(4/14)太陽が地球の周りを回っているんじゃないんだ!
ところがこの『中原紗莉菜』という人は難物だった。何を話しかけようが簡単な返事しかしてくれなかった。何ヶ月たっても『単なる同期』から抜け出せなかった。
特に『キーホルダー事件』ね。思い出しても腹立つわ。
さすがのミツヒコも1年経てば自信なくなってしまった。178センチの堂々とした彼女から見れば165センチの自分など『アリ程度』である。人の目を気にしてばかりの『小市民』である。あまり話しかけなくなった。
せっかくエレベーターで一緒になって。中原さんのキーホルダーという『死ぬ程無難な話題』を振ったのに対応は素っ気無いものだった。
『いいですよー。どうせオレなんか』とその場を去った。
ところが!! 同じキーホルダーを同期の上条相手にメッチャいきいき話しているではないか!!!
『かーみーじょーうー!!!』
と家に帰って壁を殴った。『これが嫉妬か!!!』と思った。今まであまりにモテてきたので嫉妬されたことはあってもしたことなどなかったのだ。
それが、なぜか? なぜなのか? それから1ヶ月しないうちに中原が自分の彼女になっていたのだ。
嬉しいけど? 嬉しすぎるけど? なんで????
最初のデートで気づいた。『もしかしてこの人男なれしてないだけなんじゃないの?』
ウッソでしょ!? あんな堂々としてるのに? 男友達も山ほどいるのに? 上司の男たちとも毎晩飲み歩いているのに!?
コペルニクス的転回!!
太陽が地球の周りを回っているのではなく、地球が太陽の周りを回っているのだ。
中原はオレだけを相手にしていないのではなく、『オレだけが』特別なのだ。だからオレにだけ態度が違うのだ。
『そういうことだったのか!!』
そう思って対応すると何もかもが可愛いかった。手を繋いでも赤くなる。キスをしても赤くなる。肩を抱いても赤くなる。
新雪を真っ先に踏みしめるような喜びがあった。彼女の初めてを自分で埋め尽くしたかった。
中原紗莉菜というのは付き合ってみると直情的な人であった。よくあれで1年も自分の気持ちを隠しおおせたものだ。そりゃあ気持ちを悟られまいとしたら『アリを踏み潰すゾウ』みたいな視線にもなるわ。お陰で1年も苦しめられた。
同期全員の前で付き合っていることを暴露されたときは本当に参った(ミツヒコがだいぶ悪いんだがな)
全員から砂糖に群がるアリみたいに群がられて質問攻めになった。
「どっちから好きになったの!?」
「どうやって告白したの!?」
「キスしたのいつ!? いつキスしたの!?」
「初エッチどこなのーーー!?」
それに一々答えようとするではないか。何もかも!しゃべっちゃだめだって!!!
必死に止めてると上条がスススーっとやってきて「ねー。花沢くーーん」と耳打ちした。
「耳まで真っ赤ですよー!?」
「!!!!!」
だから! やだったの!! 付き合ってること言うの!!!!
【次回】ハムスターと空のゲージ