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第百十一話 怒られました!

「あの、怒りますよ?仮面様、いえ、アトス様」


 唐突にそう言われた。

 目の前には緑色のポニーテールの女性がいて、頬を膨らませて怒っている。

 原因は間違いなく俺にあるので返す言葉はないが。


「でもこれが、俺の選んだ道だよ」


 目の前の女性にそう言う。

 シャーリーの研究室で事細かに俺が何者なのか、全部話した。

 転生してきたこと、寿命のこと。

 全てだ。


「少し前まで自暴自棄になっていた人間が何を言っているのかしら」


 振り向かないでイスに座ったままのシャーリーがそう言う。


「返す言葉もございません」


 で、話終えてのサグナの一言が今のセリフだ。

 サグナからすれば二年ぶりの俺との会話だったが、仮面を着けていないので、手探りで話された。

 しかし、俺の話を聞いていくうちにどんどん怒りが湧いてきたらしく、この状況だ。


「アトス様は私だけの人だと思っていましたのに、何人恋人いるんですか!?

 信じられません!」


「いや、うん、何も言えないな」


「しかも口調まで違うじゃないですか!そちらの方が元の話し方なのですね?」


「そう、これが俺の素顔だよ」


 サグナからすれば仮面の下の素顔を見るのは初めてなので、やはり恐る恐るという感じで話している。


「前に素顔で話せればいいねって言っていましたけど、アトス様の顔は少年のままで止まっているのですね。

 しかも、元の体の持ち主もいらっしゃるとか」


「ここまで話しておいて難なんだが、まだそれでも好きだと言えるのか、サグナ?」


 寝耳に水もいいところの話だったであろう彼女は思案する顔になる。

 蓋を開けてみたらただの人間でハーレムを作っている理想とは違う俺のことを好きでいられるわけはないのだけど。


 少しの間何やら考えていたが、サグナは突然頬を赤く染めてこちらを見つめる。

 どうしたんだろう?


「二年間もずっと想い続けてきたこの気持ち、今更捨てられるわけないじゃないですかぁ……

 ひどいです、アトス様!

 好きになった時点で私が離れられるわけないじゃないですか」


「え、それでも好きなの?」


 思わず俺はそう聞いてしまった。

 同時になんかこそばゆいような変な感覚に陥った。


「許しません。一生許しません。

 ですから頭を撫でて下さい!

 じゃないと、私、また死にたくなります」


 はい?

 なんて?

 この流れでそんなことを言うのか。

 言っていることが矛盾してないか、それ。


「それは困る。折角助けたのにまた死なれちゃ、俺も立ち直れない」


 そう言って、俺はサグナの頭を撫でるのだった。

 頭を撫で始めた途端にサグナは頬とか口とかをフニャフニャし始めてなんとも言えない幸せそうな顔でにやける。

 彼女からすれば待ち続けたご褒美なのかもしれない。

 それも二年越しの。


「えへへ、アトス様ー大好きですよぉ」


 とろけた声で無意識にそう言ってしまったのか、口に両手を当てて顔をゆでダコみたいに赤くする。

 なにこの人、めちゃくちゃ可愛いんですけど。


「私の研究室でイチャイチャしないでよ、もうっ!」


 シャーリーはイスに座りながら恥ずかしそうにこっちの様子を見て頬を膨らませる。


「ハッ、そうでした!ここは屋敷の客室ではないのでしたね……」


 我に返ったサグナは満足したのか、俺から慌てて離れる。


「それで、サグナさんは結局アトスといるの?」


 イスを回転させて、体をサグナの方に向けシャーリーは質問する。


「まだ200年後の世界だという話は信じられませんが、アトス様がいらっしゃって一緒に歩めるならどこだろうと構いません。

 私、この世界でアトス様と生きたいです」


 サグナは決意を込めた瞳で俺を真剣に見つめ、シャーリーの質問に答える。

 もしかして、俺が好きだという気持ちは他の誰よりも負けてないのかもしれない。

 それは自惚れ過ぎるし、そこは謙虚に受け止めることにする。

 ともかく、サグナは俺とずっと一緒にいたいらしい。


「そう、じゃあ、よろしくね、サグナさん。

 自由連合国に帰ったらこのどうしようもない人が好きな他のみんなを紹介するわね」


「はい、よろしくお願いいたします、シャーリー様!」


「様、なんて、私達の間では言わなくていいわよ」


 シャーリーは手を振ってそう言う。

 そういえば、サグナって何歳なんだろう?

 屋敷の時のサグナはまだ若くて、ここにいるサグナは二年経ったというのを感じさせない外見だ。

 見た目的にはリコリス達と同世代かな?

 女性に年を聞くのは失礼なので俺は極力聞かないことにするが。


「良いのでしょうか?つい、メイドだった時の癖でいまだにそう呼んでしまうのです」 


「サグナさん、見た感じ私達と同じか、年上だからかしこまらなくていいわよ?

 ちなみに、私は18歳よ」


 そういえば、俺はみんなの年を知らない。

 シルキーは11らしいけど。

 シルキーはアウトだよな、年だけ聞いていると。

 リコリスは魔法学校を卒業して間もないらしいので多分18だと思うんだけど。


「あっ、そうなんですか、やはりシャーリー様と呼ばせて頂きますね、私、一つ下の17歳なので」


 ということはだ。

 俺のメイドをしていたときはまだ15だったってことか。

 うむむ、なにやら危険な香りを感じる。

 だが、それはもう過去の話なので気にしたとこで意味がない。


「でも、折角同じ人を好きなんだから、仲良くしましょうね、サグナさん」


「ええ、私はまだシャーリー様のことしか知らないのですが、仲良くさせていただきますね!」


 そう言って二人して笑う。

 のだが、好きな人の当人である俺はその話を恥ずかしく聞いていた。

 目の前でそんなことを話されて恥ずかしくない人なんているのか?

 そんなことを一人で考えたが、二人は全然気にしていないようだった。


 ハーレムでも作ってなかったらライバル同士で火花バチバチになりそうだな、この光景。

 まあ、俺はもう幾度となく修羅場らしきイベントに巻き込まれまくってるけど。


 この場に他の女性達が居なくてよかった。

 シャーリーは退屈しないからと楽しそうだったけど、俺にとっては絶望するか否かだったので他の女性には見せたくない姿だった。


 情けないことこの上ない。

 本当にシャーリーには感謝してもし足りないくらいだな。


 楽しそうに話し合う二人を俺は眺め続けていた。


 マジェス魔道国はエルフィリン樹神国に近づきつつあった。

 マナの供給停止は一大事なので早めに解決したいところだが、アーティファクト絡みだと思うので気は抜けない。

 俺としては今回のは一大事イベントだったが、世界は動き続ける。

 まあ、そこそこ休めたし、サグナも無事に助けられた。

 あとは樹神国を助けに行こう。




これで第四章完結です!

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