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第二十四話 死王国動乱 その二

 夜明け前に大量のアンデッド、しかも全て上級ランクというおかしい戦力の軍団との戦いが始まった。


 国境警備隊は軍ではあるが、ここ数百年リヒテリンス共和国との戦争などなかったそうなので、必要最低限の戦力しか配備されていないらしい。

 そして、構成する兵士達もほとんどが新兵同様という軍だ。

 調査団も軽装の武装だったので戦力としては期待できなかった。


 もちろん、冒険者ギルドの冒険者よりも過酷な訓練をしているため、低ランクの冒険者よりは強いんだろうけど。


 最前線では激しい戦闘が行われている。

 数的にも不利なこちらは一人でアンデッドを十体以上相手にしなくてはならなかった。

 相手は倒しても倒しても、後ろから次々と隊列を組んでこちらへ迫ってくる。


 さらには全てが上級ランクのうえ、援軍として続々と来るスケルトンは鎧に盾、剣という完全武装でこちらに来る。

 視界が悪いため、兵士の中には負傷者が出始めている。

 少しずつ戦況は不利になりつつあった。


 俺も最前線で戦っていたのだけど、気づいたことがある。

 魔法を使ってスケルトンに攻撃を仕掛けたのだが、あの体に装備している鎧と盾。

 あれは魔法耐性がついているらしく、魔法を使ってみたのだが本来なら貫通するところを盾で受け止められてしまっている。

 そのため、警備隊の魔道士達の魔法はほとんど効いていなかった。


 俺の破壊の力でも貫通できないなんて、正直驚いた。

 だが、俺の持っている魔剣は相変わらずで魔法耐性などものともせず見事に盾と鎧ごと切れた。

 この魔剣相変わらずおかしい切れ味してるな。

 一体何でできているんだろう?

 魔法で鍛えられた剣なのは間違いないとは思うけど。


 とはいえ、剣だけ使えても数の不利は変わらない。

 いや、光速の走り方とか使ってかなりの数減らしたけど。

 それでもやはり数が問題だった。

 なんせ、倒した後に敵軍の後方で神級魔物のあの二匹がアンデッドを追加召喚していたのだから。

 数なんて減るわけがなかった。

 俺の活躍は大局を動かせるだけの戦果ではない。

 もちろん、これが普通の戦争であるならば、間違いなく大活躍ではあるのだけど。


 やはりネクロマンサー自体を倒さないと厳しいだろう。

 もしくはあの二匹を。

 だが、ネクロマンサーが確認できたのは開戦前のあの時だけで、今は姿が見えなかった。

 俺はネクロマンサーを探してアンデッドを大量に切りながら先行していたが、ついに見つけられなかった。


 減らないアンデッドと戦うのに飽きた俺は相手がアンデッドであるという点から、もしかして光の魔法なら効果があるのでは?

 と思い、カイの記憶を見てみる。


 うむ、それなりには効果がありそうだ。


 カイの記憶によれば光の魔法でアンデッドは消滅させることができると記憶されていた。

 なのでカイが使っていた風魔法で空を飛ぶということをまずしてみる。


 いきなり戦場から上空へと移動した光景に近くで戦っていた国境警備隊の兵士が驚いた顔で俺を見ていた。


 空から見てみると、本当に大量のアンデッドだな。

 地面を埋め尽くすというのはまさにこういうことだろう。

 ふと気になったのでアーティファクトを使って戦っているはずのカイがいるところを見てみる。


 やはり性能が大幅に強化されているらしく、カイが戦っている場所らしきところでは神級魔法に近い威力の光の魔法が使われていた。


 なにあの威力。


 その光景はアンデッドの軍団がいたはずの場所に空白ができているのがわかるくらいの威力でかなりの数のアンデッドが殲滅されていた。

 しかも何回も使っているのか、アンデッド軍団のいくつもの場所にあの空白ができていた。


 カイ、マジヤベぇ!


