第九話 白い水晶と宿屋の娘と
俺とカイの部屋。
スイートということで、めちゃくちゃ豪華な部屋で、おいてあるものはどれも高そうなものばかりだった。
「カイさん、あんたイカれてるよ」
「ハッハッハ、よく言われる!」
目を覚ましたカイに改めて話をする。
「あんなにお金持ってたのかよ」
「だから言ったろう?数えるのをやめたって」
確かにあれだけお金を持っていれば数えるのをやめる気持ちがわかった。
「いいのか、あんな大量のお金、俺が使っても」
あれだけのお金となるとさすがに申し訳ないので聞いてみたのだがカイは、
「全然いいって俺が持ってても使い道ないし、眠らせておくよりも使ってくれた方がお金も喜ぶだろう。
それに俺が使いたいときは勝手に使うしな」
どうやって取り出すのだろうか?
と思ったが空間袋の魔力の糸はカイにもつながっているのだろう。
草原で出会った?は間違いかもしれないが、その頃にはあのパールとか言うペットボトルに似たものを空間袋から取り出していたことを思い出した。
「道具の共有ができるなら財布の共有もできてるってことか」
「うむ、その通りだ、だから気にするな、というか0ゴールドになるまで使ってみろ、無理だろうがな!」
そういわれて挑発に乗ってしまった俺も俺だが、
「わかったよ、やってやる!今に見てろ!」
と盛大に宣言してしまったのだった。
カイにうまくのせられたが、多分カイは俺に遠慮をさせないようにあんなことを言ったのだろう。
カイは本当にいいやつだった。
いや、こう言うとなんかの死亡フラグっぽいな!
☆
一通りカイと話した後、俺はスイートルームから出て、一階に降りてくる。
スイートはやはり二階に設置するのがいいんだろうな。景色がいいし。
この宿屋の一階は大広間がロビーとなっているようで、四人が座れる大きなテーブルが二つある。
宿屋の主人はこちらの姿を見ると一礼する。
俺は店主の元へ歩いていく。
「お客様、どうされましたか?お出かけですか?もうそろそろ日が落ちるので、用事は早く済ませるとよいかと思います。
酒場に行かれるのでしたらお引き留めはしませんが」
「いや、別に外に行く用事はないんだけど、ちょっとこれ見てくれるか?」
いや、酒場とか気になるんだけどね。
どうでもいいが、この世界の成人は何歳なのだろうか?
一応小説では15歳としているけど。
そんなことを考えながら俺は空間袋からあの白い水晶を取り出す。
「ええ、構いませんが、なんでしょうか?」
主人は俺の近くに歩いて来たので、俺は白い水晶をカウンターに乗せる。
カウンターに置かれた白い水晶をひとしきり眺めると主人は、
「ふむ、これがどうかしたのでしょうか?」
と言って疑問の顔でこちらを見てくる。
「ひとつ聞きたいんだか、この水晶について知っていることはないだろうか?」
「なるほど、少々お待ちを」
そういって主人はカウンターの奥の主人専用の部屋へと入っていき、少しの時が流れる。
出てくると、主人の後ろに隠れている俺と同じくらいの身長をした少女が黄色い瞳でこちらを見てくる。
主人の子供なのだろう、髪はセミロングで左目を覆い隠していて、右目しか見えない。
髪の色は主人と同じ青い色だった。
同じ身長ってことは16か17ってところだな。
胸はあんまりない。多分リコリスより小さい。
そんな彼女はファンタジーの村娘によくありそうな服装で、布の服に足元まで伸びたスカート姿だった。
「ほら、ノルン。
お前の得意な知識を生かす時だ」
「でもお父様、あの方は男性でしょう?」
その少女は明らかに怯えてこちらをみていた。
男性恐怖症なのかもしれない。
試しに怖がらせないようにニコッと笑ってみせるのだが、主人の背に隠れられてしまった。
「ああ、そうか、そうだったな。
すまないな気づけなくて。
アトス様すみません」
「あ、じゃあ俺あそこのテーブルで待ってますから」
事情を知った俺はそう言ったが、主人の背中に隠れていた少女が引き留める。
「あっ……ま、待って、大丈夫だから」
男性恐怖症ではないのだろうか?
「え?大丈夫なのか?」
「うん、あなたは……悪い人には見えない」
震える声で俺に言うノルンと呼ばれた少女。
「大丈夫かい?無理しなくていいんだよ?」
主人が優しく少女に聞くとゆっくりと首を縦に振って、主人の背から出てくる。
「あの、初めまして。
私はノルン・フォーミストです。えっと……アトス様?」
「ああ、初めまして。
アトス・ライトニングだ、アトスでいいよ、それに普通に話してくれて構わない」
「いえ、お客様と、聞いていたので……そんな話し方をするわけには」
「いいよ、アトスって呼んでくれ」
「わかっ、た」
ノルンはこちらに歩いてきて、白い水晶を眺める。
「どうかな?わかる?」
先程明らかに怯えていたので、俺もなるべく優しく話しかける。
「これは……えっと……アーティファクトと呼ばれるもの……アトスはどこでこれを手に入れたの?」
アーティファクト、聖遺物とか言うあれか?
なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ?
「えっとね、これはエルダートレントって言う魔物が落としたんだ」
「なんと、お客様はエルダートレントと戦ったというのですか?!」
やはりエルダートレントとは有名な魔物のようだ。
こんなに驚かれるとは。
「そんな……エルダートレントって伝説でしか、話が残ってないのに」
ノルンはこちらを見て目を見開く。
「あー、いやフォクトリア湖の近くに森林があるだろ?あそこの森で襲われていた女性を助けたときに手に入れたものなのだけど」
「そう、なんだ」
なぜだがノルンは何か残念そうな顔をしているのだが、俺にはその意味は分からない。
「いやはや、お客様には驚かされるばかりです」
「あの……その女性とは、その……付き合っているの?」
なぜそんなことを聞いてくるのだろうか?
俺は少し困ってしまった。
☆
その少年のような男性は私を見るとニコッと笑ってこっちを見てくる。
思わず私は父の背に隠れてしまった。
怪しいと思われなかっただろうか?
私の姿はそんなにおかしかっただろうか?
不安になったがよくよく父の背から少年の顔を見てみると別に何かがおかしくて笑ったわけではないらしかった。
もしかして、私を怖がらせないようにしてくれたのだろうか?
もしそうならあの少年は恐らく優しい性格なのだと思う。
私は子供の頃、村の男子にからかわれたり、髪で片目を隠しているのを気味が悪いと言われたりした。
そのせいで男性という存在は父以外苦手になった。
外に出たくなくなって、父に旅人さんの話を聞いたり、昔の話を聞いたりして時間を過ごしていた。
あの頃から私はいろいろな童話とか過去の出来事、伝説を調べていった。
そうしているうちに父より詳しくなって、最近ではお客さんがよく分からないものを拾ったりしてここに来た時、私は鑑定士のようなことをしていた。
父は私が生まれてすぐ母が亡くなった後、私を一人で育ててくれた。
そんな父は、私を否定せず、自分の誇りだと言ってくれたただ一人の男性だった。
でも、今目の前にいるこの少年は父と同じ笑顔を浮かべていた。
この人ならもしかして私を変えてくれるかもしれない。
そう思った。
でも話を聞いているうちにアトスという少年が助けた女性の話を聞かされ、自分の心が面白くないと言っているのを自覚してしまった。
そして思わず聞いてしまったのだ。
「あの……その女性とは、その……付き合っているの?」
そんなのいや。
誰かに取られたくない、私はそう思ってしまった。
☆
「いやいや、そんなわけないでしょ、まだ助けて一日も経ってないし」
俺は否定した。
するとノルンはあからさまにホッとしたような表情を浮かべる。
一体何を安心したのだろうか?
まだ出会って間もないのに心配になる要素などあっただろうか?
そんな俺とノルンの会話をみて主人は何か確信したような表情になる。
え?なに?
俺だけ分からない系ですか?
なんて考えていたが、アーティファクトとはどういったものなのだろう?
「そんな話はいいとして、アーティファクトってのは、どういう話があるのか聞きたい」
「わかっ、た。アーティファクトは、神のカケラと言われるもので……手にしたものは、破格の力を手に入れられるって、話があるの」
「そうなんだ」
確かにあのトレントはリコリスが言うように強かったらしい。
俺は実感しなかったが、そう言うのだからそうなのだろう。
「もし、エルダートレントからこの欠片が落ちた……のだとするなら、エルダートレントになったのは、これの影響」
ノルンは一生懸命に話す。
頑張って話している姿はみていると微笑ましくなってくる。
もし本当に男性恐怖症なら相当の勇気を出しているだろう。
「やっぱりか、そうなのかなとは思ってたよ」
「もうひとつ……話が、あるの。
その、欠片が世界中に散らばってから魔物が現れ始めた……って伝説が、あるの」
「え?そんな話があるのか?じゃあこの欠片は一体なんの役割をしていたんだろうな」
もし伝説通りならこの欠片は元々1つで、魔物の出現と関係しているなら魔物を封印していたとかそんな種類の話になってくる。
「その、欠片には……いろいろ、仮説があって、もしかしたら神様自身の、欠片かも、しれないって」
「神自身の欠片?それってこのアーティファクトは神の体の一部ってことなのか?」
「そういう、仮説があるの」
なんだか、とんでもない規模の話になってきたぞ?
俺は異世界転生してこの世界を楽しもうとしているだけなのだけど!?
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