(13/14)何も考えないで
「紗莉菜。ちなみに結婚式なんだけど誰呼ぶの?」
「え?」
「シャチョーを大勢呼ぶんだろうが」
「え? ああ。たっちんと。ハルキと。ヘージは呼びたい」
「ああ。資産560億の今野樹社長と、この間株価がストップ高になった新井春樹社長と、鰐淵産業の鰐淵平次社長ね?ていうかあの鰐淵社長を『ヘージ』って呼ぶの君だけだよ」
「もっと呼びたいー」
「いいでしょう。好きなだけ呼べ。そんでお祝い金をガッポリもらえ」
「お祝い金」
「どうせ『客寄せパンダ』になるんだから、一大興行にするぞ。自分たちのための結婚式なんて、後から家族だけのささやかな宴でも開けばいいんだ。君トップセールスでしょ? 頑張って食洗機と全自動洗濯機と全自動掃除機代稼げよ。それと貯金は?」
え? 貯金? と思ったがミツヒコの勢いについ貯金額を教えてしまった。『意外』という顔をされた。
「え……まさかそんなに持ってるとは。『計画性』なんて一切ないと思ってたが」
悪かったな。
「うん。いいね。5年くらいで家の頭金は貯められるね。家を買うのは家族形態が決まってからね。それまでは賃貸でがんばりましょう」
握手をしてくれた。
「それで。苗字なんだけどオレが『中原』になるから」
「え? みっちゃんが変えるの?」
「そうだよ。トップセールスと後方支援なら、後方支援が変えた方が面倒ごとが少ない。君は『中原紗莉菜』で仕事がんばるんでしょう?」
「うん。一生仕事するよ」
「でしょうね。私生活もバックアップするよ。何も考えないで死ぬまで働けばいいんだ」
「あ! でも料理とかはやるよ!!」
「カレー以外作れないでしょうが」
「味噌汁作れるよ! 野菜と! 味噌で!!」
ミツヒコがガックリきてる。
「それ………出汁が入ってないよ………」
まあいいさ、とミツヒコが言った。
「『家事代行サービス』も調べてあるから」
【次回 最終話】もう令和なんだから。