 俺と戦ったあの時より強化されてないか、あれ。

 というか、もしかしてあの時も本人が言っていたけど、本当に本気出せてなかったのか?


 自分の小説の主人公だが、ここまでぶっ壊れてなかったよね!?


 俺はあまりの衝撃の光景に驚いていた。

 次にカイと戦ったら勝てんのかな、俺。

 少し驚き過ぎた。


 その光景を横目に俺もカイの記憶を元に光魔法を使おうとイメージを始める。


 聖なる力。邪悪なる魂を浄化する無二の祝福。全ての魂に救いの光を。


「ホーリブレード・アンチアーミー!」


 すると俺の背後に今まで以上に大量の光輝く剣が浮かび上がる。

 その数は俺の背後ゼーダ連山の横に直径1km以上に並んでいる光景。

 しかも縦、横、斜めに円形にだ。


 めちゃくちゃ大量だな!

 大軍を相手にするイメージで使ったが想像以上だった。


 もはや俺一人で軍団じゃね?


 内心そんなことを思いつつ、味方を巻き込まないように、さらに条件を追加する。

 ついでに、貫通するように背後の光輝く剣全てに貫通魔法を複合させる。


 イメージ。

 いかなる武装も貫き魔法耐性すらも貫通する。何者にも防げない鋭い槍。


「プラス、ペネトレート」


 条件はアンデッド属性、人間以外。

 そう設定を終える。


 ていうか、こんな方法あるのか。

 俺はカイの記憶を参考にして条件とか設定したわけだけど、うまく動くだろうか?

 これで警備隊も巻き込むようなことがあれば少し考えなくてはならないだろう。

 俺だって普通の人間を巻き込みたくはないのだけど。


 今使っている魔法は大軍を相手にするときに使う魔法で、下手したら戦場で戦っている兵士に当たるかもしれない。

 この魔法は初めて使う種類で内心少し不安だった。


 そんなことを考えながら光の剣を射出する。

 するとうまく動作しているようで、戦場の人間には全く当たらず、ともすれば、人間の動きを見極めて逆に兵士を援護しているような光景になった。


 うん、大丈夫そうだ。


 全体を見てみると数多くの光の剣が大量のアンデッドに次々と直撃していて、剣の雨でも降っているかのような光景だった。

 こちらとしてはガトリングでも撃っているような気分だった。

 完全武装していたスケルトンも盾を構えるが貫通して直撃している。


 魔法耐性とはなんだったのか。


 そう思わずにはいられなかった。

 もちろん、少し威力は低下しているようだったけど、直撃していればあんまり関係ないよな。


 そして、残弾が全て尽きると戦場の景色は一変していた。

 圧倒的だったはずのアンデッドの数はほとんどが消滅し、あの二匹から追加召喚される数が追い付いてなかった。

 ネクロマンサーの姿を探すが、あのアンデッドのさらに後方にいるんだろうな。

 神級魔物の二匹、ドラゴンゾンビとスカルゾンビはまだ本体自体は動いていなかった。

 あの二匹が動き出したらどうなるのか、考えたくもない。


「戦況少しは変わったかな?」


 追加召喚があるので一時しのぎのようなものだと思うけど。


 前線で戦っていた警備隊が、信じられないという顔をしてキレイになった平原をみている。


 俺が地上に着地すると、警備隊と調査団の兵士達は歓声を上げる。

 士気は少しくらい上がっただろうか?


「今のうちに負傷者の撤退を支援してください!これは一時しのぎにすぎないので」


 俺は周りにそう声をかける。

 幸いなことに、警備隊と調査団に死者は出ていなかった。

 やっぱり新兵と言っても王国の兵士だな。

 兵士達は急いで後方へと撤退していく。

 戦闘開始から大体40分だ。

 カイがこちらに走ってくる。


「もうそろそろ一回目の効果が切れそうだ。俺も一旦後方に下がるよ」


 そういって、カイも一時撤退をする。

 ちなみにリコリスとノルンは前線に出す訳にはいかなかったので後方の負傷者の手当て、というか回復魔法をお願いしていた。


 カイの後ろ姿をみていると、空を飛ぶ謎の物体を発見した。

 なんだろうか、あれは。

 球体の形をしているが、その下にレンズの入った四角い物がくっついている。


 あれって、現代世界で言うカメラっぽいけど、王国にそんなもの存在していたかな?

