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第二十六話 死王国動乱 終結

 ドラゴンゾンビを倒していたのと同じ頃、再びアーティファクトと合体をしたカイを先頭に、警備隊と調査団はスカルドラゴンに向けて快進撃を続けていた。

 俺がドラゴンゾンビ消滅に集中できたのはこちらの部隊が神聖魔法と貫通魔法を付与したとはいえ、順調に進軍していからだ。


 俺は上空からもう片方のスカルドラゴンの方をチラチラ見ながら指揮をしていた。


 だが、問題はなかったようでカイと警備隊の隊長、さらには何の関係もなかったはずのリコリスの父親も一緒に戦い、連携しながらスカルドラゴンに攻撃を加えていた。

 他の兵士達は周りの退路を確保しつつ、三人を援護していた。


「隊長、そっちの足は任せたぜ!リコリスの父さんは正面からの攻撃を頼む!」


「わかった!任せてくれ!」


「承知した!では頑張るとしよう!第二騎士団団長として!」


 上空からだが、大声で言っていたので聴覚のいい俺はバッチリ聞いていた。


 ん?リコリスの父親って騎士団の団長だったのか!?


 それは知らなかった。

 これ、確実に王国に俺の力がバレるよね?

 とはいえ、すでにあの隊長や警備隊、調査団はこの戦場で俺のおかしな力を目にしてしまったので今更だとは思ったけど。

 というか、王国の援軍も来るって話だったし、これもう隠せないよね。


 俺はこの戦場を作ってしまったから言い訳はできないだろう。

 何かされなければいいけど。

 人智を超えた能力は時として脅威とされ、最悪死刑になることもあるはずだ。


 それに強大な力を持ったアーティファクトをもしネクロマンサーが持っていたとすれば、少し規模が大きくなるが、国も集めているかもしれない。

 そうなったらアーティファクト集めも難しくなるかもしれない。


 ……なんかアーティファクトをひとつにしておける拠点みたいなもの欲しいな。


 アーティファクトがどれだけあるのかは分からないのだけど、空間袋にも収納の容量がある。

 ならば、他に置いておける場所があった方がいい。

 それも誰かに盗まれないように守る必要性もありそうだ。


 そんなことを考えていたが、スカルドラゴンが倒されるとカイがいきなりぶっ倒れた。

 そして隊長、リコリスの父親も地面に倒れる。


 なんだ!?何が起きている?


 アンデッド軍団は全て消滅したが、一応軍団を維持しながら、俺は三人の元へと降りていった。


 急いで近くまで来ると、邪悪な気配に三人は囚われているようだった。

 さすがに危なそうなので触って確かめようとは思わなかった。

 ていうか、これ死ぬ一歩手前だよね。

 カイの様子を見てみたが、顔を青くしていて、徐々に生命力が失われているのを感じ取った。


 他の二人も見てみるが、カイと同じ状態だった。


「よくもワタシの可愛いドラゴンゾンビとスカルドラゴンを消滅させてくれたな」


 老人の声がした。

 声の方へと振り向くと、そこには骨の魔道士ネクロマンサーがいた。


「お前、一体何をしたんだ!?」


 俺は焦って大声でネクロマンサーに言う。


「フフ、即死魔法は初めてみるかね?」


 即死魔法だって?!

 カイの記憶を急いで見てみると、確かにそんな魔道書らしきものがあった。


「ワタシのペットを殺した罰だ。貴様は楽には殺さんよ。まず仲間の命を頂こう」


 ネクロマンサーはそう言うと三人の方へと手を向け、魔力操作を始める。

 三人の魂と思われる白い光がネクロマンサーへと吸収されていった。

 そして出していた手のひらを握りしめる。


「ふむ、そこの銀髪の少年。アーティファクトを持っていたね?これは思わぬ収穫だ」


 ネクロマンサーが手のひらを開けるとそこには白い水晶があった。

 カイと合体していたはずのアーティファクトだ。

 俺はネクロマンサーを止められなかった。

 あまりの衝撃の光景を見てしまったからだ。


「それに君の能力、面白い。その力も頂きたいところだ」


 こいつ、俺の能力に気づいている!?


