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第三十七話 魔法学校事件前、エミリア戯れる

 私、エミリアが通っている魔法学校は王立で、初等部、中等部、高等部と入れば18歳まで一貫して教育を受けることができるという学校だ。

 だが、今のバクラ王の方針で王都に住むすべての住民がここに通うことになる。

 もちろん、王都は大きいので、東西南北に王立の学校が立てられている。

 私の通うこの学校は王都の西にある学校だ。


 登校するときにぶつかってスカートの中身を見られてしまった私はとても恥ずかしかった。

 その男性は上下黒の服で私より少しだけ年上の顔だったけど、童顔だった。


「アトスさんかー。あのお兄さん、噂で聞いていた先日の死王国との戦いを一人で終わらせたって話だけど」


 授業は2時限が終わって今は昼より少し早い時間帯で休憩時間だ。

 私はあのお兄さんのことを頭に浮かべながら気分転換に学校の廊下を歩いていた。


 私は死王国との戦いがどれ程の規模だったのか知らないので、あんまりピンと来ていなかった。

 噂によればこのアルデイト王国の存亡の危機だった戦いらしいけど。


「ちーっす。エミリア、どうしたのさ?物思いをしているような顔って珍しいじゃん!」


 後ろから声がかけられたので振り向くと私の友達のハーシェル・ラプラフォーレだった。


 彼女は明るめの紫のロングヘアーだけど、前髪をあげていて、制服の上着を腰に巻き、中のブラウスの袖を肘より下の方にまくっていて、とても活動的な印象を受ける。


 そんな彼女は先生達から素行が悪いとか言われている。

 なぜなら、王都の西の不良グループのリーダーだからだ。

 不良といっても学校は通っているし、人に迷惑をかけるような人達ではない。

 彼らのグループは魔法で人を助けたり、困っている人の手伝いをしている。


 ならなぜ、素行が悪いと言われているのか。

 それはこの学校の校則で、学校在籍中は交流試合以外に王都で魔法を使わないことと決められているからだ。

 そのうえ、人を助けるために学校を欠席したりすることが問題だった。


 私としてはもう少し学校が彼女達を許してあげてもいいんじゃないかと思うけど、立場上そうもいかないんだと思う。

 そのハーシェルはいつものごとく、今学校に来たばかりのようで、片手でカバンを持ち肩にそのカバンを担いでいる格好だった。


「ああ、ハーシェルさん今登校ですか。いえ、今日登校中にアトスっていうお兄さんに出会って、お姉ちゃんの知り合いって話だったからどういう人なのかなーと」


「おはようーって時間でもないかな?それでアトスって先日の死王国との戦いで大活躍したっていう人?」


 ハーシェルは頬を染めて目を輝かせて聞いてきた。

 ハーシェルは女の子だけど、ヒーローになりたいっていう夢があると前に聞いた。

 だからヒーローみたいな活躍をしたアトスが気になるのだろう。


「うん、たぶんその噂の人だと思うよ?」


「いいなーいいなー。俺もそんな活躍してみたい!」


 ものすごく違和感がある一人称だけどこれがハーシェルだ。


「ハーシェルさん、やっぱりその一人称違和感ありすぎだよ」


「えー、これが俺の素なのよ?今さら変えられないわ」


「いえ、まあ。出会った時からそんな話し方だったけど」


「いいじゃん、俺!昔、僕とで結構迷ったわ」


「僕ですか。ハーシェルさんならどちらも似合うと思うけど」


「フフン、町の男女混合のグループを取り仕切るにはこんな口調じゃないとやってられないのよね!」


 その女性らしい口調もあいまって、違和感バリバリだけど、もはや変えようもないので私もハーシェルをからかう時にその話題を出すくらいだ。

 私も意外と性格悪いのかも。


「それで、そのアトスに会ってどう思ったの?」


 ハーシェルはやはりその話を聞きたいらしく、強引に話題を元に戻す。


「私?私は特に何も。

 お姉ちゃんの知り合いらしいし、昨日はお姉ちゃんとその友達がアトスさんの話をしていたから聞いていたけど、あのお兄さん狙いの人、結構いるかもよ?」


 昨日、姉のリコリスとたしかノルンといったか、あの二人はお兄さんが好きらしくて最終的にはどちらかを選ぶことになるという話らしい。

 とはいえ、一夫多妻なんて珍しいことでもないので二人同時に嫁にするなんてこともできる。

 それはそれで正妻争いとかありそうだけど、私には関係無いので気にするだけ無駄だろう。


「え?そうなの?俺でも厳しい?この自慢の体を武器にすればいけないかな?」


 確かにハーシェルの体は同年代の学校の生徒の中でも結構スタイルはいいと思う。

 胸は大きいし、腰なんてあり得ないくらいクビレがある。

 水泳の授業とかでハーシェルの体を見た感想だ。

 もちろん、同性なのであんまり気にして見てはいなかったけど。

 私なんてハーシェルと比べるとまだまだ子供と言ってもいい体型だ。


 それに学校の男子の中でハーシェルチャレンジなんてものがあって、告白した男子はことごとくハーシェルにケンカを売られて負ける。

 すると、


「俺より弱いやつに興味ない!」


 って振られているらしい。ハーシェルらしいけど。


「どうなのかな?お姉ちゃんもノルンっていうお姉ちゃんの友達もそこまでスタイルはよくないかもしれないけど、ひいき目にみても二人とも可愛いよ?」


 妹の私がいうのもおかしい気もするけど、お姉ちゃんとノルンは普通に可愛いのだ。

 特にお姉ちゃんなんて、あの性格もあって結構刺さる人には刺さると思う。

 ハーシェルも別に可愛くないわけではないので可能性はありそうだけど。


「そうかー、厳しいのかー。まあ俺もアトスさんと間近で一緒にいるわけでもないし。

 その分エミリアのねーさんとノルンって子の方が有利かな」


 少し悔しそうな顔をしているが、ハーシェルはお兄さんとどうなりたいのだろうか?


