのかな、あれは。


「え?俺はこの異変は何事かなーって調査に来たような感じだ」


「アトスさん、ありがとうございます!俺、いや私はアトスさんが来なかったら危なかったかもしれないです」


「そうなのか。まあ、あの魔物達、二人を狙いに行っていたもんな」


 何事もなく倒せて良かった。

 だが、学校内から戦闘をする音が聞こえてきたのでのんきに話している場合じゃないな。


「とりあえず、俺は学校に入るから、君達は王宮に行ってくれ」


「え?王宮ですか?」


「王宮にこの魔法に対抗する結界みたいなものを張ったからそこの方が安全だ」


 それで俺は王宮の方を指差す。

 ここからでも王宮は見える大きさなので、白い魔法障壁が張ってあるのが見える。


「そんな魔法、この国では誰も使えないはずですけど!?」


 ハーシェルは驚きと共にその光景を見ていた。


「あー、いろいろややこしくなるから説明はあとだけど、俺がやった。あそこなら安全なはずだ」


 そう聞くとハーシェルはキラキラと効果音でもつきそうなくらい輝いた目を顔を赤くしながらこちらに向けてきた。

 そして、鼻血を出す。

 エミリアもそれなりに驚いていた。


「死王国との戦いで大活躍したというのは本当なんだね」


「へぇ、こっちの方でも知られているのか。て言うかハーシェルは大丈夫なのか?」


「わた、私のことは気にしないで下さい。持病みたいなものなので!」


 そう言うハーシェルをエミリアはまたニヤニヤ見ていた。


「ふーん、ハーシェルがそう言うならそうなんだろう。じゃあ俺は少し行ってくるよ」


「は、はい、いってらっしゃいです」


 なんかよくわからない言葉を使うハーシェルだったが、俺は学校の中へと入っていく。


          ☆


 彼が学校に入っていくのをみて、私達は学校を出る。


「ハーシェルさん、緊張しすぎだよ。あの鼻血、持病じゃないでしょ?」


 ハーシェルが鼻血を出すなんてよっぼどカッコよく映ってるんだろうな、お兄さん。


「ふ、ふん!そうだけど、恥ずかしいじゃん!」


「会話できて良かったね」


「う、うん。エミリアはアトスさんのこと気にならないの?」


「まあ、あの王宮の光景を見ちゃうと少しは興味ある」


 あれほどの魔法を使えるアトス・ライトニングというお兄さんが少しずつ気になり始めた。

 それにハーシェルに向けられたあの笑顔、横で見ていてもなんか胸がドキドキした。

 直撃を受けたハーシェルは恐らく、本当に心を奪われたのかもしれない。


 あのお兄さん、なんか気になるんだよね、なんでだろう?


「あっ、でもエミリアも参戦するなら手加減しないよ」


 ハーシェルは少し顔を赤くしながらそう言う。


「私はハーシェルさんほど好きって訳じゃないから気にしないで」


 とはいうけど、私もそれなりに気になっていた。

 朝出会った時からなんかあのお兄さんのことばかり考えている気がする。

 これって好きってことなのかな?わからないけど。


 そんな会話をしながら私はハーシェルと白い魔法障壁で囲まれている王宮に歩いていった。


          ☆


 学校内は魔物の巣となっていた。

 この学校は土足で歩き回れるらしく、俺は普通に靴を履いたまま、廊下と思われる場所を歩く。


 視界に入る魔物を切りながら、時折、襲われながらも抵抗している生徒らしき人を何人も助けながら王宮に行くように伝えている。

 掃除道具とかも攻撃してきたのでなんか変な光景を見ている気分だった。


 そして、ある程度進むと、教師と思われる人物達が魔物と戦っている光景を目撃。


「左、魔法障壁が壊れてきているぞ!」


「わかってます!今修復中です!」


 数人で手分けをしながら抵抗していた。

 俺はその魔物達を全て切って、教師達に話しかける。


「あの大丈夫でしたか?」


 俺はリーダーと思われる男性に話しかける。


「ああ、助かった。君は?」


「俺ですか?俺はここの異変を見てなんだろうって来ただけですよ」


「私はラインバート。この学校の教頭をしている」


 その男性はアゴに髭があり、魔法使いが被るとんがり帽子を被っていた。


「ああ、それでみんなに指示を?」


「ああ、そう言うことだ。でもさすがに魔物の数が多くてね、もう少しで危ないところだった」


「間に合って良かったです」


 俺が来なかったらこの人達はどうなっていたのだろうか?