「さて、君とまともに戦うのはデメリットしかない。少し待ちたまえ」


 ネクロマンサーは詠唱無しでその場から消え、少しの時間のあとまた目の前に現れる。


 見るとネクロマンサーの背にはリコリスとノルンが空中に魔力の縄で張り付けにされている。


「こうしたらどうかな?」


「お、お前、やめろ」


 剣を抜いてネクロマンサーにいきなり飛びかかろうとした。


「おっと動いたらこの二人の命もないよ?」


 ネクロマンサーが縄に力を入れるとリコリスは悲鳴を上げる。


「ゴホッ、や、やめて、ください!」


 リコリスは口から少量の血を吐く。


「リコリス!」


 俺はその場に止まる。

 ここで動いたらリコリスが危ない。


「俺にどうしろって言うんだ?!」


 リコリスの縄の締め付けが緩む。


「そうだね、じゃあ剣を置いて、そこに止まっていろ」


 俺は言う通りに剣を地面に置く。


「さて、次はあの軍団を消してもらおうか」


「わかった」


 そして俺は魔力の共有をカットし、神聖な力を持った軍団を消す。

 これで俺は完全に無防備となった。


 こいつは一体何がしたいのだろうか?


 ネクロマンサーは杖に魔力を送る。

 次の瞬間、ウィンドカッターを使用したようで、風の刃が飛んできて、俺の左腕が切断されぶっ飛んだ。


 しかし、左腕は空中を舞うと灰になり俺の左腕は瞬時に元に戻る。

 ドラゴンの超回復と吸血鬼の回復力のおかげだった。


「なんだと!?」


 ネクロマンサーはこの回復力を見て驚いていた。

 どうやら予想外だったようだ。

 一瞬の隙ができた。


 俺は光速でリコリスとノルンの方へと向かう。


 地面に置いたあの魔剣にはまだ隠された力がある。

 俺の小説通りならばだが。

 その力とはいくら魔剣と距離が離れていようとも思念を送れば時空を越えて、カイ・ライトニングの手に戻ってくるというものだった。

 今は俺、アトス・ライトニングの手に戻って来るはずだ。

 分の悪い賭けだった。


(来い、ステラ・マグナ!)


 思念を送る。

 すると地面にあった魔剣ステラ・マグナは姿を消し、俺の手へと戻ってきたのだった。

 リコリスとノルンの縄を切り、二人を両脇に抱きかかえながら、ネクロマンサーのいる場所よりはるか遠方に光速で離脱する。


「大丈夫か!リコリス、ノルン!すまない、俺の力が足りなかった」


 そう言って俺はマジックウォールと、魔法耐性を極限まで盛り込んだ魔法障壁をリコリスとノルンを包むように何層も作った。

 この魔法障壁はいかなる魔法も攻撃も通らなくなっているはずだ。


 リコリスは気絶していた。

 ノルンはそもそも気絶していたので寝息をたてて寝ている。

 それを見た後、俺はネクロマンサーのいる場所へと光速で戻る。


「あの一瞬でこんなに動けるとは油断していた。仕方ない私も本気を出そう」


 そう言うとネクロマンサーは即死魔法を俺に向けて使う。

 だが、俺には全く効果などなく、何かしたか?

 という感じだった。

 恐らく、運命を操る力のせいで俺は死の魔法などは効かないのかもしれない。


 一瞬ヒヤッとしたが、問題ないみたいだ。


「バ、バカな、この即死魔法は誰もかわすことなどできないはずだ!」


 ネクロマンサーはうろたえながら、今度は時魔法を使う。

 草原の時間が止まる。


 しかし、これもなんの効果もない。

 俺は普通に動けてしまったのだ。

 これも運命を操る力の影響なのだろう。

 多分時を止めるという運命を操作して、俺だけその運命をないものにできるのかもしれない。


 というかこれ、俺は何の能力を当てられても効かないんじゃないんじゃないか?!

 化け物かよ!


 そんなことも思ったが、そうと分かればあの魂を持っていかれた光景を思い出し怒りが湧いてきた。

 さらにリコリスとノルンに手を出したことにもだ。


「そ、そんな……貴様!一体何者だ!」


 ネクロマンサーはこちらを恐ろしいものを見る目で見ていた。


「残念だったな、お前は俺の一部の能力ばかりしか見ていなくて、この体の構造と他の能力まで考えていなかった」


「し、しかし、あの三人の命は頂いた」


 それが問題だったが今はこいつを倒さないと俺の気が済まなかった。


「うるさい、ガイコツがペラペラしゃべんじゃねーよ!」


 俺は話すのも嫌だったので、行動を起こす。

 お前を許す理由はない。


「く、来るな!」


 怯えるネクロマンサーを無視する。


 まず光速でネクロマンサーの胸に本気のパンチを食らわせる。

 その衝撃でネクロマンサーを空中の横側に飛ばし、風魔法で足場を作り、光速で動きネクロマンサーの背後から腰の骨に回し蹴りを喰らわせる。


「このパンチはリコリスの分、そしてこの回し蹴りはノルンの分、そして、これが三人の分だ!」


 俺はさらにかかと落としをネクロマンサーの頭にぶち込む。

 それを受けたネクロマンサーは地面に猛スピードで墜落し、巨大なクレーターができる。


 それでも怒りの収まらない俺はクレーターの中心にいるネクロマンサーに重力魔法を空中からあのクレーターに一点集中し、俺は光速よりもさらに早い恐ろしい速度でクレーターに突っ込み、ネクロマンサーに最強の一撃を素手で入れる。