「それに学校卒業まで王都から出られないでしょ?というか、ハーシェルさんってお兄さんとどうなりたいの?」


「どうって?俺の嫁にするのよ!」


 この交互に来る男口調と女口調も直した方がいいと思うけど。

 というか、嫁になるのはハーシェルだよね?

 私はもう慣れたから気にしないけど。


「えー、さすがの私もビックリだよ」


 私は少し棒読み気味にそんなことを言う。


「でも卒業までアトスさんの近くに行けないのは悲しい。その間に誰かに取られなければいいけど」


 うん、たぶんそれは無理じゃないかな?絶対誰かに取られてるよ。

 私達が卒業するにはあと四年間、この学校に通わないと行けない。

 といってもどうしてもってなれば、休学とか中退とかできたはずだけど。


 そんなハーシェルと会話をしていると、突然、学校が赤い膜に覆われる。


「ん?なんだ、これ?」


「分からない、けどなんか不気味だね」


「妙だな。こう、体の精神力が勝手に使われているような」


 ハーシェルも感じたらしい。

 この赤い膜、私の精神力も勝手に吸い取っているようだった。


「これ、外には出られないのかな?」


「どうかな?学校の玄関まで行ってみない?」


 ハーシェルがそう言うので私も一緒に行ってみる。




 学校の玄関まで来て、そのまま赤い膜に触れてみると、魔法障壁のようで外には出られないらしい。


「これ、何がどーなっているのかしら。俺もさすがに混乱しているわ」


「だね。とりあえず外には出られないみたい」


「こんな状況じゃ、授業受けてる場合じゃないわよね?」


 私はうなずく。


「このまま精神力を使われ続けたら俺達、無事ではすまないわね」


「これ、ちょっと魔法で攻撃してみようかな?」


「え?でも校則は?」


 いつも校則を守らないハーシェルの言葉を聞いて思わず笑ってしまった。


「フフッ、ハーシェルさんがそんなこと言うとおかしいよ。でもそんなこと言っていられないし、やってみる」


 そういって、私は火の魔法を唱える。


「それは太陽。標的を燃やす炎にして我らに知恵を授ける神の恩恵。

 ファイアーボール!」


 私の空気中のマナを精神力によって魔力に変え、そう唱えると、手から手のひらサイズの炎が出来上がる。

 そして、目の前の魔法障壁に飛ばしてみる。


 だが、目の前の魔法障壁は無傷でなんの効果もなかった。


「やっぱりダメみたい」


「魔法は効果がないのかしら?俺もやってみるわ」


 そういって、今度はハーシェルが火の魔法を唱えた。

 そして、魔法障壁に飛ばすが、やはり効果がない。


「ダメだこりゃ、まるで効果がないじゃないの!確かに魔法障壁はこの程度では壊れないけど、少しくらい傷が入ってもいいじゃない」


 ハーシェルも少し悔しいらしい。

 そうこうしているうちに、学校内のあらゆる道具が空中を飛んでいる光景が目に入ってきた。


「なに、あれ」


「わ、私も分からない。なんか危なそうだし、そこの大きい木の陰にでも隠れよう?」


 学校の中から悲鳴のような声も聞こえてきたので、どうも普通の現象ではない。


「うん、そうしよう。俺もさすがに対応できないしね」


 ということで、木の並んでいる場所に隠れ、葉っぱの隙間から二人で学校の様子を見る。


 空中を飛ぶ道具の他にも、どこから来たのか、ゴブリンやらオークやらがいた。


「なんで魔物がこの学校に」


「分からないわ、俺も混乱してる、ゴブリンとオークって初級魔物だったよね?」


「うん、そのはずだけど。あの空飛んでる学校の道具、何か魔力を感じる」


 あの道具は恐らく、魔法で動くようになった物だろう。

 あれくらいは誰でもできるけど、今感じているのは初級ではすまないレベルの魔力だった。


「マズくない、これ。あれどうみても冒険者とか騎士団の人達が戦う魔物だよね?」


「そうだね、こうして隠れていてもいつ見つかるか」


 その時、魔物の一部がこちらを見ているのを見つけてしまった。

 マズイ、見つかった。


 ゴブリンとかオークがこちらに歩いてくる。


「ど、どうしよう」


「逃げるしかないでしょ!」


 そう言って、ハーシェルは逃げようとしたが、突然魔法障壁が破壊される音が聞こえてきた。


「っと、こんなもんか?案外脆いんだな」


 その方向を見てみると、あの上下黒の童顔の男性がいた。


「あ、あれはお兄さん?!」


「え?あの人がアトスさんなの?」


 私はうなずく。

 すると、私達を見つけたお兄さんはこちらに迫っていたゴブリンとかオークを目に見えない速度で殲滅していく。


「なにあれ、あんな速度で人が動けるの?」


 ハーシェルは恐ろしい速度で倒されていく魔物を信じられないような目で見ていた。

 私は昨日、お姉ちゃん達の話でこういうことも聞いていたけど、実際に見るとやっぱり驚いた。


こういう視点移動ははたして必要だったのか……

読んでいただきありがとうございます!

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