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第二十五話 死王国動乱 その三

「そんなこと、あるのか?」


 俺たちは陣から少し遠くのアンデッド軍団をみていた。

 雲がかかりながらも明るくなってきた平原には吸血鬼と思われる魔物の軍団が出現していた。

 このほかにもジャックランタンの姿をした魔物、怨念の魂の集合体で構成された巨大な亡霊。

 さらには死神っぽい魔物などなど、まるでお化けのパレードがそこにはあった。


「あんなのに勝てるわけない。隊長、逃げましょう!」


 兵士はガクガクと震えている。

 先ほど少し回復した士気は一気に最低まで落ちていた。

 そりゃあ、俺だってあんな軍団と戦いたくない。

 どうみても普通の人間が戦うレベルの魔物じゃないからな!


「いやー、ここまでとは。正直カイさんも驚きだ」


 その光景を冷や汗をかいて、苦笑いしながらカイは見ていた。

 カイですらも焦っているようだ。


「ア、アトスさん、私達勝てるんですか?あの軍団に」


 リコリスもさすがに顔を青くしてその光景を見ていた。

 後からここに来たノルンはあまりの光景に気絶してしまっていた。


「い、いやあ、なんとも言えんなこれは!」


 一対一ならいくらでも勝てるだろうが、こんなに大人数で来られると大変そうだ。


「俺は死にはしないだろうけど、数がな、あれはちょっとマズそうだ」


 アンデッド軍団を殲滅したあの魔法を小型化して使って一回撃ち込んでみたのだが、直撃はするが聖なる力をもってしても瞬時に回復されてしまうため、あの戦法は使えないだろう。


 さて、どうしようか?


 こんな状況だというのに俺は冷静だった。

 自分でも驚いている。

 なぜかは分からないが負ける気が全くしなかったのだ。

 もしかしたらゲームでもやっている気分なのかもしれない。


「リコさん、とりあえずアーティファクト使って少し時間を稼いでくれないか?」


「それは構いませんけど、何をするのですか?」


「まあ、見てろって」


 そして、カイからアーティファクトを受け取り今度はリコリスが合体する。

 リコリスは杖を体の前に構え、魔法を唱え始める。


「其は壁。あらゆる厄災から我を守る壁。神なる力によりここに顕現し戦士達に一時の休息を与えん!

