第十二話 魔物と天使と
なんというか、修羅場?が終わった後俺は部屋に戻ってきていた。
「はぁ、疲れた」
別に体は疲れていなかったのだが、精神が疲れた。
ノルンは一体どういうつもりなのだろう?
あんまり気にしてはいけない気がする。
「どうした?修羅場でも経験したような顔をして」
ベットに座っていたカイは俺にそう言う。
いや、エスパーかよ!
「なんだよ、見ていたようなこと言いやがって」
「いや、うん。なんか面白そうだったから階段から話を聞いてたぜ☆」
「見てたんじゃねーか!」
全力でツッコミをする。
いや面白そうって。
確かに周りから見たら楽しんだろうな!
「まあ、別にいいんじゃねーの?新しい仲間が加わること位は」
「鑑定士っていうならこのアーティファクトの見分けができるかもしれないし、俺もノルンが仲間になるのは悪いわけじゃないんだけど。
なんか別の意味で疲れそう」
手に持ったアーティファクトをチラッとみながら言う。
俺はなにか呪われているのだろうか?
二度も初対面の女性に惚れられるなんて生前でもなかったし、そもそも俺は女性の扱いがよくわかってないので困るしかない。
とはいえ、まだノルンの鑑定士としての力はどれ程のものかはわかってないし、様子見するしかないな。
「モテる男はツラいねー」
なんてのんきなことを言うカイだった。
「はいはい、それでアーティファクトなんだけどカイから見てどう思う?」
俺は手に持っていたあの水晶をカイに見せながら言う。
「ノルンの話は間違いではない。この1000年間で魔物が現れ始めたのは大体500年前からだ」
「そんな昔から存在していたのか」
地球の日本でいれば大体500年前と言えば、戦国時代くらいのはずだ。
うむ、昔って気がするな。
「ああ、あの世界中に散らばっているとされる欠片は突然空から数多くの流星として世界各地に降ってきたものだ。
当時のこの世界の人々は世界の終わりだとか言っていたやつもいたけど何が起こるわけでもなく、それは一時的なものだった」
「カイもその光景みているんだな」
「そうだな、みている。お前にも記憶を渡しておこう」
そう言ってカイは記憶共有を始める。
カイがその光景を見たのはどこかの町らしく、俺には空を見上げている光景が頭に流れてくる。
多くの光の粒が白くまぶしい光となってあらゆる方角へ流れていく。
俺が覚えている生前の記憶では、この光景は流星群の数をもっと増やしたらこんな光景になるだろう。
まあ都会だったから空はあんまり見えなかったけどね。
「見ている限りはキレイだけど、神の体だとしたらそうも言えまい?」
記憶共有を終わらせるとカイはそう言ってくる。
確かにそうなんだけど、それとは別に気になることがあったので聞いてみる。
「そう言えば、ドラゴンは魔物じゃないのか?」
前に話を聞いたときはドラゴンは竜騎兵として使われてもいるらしいが、俺からすれば魔物を使っているイメージがあった。
「ドラゴンは魔物じゃない、あれは知能があるし人間よりも知識が多いし理性もある。
言うなれば究極の生命体みたいなもんだ。
それにドラゴニアっていう人の形になれる種族もいるし、国も作っている」
「人の形になるドラゴンなんているのか?」
「まあ、完全に人間ってわけじゃなくてうろこのしっぽはあるし、角とかも生えている奴もいるし、何より翼が背中から生えているから人間とすぐ見分けはつくぜ」
なにそれみてみたい。
ドラゴニアって話を聞く限りではファンタジーでお馴染みの龍人とかドラゴニュートと呼ばれるあの種族だろう。
「逆鱗とかもあるんだろうな」
「そりゃあ、元はドラゴンだしな。
外見はほぼ人間で違いはそれくらいだ。
元の形である普通のドラゴンにもなれるそうだけど」
「会ってみたいな、ドラゴニア」
「きっとそのうち会えるだろう、この世界で生きている限りは」
「そうだな。話を戻すけど、それじゃあ魔物ってのは理性がないのか?」
カイの話を聞いてると魔物は理性がないっていうことになりそうだけど。
「基本的にはないな。
ただ500年のうちにいろいろ変わって人語を話す魔物なんてのもいるらしい。
尤もそいつらは人間に対して友好的な魔物で、国はないがあちこちに集落がある」
「危なくないのか?」
「そいつらは別に危なくないな。
むしろ理性のない魔物から嫌われるらしく、集落を襲われたりされている。
それで住む場所をなくした魔物もいて、そんな魔物は人間の国に来ようとするが、人間からすれば言葉を話せる魔物なんて基本的にはいないとされているから、追い出されたりすると聞いた」
不幸な魔物もいたもんだな。
少し同情してしまったが、この世界の常識としてはそうなのだろう。
罪もないは違うかもしれないが、戦う気のない魔物達をどうにかしてやりたい気持ちになった。
でも俺にはそんな力はない。
「それって誰から聞いたんだ?」
聞いたと言ったがカイの言動は魔物と話したことがあるように聞こえてしまう。
まあ、出現して500年もあれば魔物と話す機会もあったのかもしれないが。
「そりゃあ、魔物からだよ。
この近くにも昔魔物の集落があってな、今も存在しているかは知らないけどな」
昔ということはカイはしばらくここには来ていなかったということになりそうだけど。
どんなもんなんだろう、聞いてみようかな?
