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第三十話 実録、カイさん伝説

 王宮で土地の権利書などの正式な書類を作るとかで、俺達は、王都にある宿屋で一晩を過ごすことになった。


「アトス、本当に大丈夫なのか?」


 宿屋の受付が終わった直後、カイは王宮での話について俺に質問をしてくる。


「まだ、明確なイメージはできないし、国を作ろうにもまずは人がいないとどうしようもないけど、大丈夫だよ」


 どう考えても大きすぎる目標なので、自分で言っておきながらもどこから手をつけたらいいのかわかっていなかった。


 あのフォクトリア大平原は本当に草原しかないため、まずは小さな集落みたいな感じで始めた方がいいかもしれない。

 そこでまずは国民となる人を集めないとならないだろう。


「アトスさん、あなたの夢、私も心から応援しますね!」


「私も……アトスの夢の先、見てみたい」


 リコリスは特に何も言わず、俺を応援してくれるらしい。

 ノルンもそう言ってくれた。

 それだけで、少し嬉しくなった。


 というのが宿屋に来る少し前の話。

 リコリスはこの王都で自分の家があるため、一度そちらに帰ると言って俺達と別れた。

 なんとなく寂しいような気もしたが、自分の家があるのにわざわざ宿屋に泊まる必要はないよな?


 別れる直前、リコリスはノルンに、


「うちに泊まりませんか?私とお泊まり会しましょう!」


 と言って、ノルンも別に嫌だということもなくリコリスと共に別れていった。


 またカイと2人だよ。

 別にいいけどさー!

 転生してきたときはカイと一緒だったからそんなに気にしなかったけど。

 やっぱり仲間に華は欲しいよね!


「お前、最近俺の扱いひどくない!?」


 そんな気配を察知したのか、カイは文句を言ってくる。


「別に、カイの扱いは最初からこんな感じじゃなかったか?」


「うむむ、確かに、そんな気もするな!まことに遺憾だが!」


 カイは少し考える仕草をしながら開き直った。

 出会った頃はカイに、というかこの世界に驚かされるばかりだったけど、最近はそれなりに慣れてきた。


 そうだ、いい機会だし気になることを聞いてみよう。


「そういえばさ、俺は転生する前小説を書いていたんだけど」


「お?そうだったのか?転生してきた時はそんなこと言ってなかったと思ったが?」


「ああ、転生してきたときはいろいろ分からなすぎて余裕がなかったんでな」


 あのときは本当に混乱していたからな。

 まあ、カイのおかげで、いち早くこの世界について知れたのはよかったと思うけど。


「確かに、あのときはいろいろ焦っていたもんな、アトス」


「うん、そうだな。話を戻すけど、その小説っていうのはカイ、お前が主人公だったんだ」


「何を言っているんですかね、この小説家さんは」


 カイは俺を疑うような顔をして見る。

 そりゃあそんな反応もするよな。

 自分が小説の主人公だったとか言われたらどういう話なんだと思うだろうし。


「いや、天使が言うには、この世界の出来事が俺に流れていたとかいう話らしいけど。ともかくカイが主人公だったのは事実なんだ」


「なるほど、あの天使の言う縁の深い人物ってそのことだったのか。それで、何を聞きたいんだ?」


 カイは俺の話に納得したらしい。

 いやいや、本当にわかってるんですかね!?


「この世界の国の名前。いろいろあったけど、どれも俺の書いていたあの小説には出てこない名前だった。

 それどころか、カイ以外の設定がほとんど違う。それに仮にも次元最強なら外見だけでカイだとわかるはずだ。

 なのにこの世界でカイの話はまるで聞かない。

 どうしてだと思う?」


「俺にそれを聞かれてもなー。試しにアトスの小説の国の名前言ってみてくれるか?」


 カイは頭の後ろに腕を組んで俺に聞いてくる。


「わかった。じゃあひとつめ。……シストライト王国」


 するとカイは何か納得したような顔をして俺が言った国の名前を知っているかどうか答えてきた。


「シストライト王国か、ずいぶん懐かしい名前を聞いたな」


 知っているのか。

 なら、その王国は存在していたことになるはずだけど。


「この世界にシストライト王国なんて名前はなかったはずだけど」


 俺が聞いている限り、そんな名前の国なんてなかった。


 俺のその言葉を聞くとカイは衝撃の発言をしてきた。


「シストライト王国はこの世界とは別の次元に存在している王国だ」


 は?

 いや、ちょっと待て!


 別の次元に存在している王国?!


