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第十三話 俺の能力とは?

 夢の世界にご招待された俺は目の前のサフィーネという天使を疑わしげに眺める。


「そんなに眺めないでよ、僕照れちゃう」


 サフィーネは体をクネクネしながら両手で頬を押さえ顔を赤くする。

 なんだこの天使、わざとらしい演技しやがって。

 演技とわかったのはサフィーネの目がそれほど笑ってなかったからだ。


「いや別に疑わしいなーと思ってただけだよ?」


「君は本当に天使とか信じてないんだね」


「だってな、生前天使になんて会うわけないし、存在を疑わざるをえないだろう?」


 実際にあの現代日本に天使が現れたらパニックになるだろう。

 それかこいつなに言ってるんだって思われるだけではないだろうか?


「まあ、あの世界とこの世界の神は違うからね」


 どう違うのか気になったが、知っても意味ないと思うので聞かない。

 それより俺には確かにサフィーネの言うとおり、聞きたいことがかなりある。


「それは別にいいよ。

 で、本題なんだけど俺の能力ってどうなっているんだ?」


 これが俺の一番聞きたいことだった。

 カイの記憶をマネしただけで湖を荒野にしたり、元に戻したり、山を崩して元に戻したりなんてできるわけない。


「どうって、小説家だった君の能力を強化しただけだよ?」


「いやいや、小説家にあんな力あるわけないだろう」


「いいや、あるよ。君の能力は創造と破壊の力だ、それと精神力。

 僕はそれを神レベルまで引き上げただけだよ」


 なんかしれっとおかしいことを言っているが妙に納得してしまった。


「それってチートじゃね?」


「うん、君の言葉で言うならチートだね」


「でもそんな力が俺にあったのか?」


「小説家という存在はそれだけの力があるよ。

 彼らは日々物語を創造し破壊している。

 その物語は空想の産物だけど、ちゃんとした世界だ。

 そして表に出せなかった世界は人知れず破壊される。

 言い換えれば世界を作り、壊す。

 そして、書き続けるための精神力。

 それが常人より少し上のレベルなんだ、本当に少しだけどね」


 他の小説家がどう思うか俺は知らないし知っても意味ないが、俺のイメージする小説家は確かに日々物語を考え、話にしたいと思っていたことができない場合、その世界を忘れ去るか、なかったものとして考える存在だ。

 逆に物語をそのまま書ければ、それは世界の創造に他ならない。

 そして書き続けるためには執念にも近い精神力が必要だ。


 俺は生前小説を書いていて、そのあたりはよくわかっている。

 仕事終わりに小説を書くのは本当に好きじゃないと続けられなかったと思う。

 だからサフィーネの言うことに納得してしまったのだ。


「でも俺は別に破壊の力なんて使おうと思ってなかったぞ?」


「それは君が無意識に破壊の力を使ったからだよ」


「制御できるものなのか?」


「そうだね、制御は難しいかもしれない、やることなすこと、全てに創造と破壊の力をいれてしまうと思う。

 これは僕の失敗さ、リミッターを全て外してしまったからね。

 今さら直せないし」


「天使が失敗するものなのか?」


「天使だって失敗くらいするさ」


 ほう、天使も失敗するものなのか、意外と人間らしいな。


「じゃあいいよ、次の話をしよう。

 この世界と俺の小説の世界は違うがどういうことだ?

 というか俺の小説は空想ではないのか?」


 これが次の疑問だった。

 俺の小説の世界とこの世界は同じようで違う形をしている。

 空想のはずの世界が存在するとは考えられない。


「君の小説がカイ・ライトニングを中心とした話なのは本当だよ。

 ただあくまで空想の域だ、彼の体験した出来事をいろいろアレンジして書かれている。

 だからあの小説と同じこともあるし、全く違うこともある」


「なんで俺はこの世界のことを空想として考え出せたんだ?」


「君の考えた小説は夢を通して君の頭の中に流れていた。

 君は生前不思議な夢を見ていなかったかい?」


 それは覚えている。

 俺自身はただの夢と思っていたが、そうでもないらしい。

 夢とは、脳が記憶を整理する時に見るものと言われているはずだが、俺が見ていた夢は生活しているなかで経験しえない、ファンタジーの夢が多かった。

 それゆえに、小説にその夢で覚えている内容をおぼろげながら書いたりしていた。

 夢なんてのはずっと覚えられている訳がないので、覚えている内容を書き終えると、そこから先はオリジナルの展開を書いていた。


「なるほど、そんなことあるのか?」


 話を聞いたが、そんなわけないと思う。

 それだったら現代世界は俺が考えていたような普通の世界ではないということになってしまう。

 いやしかし、現代の世界はもしかしたらそういう世界だったのかもしれない。

 でもファンタジーすぎねーか?


「それで僕たちはこの世界のことを自覚しなくても知っている人物をジオグラードっていう人物に探すよう告げ、それが君だったというわけなんだ」


 なにが、というわけなんだ、だよ!

 て言うかまたジオグラード?

 ん?ちょっと待てよ、なんで俺を探し出せたんだ?

 そんな人物、俺は知らないのだけど?


「君は知らないかもしれないけど、あの現代に逆転生した人物がいるんだ。

 その人物がジオグラードだよ。

 心当たりはないかな?」


 少し考えたが考えるほど、そんな人物に該当するのは一人しかいなかった。

 では声を大にして言おう。



 もしかしなくても、あのマスター?!



「ええっと、もしかして売れない喫茶店とか経営していたマスターですか?」


 俺はなんとも言えない呆然とした顔でつぶやく。


「そうだよ」


 嘘だろ、あのマスター、ジオグラードだったのかよ!