 というかドローンにカメラを付けたようなイメージだった。


 見たところ、球体の方には風の刻印が入っているのでその効果で空を飛んでいるのだけど。

 もしかしてメクリエンス帝国のやつだったりするのかな?

 あんな不思議なものを作れる能力があるのは帝国だけだろう。

 いや、ほかにもあるのかもしれないけど。

 俺の知る限りではだ。


 その謎の物体がこちらにレンズを向けていたので、なんとなくピースしてしまった。

 なにしてんの俺。

 謎の物体ははるか上空へと飛んでいってしまった。

 なんだったんだろう。


 俺は不思議に思いながらも明るくなりつつある空を見ながら後方の陣に歩いていった。


          ☆


 後方に作られた陣は負傷者が多かったが、俺が診療所で使ったフォクトリア湖の水は隊長を通して全体へと伝えられていたので、思ったほどリコリスとノルンは活躍していなかったそうだ。


「この水もアトスさんの話から使われるようになったって聞きました」


 リコリスが陣へと戻ってきた俺に話しかける。


「ん?ああそうだね」


 いや、元々はただの水だったんだけどね!

 俺が湖を荒野にして元に戻さなければ、こんな回復する水にならなかったからな。


 カイは俺の方をニヤニヤとしながら見ている。

 元はと言えばカイがおかしなことを言い出したからだ。

 そこのところわかっているんだろうか?あの銀髪少年は。


「それより、アトス。お前よくあんな大規模魔法使えたな、ビックリしたよ」


「いやいや、ビックリしたのはこっちだよ。なんだあの戦闘力。信じられん」


「アーティファクトのおかげだな。あれがなければ俺もあんな力使えない」


 カイはそう言いながら頭をポリポリとかく。

 まあ、アーティファクトは神の力の一部だからな。


「私もほとんどすることがなかったので前線の方を見ていましたけど、アトスさん、ホントにすごいんですね!あの光魔法、教国の聖魔道士でもほとんど使えないんじゃないですか?」


 リコリスは相変わらず頬を染めてそんなことを言ってくる。


「だよなー、俺もアーティファクトのおかげでそこそこ戦えるようになったけど、アトスみたいに大規模な対軍魔法なんて使えないしな!」


 いやカイの使っていたあの魔法、あれどう見ても対軍魔法だよね!?


「ええ?嘘だろ、あんな力があればカイでもできそうだけど」


「いやいや、俺のあれは地点を指定してやらないとできないからな、アトスのは無差別だろ?しかも条件設定もうまく使えていたみたいだしな」


 よく見ているもんだ。

 とはいえあれだけ不自然に兵士を避けて敵に直撃させていればカイならそんなことは簡単にわかるだろう。


「条件設定って確か超級の魔道士でも簡単にはできないって聞きましたけど、アトスさんはジオグラードの再来と言ってもいいかもしれないですね!」


 それは言いすぎじゃないだろうか?

 俺はジオグラードのように新たなランクの魔法なんて使ってないし。

 あるとすれば、複合魔法くらいではないだろうか?

 名前だけは存在しているらしいけど。


 と、そんなことをしていたら警備隊の隊長が慌ててここに走ってきた。


「アトス殿!ここにいましたか!」


「どうしたんだよ?そんなに焦って」


 隊長は息を整えると衝撃の言葉を言ってきた。


「……アンデッド軍団がさらに上位の神話級魔物の召喚を始めたとの報告がついさっききました」


 平原に死臭の濃い匂いが吹いてきた。



二章以降から空気感が確実に変わってしまうので内政タグを追加しました。


「面白い!」


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