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10/14

(10/14)終わったーーー!!!

 家に帰って姉の真莉菜をつかまえると

「ワーーーッ!!!」って泣き出した。何もかもが信じられなかった。


 自分の知らない女に会ってることも。自分にウソをついたことも。ホテル街に消えてしまったことも信じられなかった。

 アタシだけにしか見せないはずの『豆柴』の笑顔をたやすく他の女に見せたことも信じられなかった。


 この3年ですっかり信じ切っていたのにこんなアッサリ裏切られるなんてあってはならなかった。


「案の定浮気されてんじゃんー!!」と万莉菜に言われた。

「ずっとおかしいと思ってたのよ! あんな『ほとんど王子様』みたいなコがなんでアンタみたいなゴリラと付き合ってるんだって!!」

「身内までゴリラって言うなっっ!!!」


 黒いジャケットを脱ごうともせず紗莉菜は更に泣いた。


「ミツヒコが〜。ミツヒコがうううーっ」


 泣くばかりである。鼻水垂らして泣くばかりである。そもそもミツヒコみたいなモテる男が今まで一切浮気しなかったということがおかしかったのではないか。なぜ自分はこの地位にあぐらをかいてしまってたのか。


「とっとにかくさ〜。責めちゃだめだよ。逆ギレされるよ? 『で、なんなの?』って言われたらおしまいだよ」


 ううう。『「なんなの?」って言うかさようなら』って言えればどんなに楽か。それを言うにはアタシはミツヒコを愛しすぎてしまった。


「もうこうなったらさー。なんか。なんかで挽回するしかないよ。えっと誕生日とか? クリスマスとかバレンタインとか? ちなみにアンタの誕生日は何してくれたんだっけ?」


「前回の誕生日は………」

「うん」

「くっ車で大津港まで連れてってくれて。美味しいお刺身とかアンコウ鍋とか食べさしてくれて。帰りは素敵な夜景とか見せてくれて……」

「なんだよそのスパダリエピソード」

「夜の8時に『お母さんに聞いたけど、紗莉菜この時間に生まれたんだって?』って」

「…………」

「『おめでとう』って左手薬指にアクアマリンの指輪をはめてくれましたーっ」

「ダメだーーーっっ!!! そんな奴相手に打てる起死回生の手なんかないっっっ!!!」


「終わったーーー!!!!」と2人で言い合いながら抱き合って泣いた。


 そこに母親が通りかかった。死ぬほど上機嫌。

「アンタたち何やってんのよ! 男なんて信じてなんぼよ! みっちゃんなら大丈夫よー」とか言って背中を叩かれた。


 大丈夫なわけないだろうが!!!!


 ウソついて女とホテル行ってるだろうが!!!!


 まっっっ黒だろうが!!!!!


 @@@@


 会社が急に地獄みたいになってしまった。

 なにせミツヒコは自分の担当なのだ。話さないわけにはいかない。しかも超ムカつくことにミツヒコは自然体であった。


 社食でも会うしみんな付き合ってることを知ってるから自然と同席にさせられたりして。


 でもミツヒコの体面とか考えると同期には言えなかった。何食わぬ顔でご飯が食べられる気がしない。紗莉菜は直情的なのである。


 なるべく外で食べるようになった。


 相変わらずLINEの返事は遅いし、土日も会ってくれないし、終業後も何してるかわかったもんではない。


 ムカつく。ムカつく。ムカつく。


 そしてとうとう耐えきれずミツヒコに声をかけたのである。

「ねぇ。次の土曜日は会って欲しいんだけど」


 ミツヒコがうなずいた。

「オレも話したいことがある」


 2人の恋の終わりを決めたのはミツヒコであった。

【次回】2人の恋の終わり

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[良い点] 『左手薬指にアクアマリンの指輪』 なぜ気付かん!
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