 しかも今も精神力を勝手に使われている感覚があるので、本当に危なかったのかもしれない。


「あっ、挨拶されてまだこっちの名前を教えていませんでしたね。俺はアトス・ライトニングです」


 俺の名前を聞くと周りの教師達は驚きの表情を浮かべていた。

 代表してラインバートが話しかけてくる。


「アトス?もしかして、先日の死王国動乱と名前を付けられたあの国家存亡の危機を救ったとかいう英雄殿ですか?!」


 ラインバートは俺の名前を聞くといきなり敬語になった。


「えっと、俺はそんなつもりないんですが、そういうことになりますね」


 というかあの戦い、死王国動乱と名前が付けられたらしい。

 それは知らなかったな。

 俺は苦笑いをしながらそう言った。


「よくぞ、この異変に駆けつけてくれました!」


 いきなり敬語だったので若干人間不信になった。

 それはいいとして、教頭ということは校長はどうしたのだろうか?


「ところで、校長ってどこにいるんですか?話を聞いたところ、ここにはいなさそうですけど」


 それを聞いてラインバートは顔をハッとして俺を見る。

 これは今の抵抗戦ですっかり忘れていたんだろうな。


「校長はこの上の階の校長室に居ます。案内しましょうか?」


「ええ、お願いします。他の教師の方達は王宮に避難してください。ここはまだ戦場なので何が起きるか分かりません」


 俺の言葉に他の教師達はうなずいて歩いていった。

 そして、ラインバートと二人になる。


「それでは行きましょう!」


 ラインバートについていきながら、階段を上るが、上の階にも魔物がいたので、光速で切りまくって全滅させラインバートの元へと戻ろうとしたが、さらに上の階にも魔物がいそうだったので、ラインバートに断って学校内の全てを光速で周り、魔物達を全滅させて戻ってきた。


 帰って来るまで恐らく2分程だろう。

 確か、光速というのは地球を1秒で7周半する速度だったはずなので学校内を全て回るのはすぐに終わった。


 戻ってくるとラインバートは信じられないものを見る目で俺を見ていた。

 毎回初めて見る人はこんな表情をするので少し飽きたが、それだけ俺の能力はおかしいんだろうね!


「ア、アトス殿はこれくらいは朝飯前なのですかな?」


「そうですね、毎回驚かれるので少し飽きましたけどね」


「いえ、このような力を見せられて驚かない人間など果たしてこの世に存在しているのか」


「やっぱりそんな感じですか?」


 俺は何の気なしにそう言うが、教師はガクガクとうなずく。


「それで、校長室は?」


「ここです」


 ラインバートはちょうど職員室の真上にあたる場所を指差す。

 中に入ると老婆のシスターのような人物がいた。


「校長、大丈夫でしたか!?」


「ええ、大丈夫です。一応魔物を自動で弾く魔法障壁を校長室の全体にかけていたので、生徒達は無事なのでしょうか」


 そう言いながら、校長は俺の方を見る。


「そちらの方は?」


「あ、俺はアトス・ライトニングと言います。異変が起こっていたのでここに来てみた者です。ちなみに、この学校の生徒はたぶんみんな避難できていると思います」


 見落としがないか心配だったが、魔物も全滅させたはずなので大丈夫だろう。

 校長は少しだけ驚いた後、校長が座るイスに腰をかける。


「アトスさんですか。この度は我が魔法学校の救援に、まず感謝いたします」


 そう言って、頭を少し下げる。


「まだ魔法障壁は壊れていないので、どこかにこの障壁を張った人物がいるはずなんですが、心当たりはありませんか?」


「申し訳ないのですが、私には分かりません」


「そうですか」


 そう言ったところで、この部屋に緑髪のメガネをかけた青年な人物が現れた。

 近くには幽霊のような姿だが、女性の霊が浮いていた。


「それは僕ですよ。フフフ、彼女と過ごせる理想世界を作るために、まずはこの学校を掌握しようとしたんですが、よくも邪魔をしてくれましたね、アトス・ライトニング」


 その男性はメガネをクイッと上げて俺を見ていた。


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