「そう言えば、カイってなんであの草原で休んでたんだ?
ここまでの話を思い返すとリヒテリンス共和国の方角から来たのはわかるけど」
ものすごく今さらな感じもしたが、カイと初めて出会ったあの場所になぜカイがいたのか気になった。
「唐突だな。いやなに、簡単な理由さ。
ここの大陸に来るのは久々だったから共和国で船を降りた後、王国に来ようとしている道中でちょっと休もうと木の下で寝てただけだよ。
それ以上でもそれ以下でもない」
「そう言えば、カイは旅人だったんだっけな」
「まあ、突然天使からよろしくね☆なんていわれて驚いたのは確かだけどな!」
「だよねー……なんでカイを選んだんだろう?」
転生小説の始まりは大体子供の頃から始まる、もちろん他にも方法はあったけど。
なんなら魔物に転生してしまうという衝撃の小説もあった。
俺も小説の参考にいろいろ読んだしな。
「言い忘れてたけど、俺に縁の深い人物って話だったぞ?まあ、アトスと俺の関係なんてわからなかったけどな」
カイと縁の深い人物。
カイにはわからなくても俺には分かる。
俺の小説の主人公だったのだから。
その話を聞いてあの天使は俺の小説でも読んでいたのか?なんてバカみたいなことを考えた。
そんなことをする意味がわからない。
大体あの小説とこの世界の形は同一ではないということはこれまでの出来事でよくわかっている。
「そうか、天使がそう言っていたのか」
「俺はこれはこれで楽しいからいいんたけどな」
カイって本当にのんきな奴だな。
いつでも笑っているイメージがある。
「さて、それはいいとしてもうそろそろ夜だ。今日はいろいろありすぎたし、寝ないか?」
カイはベットに入り込む。
確かに外はもう暗くなってきていて、この部屋も暗くなってきている。
この世界には電気という概念は帝国はどうだかわからないけど、無い。
なので、部屋を明るくしようとするとロウソクとかランプが必要だ。
多分、部屋を明るくする魔法石なんかもあるだろうけど、俺の手持ちにはない。
暗い部屋でやることもないし、俺も転生してまだ一日しか生活していない。
素直に休むとしよう。
そう思って俺もベットに入り込む。
すると思ったより疲れていたのか、眠気が襲ってきたのだった。
☆
「やあ、転生した世界で楽しんでいるかな?」
その声は突然だった。
俺は寝たと思ったのだけど。
というか、また思念だけの存在だろうか?
聞き覚えのある声だったので転生する前に会ったあの天使だろう
「天使なのか?」
試しに声を出してみると、あの少年のような声だった。
どうやら思念だけではないらしい。
目を開けるような行動をしてみると視界が開けてきた。
そして視界に入ってきたのは頭に天使の輪をつけていて、背中に白い羽が生えた少年か少女かわからない子供の姿の人物だった。
「やあ、アトス・ライトニング、でいいのかな?一日ぶりだね!」
その天使は笑う。
どうやらこの人物が俺を転生させた人物のようだ。
天使で合ってるよな?
「別にどちらでもいい、それはお前の好きにすればいい」
「わかった、じゃあアトスと呼ぶよ。今の君はサトシという名前で呼ばれたくないようだし」
俺の眉毛はピクッとするが、気にしないことにした。
「それで、ここはどこなんだ?」
「ここかい?ここは一応夢の世界としておこうかな?」
その天使は首をかしげ、こちらをみる。
「他にも何かありそうだったけど、じゃあ夢の世界でいい」
「わかった、そうしておこう。君には聞きたいことがあるはずだね?
僕が答えられる範囲で教えてあげるよ」
この上から目線、いやな感じだ。
「なんか僕、嫌われている?気のせいかな」
「あいにく、天使とか神とか信じてないんでな。お前の存在を疑ってる」
「ひどいなぁ、せっかく転生させてあげて、言語機能もあげたのに」
天使は少し悲しみの表情をする。
「やっぱり言語機能は天使が追加した機能だったのか。
異世界に来て言語とか字が分かるなんておかしいと思ったんだ」
「そうだよ、あっ、僕の名前を教えてないね、僕は天使だけど名前があるんだ、覚えてほしいな☆
名前はサフィーネだよ、よろしくね!」
サフィーネは背中の羽をバサバサさせながら俺に言う。
さて、いろいろ聞きたいことがあるが、何を聞こうか?
自己紹介を聞きながら俺はそんなことを考えていた。
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