「いやいや、そんな雰囲気微塵も感じなかったのだけど?!」


「それはそうだよ、ジオグラードっていう人物は転生した時に魔法を使えなくなって、全く別人として生まれたからね。

 もちろん、この世界の記憶を持ちながらね」


 もうなにも信じられない!

 とか思ったが、事実だと思うので信じよう。


「なにもかも騙された!」


 しかし、現代にそんな面白要素があったのかと逆に楽しくなった。

 別に戻りたくないけどね!


「だましたわけじゃないよ、君を拾ったのは偶然だったけどそれで君が適性者だとわかった。

 見つけた後に本来、あの世界で天命を終えた後に転生させるつもりだったし、少し計画が狂ったんだ」


 聞きたくない、そんな話聞きたくないぞぉ!

 どうあがいてもこの世界には生まれる運命だったらしい。

 天使、マジで信じらんねぇ。


「計画が狂った?どういうこと?」


「あの事故あっただろう?あれはあの世界の神の手違いだ。本来君はもっと生きるはずだったんだ」


「うそ、だろ」


 あの世界でいつまで生きられたのだろう。

 少し気になったが今となってはどうでもいいことだった。


「あの世界で君が死んだときはこっちは大慌てだったよ。

 魂が行方不明になっていたからね。

 このままだとこの世界を救えるはずの人間が別の世界で生まれてしまう。

 だから見つかった時は安心したよ。

 それで急遽あんな方法をとったんだ」


 左様ですか。

 俺はそう考えるしかなかった。

 もしかしたらあの現代世界は別の世界から転生した人物も他にいたのかもしれない。

 なんせあのマスターがジオグラードだったのだから。


「もういい、わかった。

 なんか考えるのバカバカしくなった。

 じゃあ、次の話にする。

 アーティファクトというのが神の体の一部っていうのは本当なのか?」


「本当だよ、君が転生してきたときにカイに名前をつけてもらっただろう?」


「ああ、なんか時空神だとか言っていたけど」


「その時空神アトロパテネスの体だよ」


 滅んでいたのか、時空神!

 またしてもおかしいことを聞いてしまった。

 時空神ってどういう存在なのか知らないけど、時空の神だからやっぱり維持する力もあったのだろうけど。


「はぁ、うん、なんか疲れた!」


 俺は子供みたいにそう言う。

 ここまであまりに規模の違う話を聞いてきたせいでなんとなく疲れました、はい。


「君が聞いた話は本当の話だよ。

 時空神は世界を維持する力があった。それどころか他の異次元全体を維持する力があって、この神がいなくなると全ての次元を巻き込んで最後にはなにも残らないんだ。

 じゃあなぜ滅んだのかと言えば、破壊されたが正しいね」


 神を破壊できる力を持った人物なんて神しかいないんじゃないのか?

 でもそんなことをわざわざするような神なんていないだろう。

 どういうメリットがあるのだろう。

 

「破壊された、ね。

 ということは誰かに破壊されたのか?」


「うん、犯人は僕達も正しく把握していないけど、恐らく魔神と呼ばれる存在かもしれない」


「魔神?」


「そう、いまこの世界にいる魔物の神といっても言いかもね。

 その魔神は全てを無に返したあと魔物だけの世界を作ろうとしている、魔神は無から生まれることができるからね」


 もはや魔神がチートであった。

 あまりの規模のおかしさに俺はつい笑ってしまう。


「ハハハ、なんかすっげーやばいんだな!」


「現実逃避している場合じゃないよ!」


 サフィーネは俺につっこむ。

 現実逃避いいではないか!


「すまんな、あまりに規模がおかしいのでもう笑うしかないなと」


「まあ、いきなりこんな話しても混乱するだけだし気持ちも分かるけど。

 巻き込んで消滅するのはずっと先の話だし、別に無理にとは言わないよ、君がこの世界で楽しんでくれればそれに越したことはないんだ」


 もし俺が投げ出したら多分、天使はまた適性者探しを始めるんだろうな。

 天使は恐らくどっちでもいいのだ、魔神を俺が倒そうが倒すまいが。


「いや、不安材料があると素直に楽しめないしな。

 もちろんこの世界を楽しむことは決定なんだけどな」


「そうかい?投げ出してもいいんだよ?」


 正直な話、俺は投げ出してもいいとは思っている。

 でも、それはそれで天使の思惑にはまっているような気もするし、なにより俺が楽しめない。


「いいよ、楽しむために世界、救ってやる。

 ただし、飽きたらやめるからな!」


「もちろん、かまわないよ。

 あっ、そうだ。あのアーティファクトなんだけど他の人の精神力に合わせるとその人の潜在能力を引き出せるよ。

 ただ時間制限付きだけどね。アーティファクトは元の形に戻るけど、最終兵器として使ってみてほしい。


 でも君は既に完成されてるからこのアーティファクトの効果は一切受けられない。

 それでも君はこれまでの適性者よりもはるかに世界を救えるだけの力がある。

 創造と破壊の力はそうそう得られるものじゃないんだ、もし神だったら最高神として崇められるレベルの能力だ」


 サフィーネの言うことを考えるに、これまでも適性者を見つけては送り出してきたのだろう。

 だが、俺の能力は普通ではないらしい。


「もうそろそろ夜明けだね、またそのうちに様子を見に来るよ、それじゃあね!」


 そう言うとサフィーネは白い光となって消え去って俺の意識も薄れていく。


 そして、朝が来たのだった。

誤字報告感謝です、ありがとうございます!


「面白い!」


「続きが読みたい!」


と思ったら


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