 ゴッドマジックウォール!」


 詠唱は常時発動を教えもらったあの時よりも少しだけ内容が違う。

 使っている魔法も神級魔法だろう。


 陣全体を包む規模の魔法障壁が出来上がった。

 アンデッド軍団もこの魔法障壁は突破できないようで魔法障壁に攻撃を加えているがあまり効果はないようだった。

 やはりアーティファクトってすごい能力を持っているんだな。

 使っているリコリス自身も目を見開きながら自分が作った魔法障壁を眺めている。


 その光景を見ていた隊長はリコリスを眺めながら驚いている。


「アトスさん、魔法障壁が持つのは40分ほどです。何をするか分かりませんが、後はアトスさんに任せますね!」


 リコリスは魔法障壁を維持するために魔力を生成する行動に戻る。


 それで俺はと言うとその場から少し後ろに下がる。

 試してみたいことがあったので、それを実行しようと魔法のイメージを始める。

 それはカイと出会った最初の頃にカイが使っていた魔法の記憶を元にしている。


 イメージ。

 魔力で動く体。魂はなくとも体は動く。

 神聖な力を持った神の軍団。

 あらゆる邪悪を滅ぼすまで歩みを止めることのない勇者達。

 俺の精神力を分け与え、あらゆる魔法を行使可能な仮の姿へと進化させる。


「トリプルシンクロ、バースノルジカ・ゴッドアーミーオリジン!」


 目の前が光で何も見えない。

 この魔法は神聖魔法と軍団召喚、さらに俺の魔力を召喚した軍団に共有させる三つの魔法を合体させた。

 俺の考えはこうだった。

 二つ同時に魔法を簡単に複合できるのならば、三つ同時に使うこともできるのではないかと。

 それで試してみたところ、いくらでも複合させられる手応えがあった。


 さて、空気中のマナがすごく薄くなるほどに消費されたのがよくわかった。

 なぜなら俺の周りではマナの気配が極端に減っていたからだ。

 この世界で生きてきて、ここまでマナの気配が無くなったのは見たことがない。

 恐らく、ここでは魔法の威力が半減すると思われる。


 その大量のマナは俺の精神力を糧にして、莫大な魔力を生成しているのがわかった。


 光が晴れると俺の前方にはアンデッド軍団に引けを取らない数というか、それ以上の魔力で作られた聖なる気配を感じる輝く戦士達が数えきれない程出現していた。

 中には背中に翼のある天使に見えるような奴もいた。

 その他にも白銀の重装備の武装をしている重騎士軍団や、さらにはフードに杖という姿の大量の白い魔道士軍団。

 空を飛んでいる全身真っ白なドラゴンライダーや、明らかに機関銃のような武器を持った兵士など、実に様々な種類の軍団がいる。

 こんなことできるならもっと早く使えばよかったなんて思った。


 カイは俺の姿を見つけるとこちらへ歩いてくる。


「こんな魔法、ジオグラードでも使えないぞ?お前どれだけおかしい能力持っているんだよ!驚きすぎてすごいとしか言えないぜ!」


「そうなのか?複合魔法を三つ同時に使ってみただけなんだけど」


「いや、それ自体がもうおかしいだろ。普通はどれだけ頑張っても二つまでだし。

 俺も複合なんてできないから誰もできないかもしれないが」


 俺としてはそんなにすごいとは思わないんだけど、周りはそうもいえないらしい。


「でも、召喚完了するまで動けなかったし、リコリスが時間稼ぎしてくれなかったらこんなことできなかった」


 魔力を大量に生成して消費している間、少しの時間が必要だったし、戦場の真ん中ではそんな余裕無さそうだ。

 魔法障壁を維持していたリコリスはあまりの光景に杖を落として、慌てて拾っていた。


「リコさん、ありがとう。もう十分だ。あとは俺が片付ける」


 リコリスはお礼を言われると嬉しそうな顔をしていた。

 隊長はアゴを落として、非常にビックリしていた。


「ア、アトス殿、あなたはどれだけの力を隠しているのですか!?まるで夢を見ているようだ」


 ここまでやらかしてしまったら隠すのも無理だろう。

 ということで開き直ることにした。


「すみません。俺の力は俺自身もよく把握できていませんが、多分伝説のジオグラードくらいの力はあるかもしれません」


 隊長は俺が召喚した軍団を見ながら納得するような顔をする。

 この隊長、意外と精神力強いな。

 こんな光景を見たら、普通はこんなもんじゃすまないのではないだろうか?


「これだけの戦力があれば、勝てるかもしれない」


 近くの兵士はこの光景を援軍が来たと思うことにしたらしく、若干俺を苦笑いで見ながらそう言う。


「皆さんは休んでいてください。多分なんとかなるので」


「そうはいかないな。この好機、波に乗るしかないだろう!」


 隊長は兵士達のいる方へと向かい、号令をかける。


「あっ、じゃあ警備隊と調査団全員に聖なる力を与える魔法と貫通の魔法をかけますね!」


 俺はさらに隊長を含む全員に先ほどの戦場で使っていた複合魔法をかける。


「我々の力など取るに足らないだろうが足手まといにはならないだろう。感謝するアトス殿」


 そして、二回目の戦いが始まった。


 俺は召喚した全軍団の指揮をしなければならなかったので空から戦場をみる。

 さながらチェスや将棋のように盤面を見ながら指示を出すような感じだった。

 魔法で召喚した軍団は一軍団という集まりごとに俺の指示で動くようになっているのを感じたので、思念を飛ばしてみる。


「さて、じゃあ機関銃兵、撃ち方はじめ!」


 別に口に出す必要もなかったが、俺は思い通りに動く軍団が楽しくてつい声に出してしまった。


 思念を飛ばすとあの機関銃を持った軍団はホーリーバレットという神聖魔法で作られた弾丸を高速で撃つ。

 その消費は俺にもわかる。

 俺が魔力共有をしているから、あの魔法の魔力は俺の精神力が使われていた。


 ただ心配なことは、俺の精神力が尽きたらこの神聖魔法で固められたこの多数の軍団は消滅してしまうことだった。

 それぞれの軍団は何も話さず、黙々と行動をし続けるから不気味な印象を受けた。

 魂がないからな、カイのようには話せないんだろうな。


 だが、機関銃軍団の射撃により、大量のアンデッド軍団がどんどん数を減らしていく。

 ていうか機関銃ってファンタジーからかけ離れているよな?


 メクリエンス帝国がどれほど科学力を持っているかわからないけど、さすがにこんな武器はないと思う、帝国を知らないのであるかもしれないけど。


 神聖な力を持った軍団は恐ろしい速度でアンデッド軍団をたやすく倒していく。

 陸、空両方から攻撃を受けているアンデッド軍団はどこに対抗したらいいのか混乱していた。

 あのドラゴンゾンビとスカルドラゴンが指揮しているならまずあの二匹を倒さなくては。


 そう思った俺は機関銃の射撃と魔道士軍団の攻撃を一点に集中させてドラゴンゾンビの方への突破口を開くとそこに、白銀の重騎士軍団と空の天使軍団とドラゴンライダー軍団を突撃させる。


 うまくいったようで、三部隊の一斉攻撃をドラゴンゾンビは回避できていなく、どんどん神聖な力によって形が崩れていっていた。


 構成している部隊の一人一人はたぶん神級ランクの兵士で神聖な力により対アンデッドに特化しているため、アンデッド軍団は全く相手になっていなかった。


「本当にすごいな、これ」


 俺の召喚した兵士の戦闘している感覚は俺にも伝わっていた。

 というか俺がその場で分身でもして戦っているようだった。

 まあ、召喚者だから分かるんだろうけど。


 こうしてドラゴンゾンビはいともたやすく消滅し、ドラゴンゾンビによって召喚されていたアンデッド軍団も消滅した。


読んでいただきありがとうございます!

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