 確かに俺の小説のカイは次元最強と言われ、別の世界へと旅することができる能力があるのは知っている。

 だが、本当にそんなことができるなんて少しも思ってなかった。


 大体、他の次元に行くことなど可能なのだろうか?

 もし本当にできるなら物理法則なんて崩れ去るぞ!?


「……すまん、ちょっと驚きすぎて言葉が出てこなかった」


「普通、こんな話したら誰でもそう思うだろう」


 カイは苦笑いをしながら後ろの手をほどいて今度は頭をポリポリとかく。


「ていうことは本当に次元跳躍みたいなことができるのか?」


「今は無理だけどな。アトスの体ならできるぜ?たぶん」


「また変な話を聞いちゃったなー」


 俺は少し遠くを見ながらそう言う。


「アトスが書いていた小説はたぶんこの世界に来る前の話だと思うぜ」


「やっぱりあんたイカれてるよ」


「よく言われる!っとこのやりとりも2回目だな」


 確かに前にもこんな会話をしたような気がする。

 それならば、この世界の国の名前が全然違うと言うのも納得だ。

 それに出会った時にさほど俺の転生の話とかを疑わず、そのうえカイがどこか別の世界のように“この世界”なんて言っていたことにも納得する。


「でも、カイはこの世界を旅していたんだろう?しかも魔物が出現した頃から」


「まあな、ちょくちょく別の次元に行ったり来たりしていたがな」


「この世界で名前が知られていないのは?」


「この世界で名前を売るような活躍はしていないからな。前に戦争に参加したっていうのも別の次元の話だしな」


 次元の旅人か。

 楽しいんだろうな!

 飽きたら別の次元に行けばいいんだもんな、そりゃあ1000年も旅していられるよ!


「ちなみに、この世界に留まっている理由は?」


「飽きないからだろうな。この世界は本当に旅のしがいがある。別の次元もそれなりに楽しいが、この世界は魔物っていう他の次元では見かけない存在がいるからな」


「魔物が出るのはこの世界だけなのか?」


 意外だ。

 でもよくよく考えれば、時空神が破壊されたから魔物が出現したという話だし。

 他の次元ではあんまり見ないのかもしれない。


「そうだな。他の次元でもモンスターと呼ばれる存在がいたりするが、アーティファクトの影響がないからあんまり強くないんだ。だから戦っていてもそんなにやりがいはなかったな」


 なんか戦闘狂みたいなことを言い出したぞ、この人。


「アーティファクトはこの世界特有のアイテムなのか?」


 天使に聞いたときはそれぞれの異世界を維持する神と聞いていたので、もしかしたらこの世界だけとは限らないと思ったけど。


「そうだな。他の次元ではそんなことは聞かなかった。見落としなんかはあるかもしれないが。次元の数はほとんど無限に等しいから俺も全てわかっているわけではない」


 その次元というのはたぶん、あの現代世界も入っているのかもしれない。

 そんなことを聞くとなんか宇宙の話を聞いたときみたいに、生前の悩みなんてひどく小さく思えてしまった。


「カイには驚かされることばっかりだな。まるでおもちゃ箱のようだ」


「この話をしたのはアトスが初めてだ。今までこんな話、仲間にもしなかったからな」


「え?でも話さないといろいろ大変じゃないか?」


 といっても、俺も転生してきたことなんてリコリスとノルンには話していないのだが。

 いつか話さないといけないだろうな。


「俺はその旅先の世界で仲間を作ったら、仲間がいなくなるまでその世界の住民として生きていたからな」


 なりきり的な感じだろうか?

 カイの寿命なんてあってないようなものでそんなことをしても問題ないんだろうな。

 もっとも俺もカイの体なわけで、寿命なんてほぼ無限に等しいはずけど。


「なるほど、参考になったよ。ありがとう」


「礼なんて言わなくていいぜ?俺が楽しんでるだけだからな」


 そういえば、この先も生きて行くのならばずっとカイと一緒なんだろうな。

 カイは今はあの体だけど、魂の器はこの俺の体の中にあると前に言っていた。

 つまりは俺が死ぬときも、カイと一緒だと言うことだろう。


 うわ、なんかいやだな、それ。

 どうせならヒロインみたいな存在ならよかったな!


 だが、それはそれで楽しいかもしれない。

 何よりこんなコントみたいな会話は飽きないしな。


 次元最強という通り名に納得した俺ではあった。

 その後もカイと他の次元の話をしながらその日は終わった。

読んで頂きありがとうございます!

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