 その余波で地割れが発生し、まるで奈落のような底の深いクレーターになる。


 そこまでやっておきながら俺はさらに光速でパンチを何百発も撃ち込む。

 ネクロマンサーの骨は悲しいくらいに粉々になっていた。


「や、やめろ!悪かった、済まなかった!許してください!お願いします!」


 ネクロマンサーはかろうじて残った頭部から必死に声を出す。


「許すわけねーだろ!カイと隊長とリコリスの父親の魂を返せ!」


「わかった!わかりました!これです!これが魂です!」


 ネクロマンサーは粉々になった骨の手を震えながらかざし、三つの光輝く物体を出す。


「これをそれぞれの体に戻してやれば生き返ります!だから許して!お願いします!」


 魂を受け取り、ネクロマンサーにニヤーとする。


「ゆ、許していただけるのですか?」


 ネクロマンサーはどこか安心した顔をする。

 俺は笑顔を維持し怒りのままに、ネクロマンサーの頭部を完全に破壊する。


 許すわけないだろう!


 そして、なにも言わなくなったガイコツの持っていた杖を手に取るとあの白い水晶へと姿を変え、アーティファクトの姿になる。

 その数は四個。

 と同時に何かの記憶が流れてくる。


 あのネクロマンサーの人間だった時の姿のようだ。

 骨の骨格がそのままだったので恐らくアーティファクトを使う前までの姿ではないだろうか?


 アーティファクトの伝説を知るとネクロマンサーはなんとか自力で四個集め、機を見計らって使ったのだろう。

 あの時ネクロマンサーは世界を平和にしたいという願いを持っていたらしい。


 使ったとき、何やら黒いもやがネクロマンサーの体を包み、彼の願いをねじ曲げた何者かの悪意の力を感じた。

 そして、世界を平和にしたいという願いはねじ曲げられ、世界を蹂躙して征服するという願いに変えられてしまい、代わりにあの神級の力を手に入れた。


 力の代償として、彼はネクロマンサーになる前の精神を破壊され、肉体も骨の姿へと変わった。


 許せない。


 こんな純粋な願いを持った人物を完全に破壊した何者かが。


 一通り記憶が流れ終わると、粉々になった骨がそこにはあった。


 と、骨から濁った色の魂が現れる。

 邪悪な力と普通の人間の力が混ざっていることを感じた。


 もし、これがあの男性の魂なら運命を操る力で浄化できるかもしれない。

 そう思い俺がそれに触れると、その魂は浄化され、光輝く魂へと戻った。

 その魂は精神体へと姿を変える。

 ネクロマンサーになる前の姿だった。


「ありがとう、私を救ってくれて。本当によかった。君のような人物に助けてもらえたのは運がよかっただけかもしれないけど、礼を言うよ」


「あんたは生前は立派な人間だったんだな」


「いや、立派ではないよ。こうして取り返しのつかないことを起こしてしまったのだから」


「それはあんたのせいじゃない」


 あの記憶通りだとするならばそうさせてしまったのはあの悪意の力のせいだろう。


「そう言ってくれて嬉しいよ。あの悪意ある者の正体はわからないけど、強力な力を感じた。あれはもしかしたら邪神だったのかもしれない」


 それって、もしかして時空神を破壊したあの魔神とか呼ばれているやつだろうか?


「これは私のワガママかもしれないが、私のような人間を出さないためにアーティファクトを集めてくれ。あんなことが他にも起きるなんて考えたくない」


 俺は返答に困った。

 これは完全に誰かがやらなければならないことだ。

 でなければこの世界は遠からず破壊されることになるだろう。

 俺がたまたまここにいたから防げたようなもので、俺がいなかったら王国に留まらず世界中が危なかったかもしれない。


 俺にそんなことができるのだろうか?

 生前はただの小説家だったし、なんの力もないただの一般人だった俺に。


 一瞬そんなことを考えたが、ひとまずはこの人を安心させようと、


「ああ、わかった。できる限りのことはするよ」


 と俺は言ったのだった。


「ありがとう、君はいい人だね。これで私も安心してあの世に行ける」


 そう言うとネクロマンサーだった人物の魂は明るくなった空へと昇って行って見えなくなった。


 次の世界では彼にハッピーエンドが訪れることを祈らせてもらおう。


 こうして、後に死王国動乱と名付けられたアルデイト王国とリヒテリンス死王国の短時間戦争は終結した。

読んでいただきありがとうございます!あともう一話で第一章完結です。

今日はあと20時くらいにもう一話追加します!

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