(14/14)もう令和なんだから
たくさんの恋が生まれて、たくさん消えてってしまうね。まるで泡みたい。海底で生まれて。水面に達して。消えてしまう。でもそのうち1つくらいは愛にかわるよ。2人ともおめでとう。
結婚は楽しいことだけじゃないよね。ねえ知ってる? 現在の結婚は3分の1が離婚で終わるんだって。
会社もそうだけど。結婚も一生続けるものではなくなっているんだね。
『病めるときも健やかなるときも』幸せでも不幸でも2人で乗り越えていけるかな?
ずーっと。食卓で。2人で向かいあって。たくさん決めていけるかな? やってみればいいんじゃない? 猪突猛進な人と、何事も左右を見てから決める人で頑張ってみればいいんじゃない?
ミツヒコが晴れ晴れとした表情になった。この1ヶ月半仕事以外にこれだけのことをこなしたのだ。やっと肩の荷が降りたのだった。
「以上が、オレの言いたかったことなんだけど。どうかな? この条件で結婚してくれる?」
「やだっっっ」
「え?」
「『キムチオプションサービス』がついてない」
「『キムチオプションサービス』?」
「あのホワイトデーに手作りしてくれるやつ」
ミツヒコが『ゲッ』という表情になった。あの! 付き合って最初の年に張り切って作っちゃったやつ!
「いや。アレ思ったより大変で」
「アレがないなら結婚しない!」
「ええっ」
「だってアタシいい女だもん! アタシと結婚するっていうならそのくらいはやってくれないと!!」
図々しい〜。
ミツヒコが笑ってくれた。
「いい女かぁ。いい女……間違いないね」
女なんて。星の数ほどいて。ミツヒコだったら紗莉菜と別れてもすぐ、次の人を見つけられるだろうけど。でもこの人以上に面白い人なんていないんじゃない?
何百手先も見てれば失敗しないかもしれないけど面白くはないね。先が読めない人と暮らせば、大変で面白い人生が送れるんじゃない?
『この人と暮らせば面白い人生を歩める』それがミツヒコが中原紗莉菜を選んだ理由だった。
「わかった。返事は今はいいよ。その代わり婚約指輪買いにいこう。それでなんだっけ?『読み方チンプンカンプンの横文字一流レストラン』? そこで指輪を渡すから必ず『はい』って返事してくれる?」
「うんっっ」もう思いっきりいいました「いいよっっっ」
ミツヒコが『ふふっ』と笑ってくれた。
「ねえ。みっちゃん『誓いのキス』でもしようか!?」
ふふっ。
「いいねえ」って豆柴みたいな笑顔を見せてくれたよ。
それで食卓越しに誓いのキスをした。
ミツヒコは嬉しかった。
何せ花嫁は178センチなのだ! 体型はモデル並みなのだ! もうメチャクチャウエディングドレスが似合う。
いつか同期の原さんが見せてくれたみたいな、体にピッタリとしててスラッとしたドレスがいいだろう。この人にはそういうのが似合う。
背の高いお嫁さん嬉しいなぁ。
それからファーストバイト? あの新郎が新婦に「一生ご飯を食べさせますよ」ってケーキを口に運ぶやつね。あれ、2人で「いっせーのーせっで!」食べさせあえばいいよ。
もう令和なんだから。そうすればいいよ。
中原紗莉菜ならみんな拍手喝采してくれる。
それで2人で。令和の結婚を共に生き抜いてみせる。
(終)
『中原さんと花沢くんシリーズ』長い間お読みいただきありがとうございました。
【2020年9月末初稿】
☆☆コメディ【文芸】月間57位☆☆
【次回作】は『今野社長の結婚祝い』
中原と仲良しの今野樹社長。見た目と裏腹の敏腕社長が中原の結婚式にしたお祝いとは。
本編はここで終了ですが、4000字程度のおまけSSです。
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