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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

血鏡~願うなら~

血鏡~願うなら~第2話

作者: SAY

「おはようございます」


「おはよう平井さん。雪の中の車の運転は大丈夫だった?」


「バスで来たので平気です」


 職場のドアを開けると副館長がディスクで作業をしていた。

 挨拶を済ませて今日の日程をチェックしようとボードを見ていると、別のドアが開き誰かが入って来る、それが館長だと気付いて挨拶をする。


「おはよう平井くん。すまないが、以前に話していた展示物が今朝届いたんだ。そこの箱を2階の東フロアのコレクションギャラリー2に展示して来てくれないか」


「分かりました」


 この方は森満館長、私は美術博物館で働いている。さっきの副館長は、森館長の奥さんだ。


 この美術博物館は、外と1階中央が美術館で1階通路と2階が博物館になっている。

 大きい建物だけど客足は普通より少ない方、それでも地域の方達から愛されている。


 ロビーは広くて、イベントがあると いつもより賑やかになる。母の日や父の日になると近くの小学生の絵が並び、クリスマスにはツリーやリースを作る、私が一番好きな場所。


「凄い、和鏡が入ってる。見た感じだと古い時代だよね。館長、何時代ですか?」


 梱包されていた1つを壊さないように気を付けて解いてみると、古い鏡が姿をみせる。デザインから和鏡だと分かる。


「よく和鏡だと気付いたね?」


「修復家の方から頂いた本に載っていたのを覚えてたんです」


「平安時代中期の貴族の娘が使っていた鏡らしい。裏のデザインが綺麗だから譲り受けることにしたんだよ」


「はい、可愛いデザインだと思います」


 本当に鏡の裏や周りには、草木や鳥の装飾されたデザインが細かく施され魅了された。昔は装飾に色が無いと聞いている、もしあったら色鮮やかで更に綺麗だっただろうと私は和鏡を撫でた。

 撫でた時、何かと目があった気がした。多分 気のせいだと思う、自分の目が曇った鏡に映っただけだろう、でも何故か私とは違う誰かと目があった気がして怖くなった。


(昔の女性が使用していた普通の鏡のはずなのに、どうして怖いと感じたんだろ?)


 階段で清掃員と挨拶をして2階に着くと、先輩の富岡夏生さんが展示物のチェックをしていた。


「おはようございます、夏生さん」


「おはよう千波ちゃん。その箱は何?」


 夏生さんに聞かれ、私は持ち運べる量を箱に入れた美術品を床に静かに置いて、箱の中身を見せた。


「以前、館長が話していた博物館から届いた展示物です。装飾品等が入ってました」


 私は手前の彫り櫛とかんざしを出して見せた、こっちは江戸時代に流行った物らしい。


「確か、改装するから展示出来なくなった展示物を何点か引き取ることになったんだっけ?メールが届いた時は「展示物が増えると場所が嵩張る」とか言って断っていたのに。何か気に入った品でもあったのかしら?」


「この箱以外にも着物等も届いてますよ」


 私が箱の数を言うと、「よく副館長も許したわね」と少し呆れたように笑った。


「ちょっと待ってね、昨日 作成したプレートを預かってたはず。その鏡は、そこの位置に置くみたい。コレがプレートね」


 夏生さんから名前と説明が書かれたプレートを受け取り、私は空いているスペースに和鏡を置いた。


「古いけど、とても鮮やかな彫りが入った鏡ね。和鏡って、中期か後期に作られ始めたんだっけ?あれ?流行ったのが中期?」


「…あの、夏生さん」


「な~に?」


 聞いてみたいと思った。もし夏生さんが何も感じてないなら、気のせいだと思えるかもしれない。


「この鏡、何か怖くないですか?」


「怖い?どの辺が?」


 夏生さんは鏡を見るのを止めて、他の展示物のプレートを探しだす。


「何と言えば良いのか、曰く付き?みたいな」


「そう?普通の鏡に見えるけど。大丈夫よ、戦時の道具じゃないんだから。それに儀式に使用された鏡じゃなくて化粧道具の1つだから怖くないわよ」


「そう…ですね」


 夏生さんは笑って心配ないと言うけど、私はどうしても恐怖が拭いされなかった。

 霊感があるわけじゃない、それでも鏡の中から誰かに見られている感じがしてならない。


(暫くは、此処のギャラリーに近付くのはやめよう)

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