(12/14)なんかもう。がっくりきた
嬉しい。とても嬉しい。だが大事なことを聞かなければならない。
「いや……でも浮気したじゃん」
「え? 浮気? なんのこと?」
「山元に会いに行くとか言ってこの日に」とカレンダーを指差した。
「アタシ後つけたんだよ」
「ああ……」ミツヒコが気の抜けた声を出した。下を向いてしまう。
「山元じゃないじゃん。30代くらいの。すごい色気のある。たぶん人妻とかじゃん」
ミツヒコが両手を膝に置いてギュっと握った。
「確かにあの人はただの友達なんかではない。あの人は……」
「うん」
「ママ友だ」
はい!????? 今なんとおっしゃいました!?
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「ママ友とは!? え? みっちゃん子供いたっけ?」
「今はいません! でも将来的に生まれる予定なんだよ!!」
「誰が産むわけ!?」
視線を合わさないでそーっと紗莉菜を指差した。
「きみ………」
はあああああああ!?
まだプロポーズもしてないのにママ友作るとはこれいかに!?
「いや。ちょっと意味がわからないんだけど」
「君は保活をなめてるのか?」
「ホカツ!?」
「仕事辞める気ないだろうが! 保育園調べとかなきゃダメだろうが! オレの姉ちゃんの! 『トーカ姉ちゃん』ね! 妊娠してから慌てて保育園探したけどゼンメツ!! 会社を辞めてなんとか幼稚園に入れてからパートタイマーとして同じ会社に再就職したの! どうなったと思う!?」
「え? どうなったんですか?」
「同じ仕事なのに給料が3分の1になったの!! 幼稚園だからお迎えのために一切残業もできないし! あり得ないだろうが! 日本の社会制度! 対抗するには妊娠前から活動しとかないといけないの!!」
「ちょっとまったー! そんな『ママ友』なんかどっっから見つけてきたのよ!」
「地域の『ママ友掲示板』だよっっっ」
ママ友……掲示板……。
「ま……まさか。前スマホをのぞき込んだ時に隠されたやつ。あれって」
「『ママ友掲示板』なんて見てるのバレたら頭おかしいと思われるだろうが」
「今でもジューーーブンおかしいわ!!!」
「とにかくその時に聞いた保活アレコレね! レポートにまとめといたから!!」
バーンて今度も書類叩きつけたよ。何これ?『円グラフ』とか『棒グラフ』とかあるじゃん。見ただけで吐きそう。
「いや。なんでそのマ……ママ友? とホテル行く必要があるのさっ」
「ホテルなんか行ってない」
「はぁ? アタシ見たんだよアンタ達がホテル街に消えてくの」
「ホテル街にはホテルの他に『小洒落たバー』もあるんだよ」
「え?『バー』?」
「君が『しゃらくさい』って言って馬鹿にしてるバーね」
こいつ。いつかの会話根に持ってやがったのか。
「情報源を接待するのは当然の義務だろうが」
なんかもう。ガックリきた。どんだけ用意してくるんだ。『地獄のように気が利く男』と結婚するっていうのはこういうことか。
【次回】何も考えないで